第123話 副団長は父に頼む
シルクルとルーデリン……というか、この大陸にある国には結婚前に一度回ったことがあるので、転移することが出来る。
プレデターから魔法を押し付けられた時に、転移の魔法の利便性と欠点を知ってから早々に他国を回ったのだ。
転移の魔法の欠点は、一度訪れた場所でないと行けないこと。
だからこそ、万が一に備えて夜の寝る時間を削って行ける場所は回ったけど、東の大陸はプロメテウスの支配下なのでまだ行ってない。
もっと強くなってから、万全を期して臨む案件だしね。
その代わりにこの大陸は全て回って行けるようにはしたんだけど、子宝に恵まれる神様の像の存在は知らなかった。
急いで回っただけだから、まだまだ知らないことがあるのかもしれない。
その辺はおいおい知っていこう。
「なるほど、王太子殿下の命か」
「ええ、手早く済ませますが、万が一の時はお願いします」
新婚だし何日も空けるつもりはないけど、父上には事情を話しておく。
無論、アリスにも話すけど、空いてる時間には戻ってきてイチャイチャする予定だし、最低1日3回は顔を見る約束もするつもりだ。
父上にお願いするのはどちらかといえば、屋敷よりも騎士団についてだろう。
書類仕事ではあてにならないけど、祖父を除けばこの国最強の守りでもあるので頼む相手としては間違ってないと思う。
「副団長になって早々にそのような大切な任務を任されるとは……誇らしいぞ、エクス」
「父上のお陰でもあります」
「謙遜するな。時に、その任務には一人で向かうのか?」
「ええ、その予定です」
ガリバー、マナカ、ライアの子供たちを連れて行って、見学させることも出来るけど、何があるか分からないし今回は見送った方がいいだろ。
それに、子供たちにはこちらで頼みたいこともあるしね。
ファンとタリアンの二人には別の仕事があるので、そちらを優先してもらう。
「お前なら大丈夫だろうが、油断なく仕事を全うするように」
「勿論です」
面倒なので手早く終わらせる方針に違いはないけど、油断や慢心は決してしない。
アリスの元に必ず帰るためにそれは前提すぎる前提だからだ。
だからこそ、万が一に備えて色々と準備もするけど、新婚期間中だしアリスとの時間を削るのは論外。
お仕事はお仕事で頑張って、アリスとの時間はアリスとの時間でめいいっぱい堪能する。
基本的なスタンスはブレないので大丈夫。
「帰ってきたら、とっておきのワインを空けるとしよう」
「父上がお酒とは珍しいですね」
普段、飲んでる記憶が無いのでそう言うと、父上は苦笑気味に答えた。
「飲めなくはないんだがな。飲むと何かしらやらかすらしい」
具体的には、力加減を誤って物を壊したり、ウザ絡みしたりするそうだ。
父上の力で力加減を誤るとか、大惨事の予感しかしないけど、父上曰く、無意識にセーブはしているはずとのこと。
「お祖父様はお酒強かったりしますか?」
「そこそこだったと思うぞ。だが、それより強いのはお前の母だがな」
母上、お酒強かったのか。
「普段は飲んでませんよね?」
「好きなわけではないらしいからな。そういう意味ではお前は私よりもマキナに似たのかもしれないな」
スペック的にはもろ父親の遺伝が強そうだけど、ちゃんと母親似の部分もあったようだ。
「まあ、騎士団については心配しなくてもいい。とはいえ、今となってはすっかりお前は、私よりも必要な存在になったのは間違いないがな」
「そうなれるように頑張ります」
「なってるんだが、その心意気は悪くないぞ」
というか、存在だけで他国に圧力をかけられるような化け物に並ぶにはもっと頑張らないと。
強くなるのは最低条件で、その後に誰もが認める騎士団長とロスト子爵家の当主になってみせる。
とはいえ、あくまでそれはアリスの為に最低限撮っておく資格のようなものなのでそこが目標ではない。
これから出来るであろう子供たちに何の憂いもなく託せるように掃除をして、次に繋げる。
具体的にはプロメテウスとの決着で及第点。
騎士団長とロスト子爵家の当主の座を父上から譲って貰ってから、父上がプロメテウスに単身特攻しないように注意しながら、着実に強くなって確実にしとめる。
それはそれとして、アリスを愛でることは忘れないというのが最も大切。
やる気がでるものだ。
「ところで、エクスよ。その……孫の顔はいつ頃見れそうなんだ?」
「そのうちですよ」
「楽しみにしてるぞ」
「それはいいですけど、アリスにはその手の話題は禁止ですよ」
「分かっている。マキナから注意されたからな」
流石は母上、アリスのことを考えてくれていて助かる。
まあ、無意識に子供が欲しいように誘導してる節はあるけど、露骨ではないし、アリスの負担にはなってないようだしギリギリセーフとしよう。
俺としても早く子供が欲しい気持ちもあるけど、こればかりは授かりものだし、焦っても仕方ない。
二人きりの新婚生活は始まったばかりだし、まだまだ楽しみたい気持ちもあるけど、俺とアリスの子供なら絶対可愛いので出来るのを楽しみにしておこう。
名前の候補も沢山あるけど、妊娠が分かってからアリスと話し合えばいい。
まだまだこれから先の楽しみが一杯なのでいいことだ。
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