前日譚 Sene1_牧本結城編 Page2


 西暦二〇八三年 十月 一日 金曜日 午前八時 十分

 東京都新海区十二番地 第三公園


 白髪の少女が公園の縁に近いベンチに座っていた。横にバイクが静かに止まっている。

 ――ズゾゾゾゾゾ。

 結城はストローで抹茶スムージー(タピオカ入り)を啜っていた。

 もちろんガムはまだ口の中である。

 しかし、結城の意識は抹茶スムージー(タピオカ入り)には向いていない。

意識の矛先は、眼前に広がる緑豊かで安全に配慮された遊具がいくつか置かれた公園に向いている。

「ふぅ“ーん」

 エッジのかかったため息にも似たうめき声を出す。その表情は明らかに不満気だ。

 アパートを出てからの2時間半、結城は事件現場である三つの公園を、一つ一つ丁寧に公園内をくまなく歩いて回っていた。

 しかしわかったのは自然の木の見栄えをさらに良くする景観ホログラムがよくできていて、さらにゴミも少ない綺麗な公園である、というぐらいだった。不自然な痕跡も見当たらない。

 どの公園にも監視カメラは付いていた。そしてそのすべての監視カメラに四枚の葉を重ねるような特徴的なロゴが印刷されている。

 このロゴは国内の機械生命体用パーツの生産、開発を担う“五大企業”の一つ“葉山インダストリー”のものである。

 そもそも、監視カメラだけでなくこの公園そのものが葉山インダストリーが社会貢献活動と称して作ったものであり、事件現場の公園は全て葉山インダストリーが作ったものだった。封鎖できないのもこの葉山インダストリーのせいである。五大企業は戦後急成長し、日本の復興に貢献したため国とのつながりが強くなっていた。故に葉山インダストリーは封鎖による企業イメージが低下するのを恐れて国を介して封鎖されないよう警察に圧力をかけている、とのことだった。つまり、国の圧力で今までまともに動けていなかった、というより、誰も触れたくなかったのだ。この事件に。

 しかしこれは事前に目を通した事件資料によって得た情報であり、実質的な進展はないに等しい。

 現状これでは葉山インダストリーの企業ぐるみでの犯罪を疑うしかないが、当然五年前も疑われ葉山インダストリーについてはひとしきり調査が済んでいた。

 事件当日の様子を確認しようにも監視カメラの映像を確認しようにもこの時間ではまだ葉山インダストリーに誰も出社していないだろう。

 普通二時間程度で事件解決につながる手がかりなどそうは出てくるものではないのだが、今はとにかく時間がない。明日にはまた誰か誘拐されてしまうかもしれないのだ。

「こんな悠長にしてる場合じゃないんだけど……ん?」

 物音。バイクの方からだった。

 何かが、バイクの影で動いているのが見える。

 結城はそっとスムージーを置き、立ち上がって足音を立てないように近づいた。

 そこにいたのは、幼い女の子だった。しかも今まさにバイクの隙間にそこらへんで拾ったであろう枯葉を詰め込もうとしている。

 ちょっとでも警戒したのを損した、とばかりに結城はため息をつくと、いたずらされる前に声をかけた。

「ねぇ、何やってるんだい?」

「あ、みつかっちゃったぁ?」

 女の子は悪びれることなくにこにこしている。

「みつかっちゃったぁ~、じゃないんだよキミ。何やってるのかって聞いてるの」

「おねぇさんのバイク、もっと面白くなるよ?」

「し な く て い い か ら、ほらそのはっぱを置くんだ。いいかい?」

 すると女の子は枯葉を素直にその場に置いた。

 しかし、今度はニコニコしながら結城の方に駆け寄ると

「おねぇさん! かくれんぼしよ!」

 と言い出す。

「いや、えぇ……。ボクこれでも時間がないんだけど」

「じゃ、おねぇさん鬼ね!」

「話聞いてないし……」

 女の子は駆け出して行った。結城仕方なく目を瞑り、少し待つ。

 早朝、というには少し遅いが、今この公園には見た限りあの女の子と結城しかいない。通勤で周辺に人はいるが、仮にも事件が起きた現場で子供を一人にするのは、警察に属する人間としてよろしくないと結城は判断した。

「まったく、親御さんは何をやっているのやら――もういいかーい?」

「いいよぉ~」

 ――早くない?

 結城が目を瞑っていたのは数十秒もなかったはずだ。しかし、声はしたものの忽然と確かに姿を消している。

 とりあえず声のした方を探してみる。

 しかし見当たらない。というかそこは公園縁を囲うように背の低い街路樹の立ち並ぶ場所。隠れる場はそうそうない。

 ずるはいけない、と結城は“通常の視界”で探していたが思わず“サーマル”に切り替える。

 すると、まさにそこ、背の低い街路樹の中から赤い色の違う反応が見える。

 通常の視界に戻し、その街路樹に顔を入れてみる。

 本来あるはずの接触は起こらず、そこに先の女の子がいた。

 景観ホログラムによる偽装、と結城は気が付く。おそらくここだけ枯れてしまったのか何かトラブルで街路樹がなくなったのだろう。

「わ!見つかっちゃった!おねぇさんよくわかったね!」

「キミも、よくこんなところ知ってるね?」

 女の子を街路樹のホロの中から連れ出して聞く。

「ここで遊んでたらたまたまみつけたって友達が~!」

 見つかったのになぜか嬉しそうな女の子は自慢げに話す。

「ふーん」

 少し感心して聞いて居た結城だが、駆け寄ってくる足音に気が付き振り返る。

 視界に入ったのは大人の男性だった。

「あ、おとうさんだ!!」

 女の子は無邪気に手を振っている。

 男性はすぐに女の子に駆け寄ると手を取って安心したように笑う。

「全く、勝手に行っちゃだめだろう?」

「おねぇさんが遊んでくれたから大丈夫~!」

 男性はそれを聞くと結城に振り返り、謝ろうとする。

「すみません本当に――」

 しかし、それは結城の顔を見て止まった。

 数瞬おいて、苦笑いだった顔が警戒している顔へと変わる。

「……帰るぞ」

 男性は強引に女の子の手を引くと踵を返して歩いていった。

 すぐに、ここから離れたい、そういう意思が明確に感じられる。

 対する女の子は「またねー」と言いながら手を振って去っていった。

 結城は笑顔で手を振り、その親子が見えなくなった後、軽くため息を吐く。

 よくあることなのだ。結城にとって今の反応は。

 「機械生命体解放戦争」の終戦から約八年。戦後の混乱からやっと立ち上がり始めたこの日本という国では、まだまだ戦火によって燃え盛っていた灰があちこちで小さく燃えている。家族の命を奪われた人々は多く、ただ差別を辞めろというきれいごとがまかり通る時代ではない。憎むべくして憎まれているのだ。ただし、全員が全員機械生命体を憎んでいるわけでもない。そんな歪な時代だ。機械生命体は、人工的に作られているため、基本的に外見は綺麗に整っている。それが、人々からは機械生命体を見分ける基準になってしまっていた。もちろん、結城は機械生命体と言うわけではない。ただし、人間であるとも言いきれない。“人工的に作られた”端正すぎている顔立ちを見れば、人間では誰もが彼女を機械生命体であると勘違いする。

「……別の所で待つとしよう」

 本来は葉山インダストリーに誰かが出社するまでの暇つぶしに近い状況だったのだ。

 結城は早々にバイクのエンジンに火を入れると、その場から立ち去った。


  ●


 同日 午前十時 二十六分

 葉山インダストリー本社


 結城は葉山インダストリー正面から入り受付へと向かう。もちろんバイクは置いてきている。乗ってないよ。

「おはようございます」

 受付にいた男性型のマシナリーが先に挨拶をしてきた。

「どうも。ボク、一応こういう者なんだけど――」

 と言って結城は左腕についている腕輪端末から警察手帳の3Dホログラムを出して見せる。

 受付の男性型マシナリーはそれを見て手元の机にある端末をいじり、本物かの確認をする。

「照会完了いたしました。牧本結城様、本日はどういったご用件で?」

「キミの所が作って管理してる、公園の監視カメラの映像、見せてもらってもいいかな?」

「問い合わせますので少々お待ちください」

 男性型マシナリーはインカムでどこかに許可を取っている。

 十数秒ほど経った頃、結城に視線を戻して口を開く。

「問題ないとのことです。監視カメラの映像を管理しているのは地下一回の備品室の隣にあるモニタールームになります」

「ありがとう」

 結城は許可が取れたのを確認すると、もうすでに受付を離れ、地下へ向かう階段へ足を進めていた。

 その背に男性型マシナリーの声がかかる。

「ご案内いたしましょうか?」

「問題ないよ。この建物の図面情報はもう覚えてる」

 結城は振り返ることなく右手を上げて軽く手を振り、そのまま歩いていった。

 モニタールームに着くとそこには一人の男性の老人がいた。いくつもの監視カメラの写っているモニターの前には座っているものの、スマホをいじって何やらゲームをしている。ノックをしても気が付かなかったほどだった。よっぽど誰も来ないのだろう。

「おお、警察の方ですな。受けつけからお話は聞いております」

 ――いや聞いていたならノックに反応してもいいだろうに。

 一瞬口から洩れそうになった悪態を飲み込む結城。

「何か、事件ですか? うちの会社まずいことでもしとったんですか?」

 なぜか嬉々として聞いてきている。

「あーまぁ事件だよ。ただボクにも守秘義務があるからね」

「むう、では仕方ありませんなぁ……。たしか、確認したいのはうちで管理している公園の監視カメラの映像、でしたかな?」

「うん、そうそう。ちょっと見せてもらうよ?」

「どうぞ、こちらをお使いください」

 そういうと老人は座っていたコンソール前の椅子を譲って、別の椅子へ移動した。

 座りながら結城は尋ねる。

「スマホゲーム、結構やりこんでいるようだけれど、その目はもしかして義眼かい?」

「お、さすが刑事さん! わかりますか? いやいや、参ったもんです。白内障の治療として取り換えたんですがこれがもう快適で! いやぁ楽しいったらありゃしない!」

 ウッキウキで話す老人。よっぽど楽しいのだろう。

 ――でも、業務はしっかりこなした方がいいと思うけど。

「はは、そうかい」

 結城は適当に聞き流して、映像の確認作業に入った。

 確認するのは、該当する事故現場の公園三か所の土曜日の昼間、具体的な時間は十二時~十三時までの間の一時間。それを一つ一つ見直しつつ今朝口に放り込んだガムを少し膨らませたりしていた。三か所とも、人とマシナリーが入り乱れてはいるものの、目立って不審な様子はない。子供たちは公園で遊びまわり、最後になると、行方を心配して探し回り始める親御さんの姿が映る。おそらく、この後通報があったのだろう。

 しかし、一つだけ気が付いたことがあった。

「――このオートマトンは、なんだい?」

 オートマトンとは、所謂“知性”を持たない機械である。人型を模しているオートマトンは基本的にマシナリーとの判別がしやすいように、機械らしい武骨なデザインがとられているため、目につきやすいというのもあるのだが、事件の起こった時間帯どの公園にも街路樹周辺を歩くオートマトンがいた。

「あぁ、それですか。清掃用自立型オートマトンです。公園に落ちているごみとかを拾っとるんですわ」

「この時間帯にいつも?」

「そうです。毎週土曜日のちょうどこの時間に」

「この後ろの大きな箱のようなものは?」

 結城が指をさしたのは、オートマトンの後ろで台車に積まれてついてきている箱だった。

「それはダストボックスですな。そこにゴミを入れて、持ち帰っとるんです」

「このオートマトン、今どこにあるかってわかるかい?」

「隣の備品室ですよ。この公園の管理は全部うちがやっとりますから。よかったらお見せしましょうか?」

「うん。お願いしてもいいかな」

 結城は、老人についていき備品室へと入る。そこには確かに三台のオートマトンが並んでおり、さらに奥の棚には先に見たダストボックスが所狭しと置かれていた。

「これ、結構大きいんだね。しかも鉄製とは、なんでだい?」

 子供一人ぐらいなら入らないこともないな、と結城は大きさから考え、ダストボックスを一つ持ち上げて問う。

「あーうち、以前はビニールだったんだけども、公園で火のついた花火を入れられたりといたずら被害によく合うようになって、ある程度頑丈で密閉性のあるオリジナルのダストボックスをわざわざ用意することになったんですわ。何度かボヤ騒ぎもあったんですよ。それでどの公園も街路樹が何本かなくなってしまって、今は景観ホログラムで隠しとるんですわ」

「それってどれぐらい前のお話です?」

「五年前ぐらいでしたかねぇ」

「ふーん」

 ダストボックスを棚に戻すと、結城はオートマトンを調べ始めた。

「この子たちは自分で車も運転していくのかい?」

 あちこち下から覗いたり、コードの接続先、シリアルナンバーなど、くまなくとれる情報は吸い上げていく。

「えぇ、移動も勝手にやってくれるんですわ。こっちでやることと言えば、電源入れるのと、メンテナンス指定ぐらいですよ」

「誤作動とかはないんだね?」

「一応有事の際の遠隔操作機能はついとりますが、私は一度も使ったことがありませんよ。遠隔操作モードへの切り替えコマンドももう覚えておりませんわ。まぁ、ここに置いてあるマニュアル見ればいつでもわかりますしな」

 快適快適、と言わんばかりである。全くいいセカンドライフを送っている老人だ、と結城は心の中で苦笑いしつつも聞きなれない言葉を問う。

「ふむ。じゃメンテナンス指定っていうのは?」

「この三台は三週間に一回、それぞれ一週ずつずらして清掃作業の後、うちに戻ってくる前についでで整備に出しとるんですわ。そこに自動で向かってもらうための指示を出す、っというわけですな」

「ここで整備はやっていないのかい?」

「そうなんです。有志でしかも無償で整備をやってくれる小児科のマシナリーの機械医さんがいらっしゃって。ほんと助かっとるんですわ。ダストボックスも彼が提案してくださったんですよぉ」

 機械医とは、外科的な医療知識とプログラミングなどのロボット工学の双方に精通した医者である。サイボーグ化手術などを主に専門としている。

 結城の調べていた手が一瞬止まる。

「その無償でやってくれるマシナリーはどこに?」

 結城はくるりと老人の方へ振り替えるとニコニコして聞いた。

「え、あぁ、えっと住所をお教えしますわ。少々お待ちいただけますかな?」

 そんなことを聞くの?と驚いた様子の老人だったが、すぐに住所の確認をし、結城に伝えた。

「ありがとう。じゃ、ボクは失礼するよ」

「お疲れ様です~!頑張ってくださいな!」

 手を振ってくれる老人を背に、結城は葉山インダストリーの本社から去っていった。



 同日 午後一時

 うすい機械化小児外科


 結城は住所通りに電動バイクを再び走らせ、無償で整備しているという機械医の元へ向かった。

 そこまで大きな建物ではない。今時にしては珍しい、個人経営の住居が二階についている施設だった。

 今は昼間であり、診療は行っていない様子。

 ちょうどいいと、結城は中へと入っていく。

 すると中では看護師が一応受付に座っていた。

「すみません。お客様、今診療は――」

「うんわかっているさ。要件はそうじゃなくて、ボクこういうものなんだけど、院長さんに会わせてもらってもいいかな?」

 結城は葉山インダストリーでしたときと同じく3Dホログラムの警察手帳を見せる。

「け、警察の方ですか。わかりました。ご案内いたします」

「ありがとう」

 看護師は少し驚いた様子だった。まぁ、警察がいきなりくれば誰だって驚く。そんなことを考えながら、結城は看護師の後をついていった。

 部屋の前に付くと看護師はノックし

「先生。警察の方がお見えです」

 とドアの向こうにいるであろう人に声をかける。

「どうぞ」

 ドアの向こうから声が返ってくる。

 看護師はドアを開け結城に通路を譲る。

 結城は「どうも」と一言いうと中へ入った。

 中に居たのは白衣を纏った美形の男性型マシナリーだった。

「警察の方……というには随分とかわいらしいお方だ。警察のサイボーグは相手を威嚇するために大抵は強面な見た目をチョイスしますからね」

「さすがに一発で見抜いてくるか」

「平等は謳われていても警察内部では機械生命体は差別され、上の階級へは行けず、せいぜい交番勤務になることが多い。単独で事件調査をしているほどの刑事が機械生命体ではないだろう、と推測しただけですよ」

 と言うと手で椅子を指し、座るよう促してくる

「ま、なんにしても僕にはその外見は必要ないんでね」

 結城はそれに従い正面の椅子に座る。

「それで、今日はどういったご用件で?」

 結城は朗らかな笑顔で、話を始める。

「えっとその前に、先生はここで子供相手に診療を?」

「えぇそうです。病気で不自由な思いをしている子供たちが機械化することで、また元気に生活できるように助けることをしています。サイボーグ化で救える命が必ずありますから、少しでも救える可能性があるなら、私は救いたいんです」

「子供とはどんな話をするんだい? 医者のマシナリーと子供の間ではどんな話ができるのかボク、興味があって」

 少し緊張が見えていた。結城は少しでも腹を割って話せるよう、世間話から聞くことにした。

「そんな特別なことはありませんよ。遊びの話を聞いたり、アニメの話を聞いたりするぐらいです。この間、治療後の経過観察で来てくれた男の子が、“ホログラムの裏はかくれんぼで絶対ばれない方最強”って教えてくれました。まぁでも彼自身自慢げに言いふらしているので、すぐばれてしまうとは思いますがね。かわいいらしいでしょう?」

「へぇ、僕も今朝女の子に似たようなこと教えてもらったよ。確かに教えてしまったら本末転倒だ、面白いね。……しかし、マシナリーの機械医は珍しい上に、世間の風当たりも厳しそうだ。面倒な患者とかはいないのかい?」

「結構それ皆さん心配してくださるんですが、実はそんなことはないんです。基本的にマシナリーを嫌っている方は一緒にサイボーグ化技術も嫌う傾向にあって、来るのはマシナリーに理解のある方々ばかりなんですよ」

「そうなんだね。意外だったよ」

 結城が聞きたいことが聞けて満足げに笑っていると少し焦れたように聞いてきた。

「あの~それで、要件は?」

「あぁ、そうだった。葉山インダストリーの清掃用オートマトンについて少し聞きたいことがあってね」

「葉山さんの方で私が整備しているということを聞いたんですね。なんでしょう?」

「週一で一台ずつここにメンテナンスにきている、というのは間違いないかい?」

「えぇ、毎週土曜日、午後一時過ぎぐらいからいつも面倒を見ています」

「その前、12時ごろからはどこに?」

「ずっとこの診療所に」

「そうかい。ありがとう」

 結城は立ち上がって立ち去ろうとする。

「え、それだけ、ですか?」

 拍子抜け、と言わんばかりに機械医のマシナリーは聞き返す。

「あぁ、それだけさ。じゃ、失礼するよ」

「あぁ、はい。それでは」

 結城はそそくさと診療所を出て、電動バイクのエンジンを始動させる。

 そしてつまらなさそうな顔になり、ガムを大きく膨らませるとパンと音を立てて破裂させた。

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