第120話 副団長は地道にコツコツとお仕事

新婚旅行から屋敷に帰ってきた。


アリスとの新婚旅行は本当に楽しすぎて、例え記憶喪失になっても覚えてそうなレベルだけど、俺の場合自分のことは忘れても多分アリスのことは何があっても忘れないので他人にはその辺の区別がつかない喜び方なのかもしれないけど、それはそれ。


アリスはロスト子爵家に嫁いできたので、ロスト子爵家の屋敷にいるけど、俺の希望で別邸を新しく建ててそこで今は生活している。


資産は俺の持ち出しで、食事は時間が合えば両親ともとることになるけど、母上のお陰で二人きりの時間が多めなのは有難い。


俺の留守中は、母上が色々とアリスに教えてくれたりしてるみたいだし、アリスも母上と仲良しなので任せて問題ないとはいえ、なるべく屋敷でアリスと過ごしたいという気持ちが強いのは仕方ないだろう。


「副団長、こちらの書類ですが……」

「ベッカー伯爵に連絡しておけ。あの御仁なら上手くやってくれる」

「副団長、新しい警備計画書なんですが」

「どうせビクトマン侯爵がうるさく言ってきたんだろ?そっちは後で俺が話をつけておくから気にしなくていい」

「副団長、南門の警備から報告が」

「知ってるよ。今片付けてきた。盗賊がまた湧いてたから、後片付けに第三騎士団を向かわせるように」

「副団長、騎士団長が……」

「父上は放っておいても問題なし」


それにしても、帰って早々仕事が多いものだ。


前々から父上の補佐で騎士団には携わってきたけど、本格的に全てを担うようになると人手不足を改めて感じる。


魔法のある俺のようなイレギュラーはおいておいても、せめてリンス並にキレる奴を腹心にしておきたいところだけど、リンスはかなり頭いいしそれは欲張りか。


「リンスの結婚式の方はどうなってる?」

「滞りなく進んでおります。警備スケジュールも副団長の立てたもので問題ないと陛下よりのお言葉です」

「リンスのことだ、戴冠式も予定よりも早まることもあるだろうから、そっちの方も抜かりないように」

「御意」


俺達の結婚式から二ヶ月ほど間を開けて、今度はリンスが王女様と結婚する。


俺達のささやかな式とは違い、国を上げてのものになるけど、本人達的には俺達の式のようなものも望んでるので、ささやかな式もやる予定だ。


こちらは参加者が限られるものになるけど、リンスが婚約者のシンシアを思ってのものなので文句も出ない。


流石はイケメン、卒のない振る舞いだが、俺には真似出来ないので素直に感心する。


戴冠式も数年のうちにはということにはなってるけど、リンスのことだし俺の予想よりも早く王位を譲られることもあるだろう。


いや、むしろそうであってくれなければ困る。


リンスに仕えるのはともかく、俺はあの腹黒国王陛下の下に着くのは心情的に非常に嫌なので、親友には頑張ってもらおう。


リンス自身のスペックだけでいえば、既に跡を継いでも問題ないレベルとはいえ、国外の情勢を考えると慎重になるのも間違いでは無いので、その辺は本当にリンス次第。


俺もリンスが王位を継ぐまでには父上から騎士団長の座を明け渡して貰わないと。


ロスト子爵家の家督の方もだけど、そっちはリンスが王位についてからでも問題ない。


貴族たちの根回しは済んでるし、邪魔な不穏分子も不本意ながらプレデターのお陰で見つけやすいので、魔法とは本当に便利なものだ。


一人に一つしかないものが、何千、何万とあればチートだよな。


とはいえ、プロメテウスという存在が居る以上慢心も油断もしない。


逆にまだ足りないくらいなので、もっと強くなっておく必要もある。


「午後の訓練には父上を連れ戻してくる。死ぬ気で着いてくるように」

「「「はっ!」」」


技術面でもまだまだ父上や祖父から盗めるものはある。


騎士や兵士たちの戦力の底上げはもちろん、俺自身が仕事中に父上から技を盗めるので副団長という地位も悪くは無い。


とはいえ、やはり早めに騎士団長にはなっておきたい。


このまま堅実にポイントを稼ぐのも悪くないけど、俺以上に騎士団長に相応しい人間は居ないという何かしらの功績は作っておくべきかもしれない。


とはいえ、それはあくまでもサブの目的。


アリスとの時間を削ってまでする事じゃないし、チャンスがあればという感じで考えておこう。


「俺は少し抜ける。何かあったらすぐに知らせてくれ」


お昼の時間は屋敷に戻って、アリスと昼食をとる。


その時は城を開けることになるけど、副団長室のドアをノックすれば離れてても俺は気づくし、こういう時こそ転移の魔法は便利なので活用させてもらう。


王城からロスト子爵家までの距離はそこまで遠くもないけど、一刻も早くアリスの顔が見たいし、こういう時こそこの力を使うべきだと心から思うので当然のこと。


午前中はお茶会に出てたというアリスの話を聞きながらアリスと二人で昼食をとってから、午後の活力を得て仕事場に戻る。


俺の嫁として、色々と頑張ってくれてるアリスの存在だけで無限にやる気は出るけど、城での仕事が多い分、お昼にも英気は養う必要があると俺は断言する。


さて、午後も頑張ろう。

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