第114話 副団長は迷子を見つける

思わぬ所で職人を確保したけど、そんな事は些細な出来事なので気持ちを切り替えてアリスと共にお店を巡る。


市場で魚を珍しそうに見ているアリスにホッコリしてから、お昼は予約していたお店で海鮮料理を食べて満喫する。


貸し切りにしても良かったけど、デートだし多少の喧騒はあってもいいだろうという判断だ。


無論、アリスの安全は俺が全力で確保しているけど。


「美味しかったですね」

「だね」


流石に元からそこそこ有名なお店なので、悪くないラインナップだった。


個人的には、先程の寿司職人の店主の寿司のインパクトが強すぎて海鮮料理が霞まないか不安だったけど、アリスとの食事は尊いのでそんな心配は無用だった。


アリスは最高だね。


そんな事を思っていると、ふと視線の先にとあるものをみつける。


忙しなくキョロキョロと周囲を見て、半べそをかいてる5歳くらいの女の子。


迷子だろうか?


「エクス」

「ああ、そうだね」


アリスの言葉に頷くと、二人でその子に近づく。


「こんな所でどうかしましたか?」


目線を合わせて、その子に微笑むアリス。


俺がやられたら間違いなく初恋を奪われる笑みだと思う。


まあ、既に奪われてるのだけど。


それはそれとして、その子はそんな優しいアリスの態度に少し安心したようなポツリと呟く。


「おかあさんとはぐれたの……」

「そうなのですか。では、一緒にお母様を探しましょうか」

「……いいの?」

「勿論です。きっと見つかりますよ」


優しくその子の頭を撫でるアリス。


そんなアリスに安心したように抱きつくその子。


アリスってば、本当に聖女様と呼ばれてもおかしくない清らかな心をお持ちだ。


誇らしと同時に俺がされる立場にいたいという気持ちにもなるが……子供と張り合うのは違うよね。


そんな事を思っていると、その子のお腹がキュルリと鳴る。


「お昼は食べてないのですか?」

「うん……」

「では、何か食べましょうか」


適当な屋台で買ってくると、その子は実に美味しそうに食べる。


「慌てなくても大丈夫ですよ」


そんな微笑ましいその子にアリスは積極的にお世話をする。


ソースがついた口の端を拭ったり、かなり熱いものを食べて口を開けるその子に飲み物を渡したりと楽しそうだ。


アリスってば、やっぱり子供好きだったか。


前々からその素養は感じていたけど、年下の子供と触れ合ってる場面はあまり見たことがなかったので、あくまで予想で今回のことで確信に変わる。


そうしてお腹を満たしてから、探すことしばらく。


「アンネ!」

「おかさん!」


意外と早く、母娘は再会できた。


仕切りにお礼を言う母親に二人で微笑んで、お昼を食べさせたことでお金を払おうとするが、あくまでも俺とアリスは困ってる子供に手を貸しただけだし、大した金額でもないから貰うのは遠慮した。


「おねえちゃん、ばいばい」


嬉しそうに母親と手を繋いで去っていくその子に手を振るアリス。


「見つかって良かったです」

「だね」

「それにしても、子供って可愛いですね」

「欲しくなっちゃった?」

「もう……意地悪言わないでください」


少し口を尖らせるアリスが可愛すぎてやばい。


「アリスは良い母親になりそうだよね」

「そ、そうでしょうか……?」

「うん、間違いなくなるよ」

「エクスこそ、きっと素敵なお父様になります」

「そうかな?」

「そうです」


そうして二人で笑い合う。


「子供は近いうちに欲しいけど、でもこういう二人きりの時間も楽しみたいかな」

「そうですね……私もエクスと一緒の時が一番幸せですから」


そう微笑むアリス。


それでも、先程まで触れ合っていたあの子の影響か少し子供が欲しいモードが入っているアリスに、俺はゆっくりと顔を近づけると、耳もとで囁くように言った。


「でも、子供もやっぱり欲しいから、今夜もとことん愛するからね」


そう言うと、アリスは驚いたような表情を一瞬浮かべてから、頬を赤くしてこくりと頷く。


あぁ、もう!可愛すぎ!


俺としても、アリスとの子供は出来ることなら早く欲しい気持ちもあるけど、新婚生活を楽しみたい気持ちもある。


悩ましいけど、その辺を上手いことするのが俺の役目だろう。


何にしても、子供と触れ合って母性が疼いているアリスはきっと良いお母さんになるだろうし、そんなアリスを愛でるのも非常に楽しみだ。


俺?父性はそこそこ疼いてるけど、それ以上にアリスが可愛すぎてね。


今はこれだけだけど、子供が産まれたら恐らく俺は男女問わずに溺愛すると思う。


アリスとの子供なんて宝物だし、絶対に可愛いに決まってる。


俺自身も何故か割と子供は好きな方だったけど、自分とアリスの子供と考えるとその何億倍も可愛いと思えてしまう。


アリスの血を受け継いだ俺達の子供は、きっとアリス似の美人さんとイケメンになるだろうし、アリスに似て優しくて有能になるはず。


なるほど、これが親バカか。


楽しみだけど、子供は神様からの授かりものらしいし、その辺はいつ来るかは読めないし先の楽しみとしておこう。


とはいえ、今のペースでアリスを愛でていると考えるまでもなくかなり早く子供を授かりそうだけど……自重しようにも、アリスが可愛くオネダリするものだから自重できないのよね。


そうして、ちょっとした出来事は挟んだけど、街歩きデートはかなり楽しめました。


アリスとのデートは最高すぎるよね。

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