第34話 ミーアは退屈なのです
俺がお城でマナーとかを学んでいる間のお話。
「あーあ、今日もヒロシはお城へ行っちゃったよ。午前中は魔物を狩ったりして楽しいんだけどな。
ホント昼から暇なんだ。」
一応ヒロシの屋敷では僕は猫のタマって設定になっているから、猫の姿が普通。
でも猫とか動物を家で飼うなんて誰もしないからね。ヒロシがおかしいんだよ。
でもヒロシの世界じゃ普通みたい。家を持ったらだいたいの人が犬や猫を飼うんだって。
ヒロシの世界の話しを聞いたのはふたりでパーティを組んですぐのこと。
あまりにもヒロシに常識が無いから、何故って問い詰めたら話してくれた。
聞いていると、この世界とは全く違うんでびっくりしたよ。
そりゃ常識が無いのも頷ける。
でもヒロシの世界ってとっても面白そうなんだ。
鳥や翼魔物でもないのに空を飛ぶ乗り物があったり、魔力もないのに勝手に火が付いたり風が吹いて涼しかったりとか、よくわからないけど、すごく便利な世界みたい。
それとね、みんな親切なんだって。
ヒロシの世界にだって戦争はあるし差別もあるらしいんだけど、少なくともヒロシが住んでいた国では、戦争も無いし喧嘩くらいはあっても人殺しなんてめったにないそうなんだ。
この世界じゃ喧嘩になったら死人が出ることの方が多いのにね。
人間は魔人の方が凶暴だって言うけどさ、僕に言わせると人間の方がよっぽど怖いよ。
魔人はさ、正々堂々と戦うけどさ、人間って陰でいろいろ画策するじゃない。あれって陰険だよね。
僕とヒロシのふたりは、今日も夜が明けてすぐに屋敷を出て狩りに行く。
魔法を使って移動するからすぐに深淵の森に着く。
そこから奥に入っていくとラスク亭用にキノコや山菜、クイックリー・ビーなんかをとる。
その他にもいろんな虫を取るんだけど、これはヒロシの収納とかいう能力で、一気に捕れるらしいんだよね。
それも食べられる虫だけをより分けられるらしいんだ。すごく便利。
ちなみに山菜とかキノコみたいに何かに生えているものは見分けはつくけど、勝手に収納するのは出来ないらしい。
それと、クリックリー・ビーや吸血蚊くらいの大きさのものも取れないんだって。
吸血蚊は除虫菊?とかいう草を燃やすと一気に殲滅できるらしいんだ。
あれって結構面倒な魔物なんだけど、その分高く売れる。
除虫菊を使ったら大量に狩れるから、ラッキーなんだよ。
本当は吸血蚊だけを狩ってたくさん売ればいいんだけど、そうはしないらしい。
理由はデフレがどうのこうの言ってたけどよくわかんなかった。
要するに、希少なものでもたくさん売っていたら、物の価値が下がるんだって。
ホント難しいことを知っているよね。
深淵の森をどんどん深く入っていくと、大きな魔物が出てくる。
この辺りからスタイロンさんの店の依頼を狩ることになる。
シルバーウルフとか、レッドフォックス、ブルーグリズリーなんかの高級毛皮素材が多いみたい。
こいつらは強いからなかなか狩れないし、狩っても毛皮を傷だらけにしちゃうから、あまり良い値段にならない。
危険な割に安いから、普通の冒険者にはお勧めしない。
でもヒロシのファイヤーニードルを使えば、簡単に狩れるのに毛皮はすっごく良い状態なんだよね。
僕も教えてもらったんだけど、魔力制御が難しい上に手が届くところまで近づいて確実に頭を一撃しなくちゃいけないから、とてつもなく難しいんだ。
だからヒロシにお任せなんだけど、これじゃ僕の修行にならないよね。
そして太陽が昇りきる前に狩りは終了。
ラスク亭とスタイロンさんの店に商品を置いたら、すぐにヒロシはお城に行っちゃうんだ。
僕は両方の店で今日の獲物を査定してもらってから猫になって屋敷に戻る。
屋敷では日向ぼっこしているよ。
猫の姿だと、無性に日向ぼっこしたくなるからしょうがないじゃないか。
たまに休憩中のメイド達が構いに来るけど無視。面倒だもん。
でもマイヤーさんはお菓子を持ってきてくれるから愛想を振りまくよ。当たり前だよね。
まったりしているといつの間にか寝てしまっていて、気が付くとヒロシの膝の上にいることが多い。
ヒロシの膝の上って、すんごく気持ちいいんだよ。
本来の姿じゃこんなこと恥ずかしくて絶対できないよ。
でも猫の姿の時はいいんだ。このくらいの役得は必要だよね。
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