第119話 副団長は新婚旅行から帰る
朝、アリスの可愛い寝顔を眺めている時間は非常に有意義だと思う。
昨夜は慣れない海の中の人魚の都に連れてってしまったので、疲れもあるだろうし気持ちよさそうに寝てるアリスを起こすことなく堪能する。
ある意味いつも通りの朝を過ごしてから、朝風呂を二人で堪能して、朝食を済ませると、帰る前に二人で海に寄った。
「泳ぐには良さそうな天気だね」
「ですね、でも帰る日なので残念です」
日差しも、風も海のコンディションも良さげなので、非常に残念だがアリスも惜しむようにそう言うのは同じ気持ちを共有できてて悪い気はしない。
「泳ぐのは無理だけど……」
靴と靴下を脱ぐと、俺は海に軽く入って少し冷たい温度を足に感じながらアリスを手招きする。
「こうして、少し遊ぶのはアリだと思うよ」
そう言うと、アリスは少し迷ってから、控えめに綺麗な素足を晒して海に足をつける。
「冷たくて気持ちいいですね」
「だね。やっぱり泳ぎたくなるよ」
「もう、エクスったら」
そう微笑むアリスは少し寂しそうにも見える。
新婚旅行が終わるのが寂しいという俺と同じ気持ちなのだろう。
いや、俺以上に新婚旅行を楽しんでくれてたようだし、そうだったら尚嬉しい。
「きゃっ……」
「おっと」
そんな風にアリスを眺めていると、足元を取られたのか転びかけるアリス。
それをきちんと受け止めると、自然と近づく互いの顔でお互いに見つめ合う。
綺麗なアリスの瞳は何度見たって引き込まれる。
だからこそ永遠に眺めていられるのだけど、アリスの方が恥ずかしがって視線を先に逸らしてしまうのでそれはそれで悪くない。
いや、初反応をするアリスが可愛すぎて最高と言えるけど、そんな内心を悟らせることなく俺は優しく微笑むとアリスに言った。
「新婚旅行、俺は凄く楽しかったよ。アリスと結婚出来て、夢みたいな気持ちだったけど、そんなアリスを更に深く知ることが出来た気がする」
「エクス……」
「帰りたくないって気持ちも凄くあるんだ。このままここでアリスとのんびり暮らしたい気持ちも。でもこの後にあるアリスとの新婚生活も俺にとっては凄く楽しみで、その先もアリスとの人生の全てが楽しみだから……この想い出を糧に更に頑張れる気がする」
カッコつけるつもりが、どこかカッコ悪いセリフにもなってしまうけど、本心だからこそ伝えるべきだど俺は思った。
「俺はまだまだ弱い。だからこそ、アリスを守れるように……誰よりも素敵なアリスに相応しくなるために努力する。だから……」
一拍ためると、俺はアリスをゆっくりと横から抱き上げてお姫様抱っこをしてから、真っ直ぐにアリスを見つめて言った。
「これからもずっと、俺の傍に居てくれ。俺の可愛いお姫様」
その言葉にアリスは頬を真っ赤に染めてから、こくりと頷くと呟くように言葉を発する。
「わ、私も……新婚旅行凄く楽しかったです。エクスと一緒にずっとここに居たいくらいに。……でも、エクスのお嫁さんとして私も、エクスに相応しくなれるように……頑張りたいです」
「ありがとう、アリス」
「お、お礼を言うのは私の方なんですが……はぅ……え、エクス、あんまり顔見ないでくださぃ……」
照れ照れなアリスからのその言葉は非常に破壊力があるけど、どんな選択肢を取っても可愛い反応になりそうで微笑ましい。
とりあえずは軽く頬に口付けをする程度にしておくけど、更に照れて俺の胸の中に顔を埋めてくるアリスは最高にキュートでございます。
何から何まで俺のストライクゾーンを毎回ど真ん中に豪速球を投げてくるアリスさんは本当に天然の俺たらしだとしみじみ思う。
そんな風に軽くイチャイチャしてから、宿の風呂場で足を洗って、ついでにもう一回二人でお風呂に入ってイチャイチャしてから、帰りの馬車に乗って二人でフリューゲル王国を後にした。
イチャイチャのお陰か、アリスの寂しそうな様子が少し緩和できたようだしそこは一安心だけど、何にしてもこれで新婚旅行が終わりだと考えると本当にあっという間だったと心底思った。
帰るまでは新婚旅行だし、帰ってからは新婚生活と考えるとテンションの上がる俺だけど、馬車に揺られて、二人でフリューゲル王国と海が遠くなるのを眺めながらの帰宅は不思議と落ち着いた雰囲気になるので、それはそれで悪くない。
「エクス」
「なんだい?」
「……大好きです」
ギュッと抱きつきつつ、そんな事を言う俺の最愛の人。
叫ばなかった自分を褒めたくなるくらいにその大好きの破壊力はヤバかった。
具体的には、このしっとりてした雰囲気を中断して屋敷にひとっ飛びに飛んでから部屋で二人きりの時間を作って念入りに愛でたくなるくらいに。
いやらしい意味合い皆無で可愛いのだから、本当に俺の嫁は世界一だと思う。
宇宙一では足りなくて、世界(異世界含む全世界)いや、世界一と表現するけど、それでも足りないのだから俺の嫁は本当に最高だ。
婚約者から嫁に……ステップアップしたけど、違和感が微塵もなく、むしろしっくりとくる嫁というワード。
ステップアップに伴って、何億回目かの愛情のゲージの限界突破を確認するけど、死ぬまでに俺はきっとアリスに何兆回か惚れ直すのは確定だと思う。
まあ、今更だよね。
そんな感じの楽しい新婚旅行でございました。
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