第112話 副団長は妻へと愛が止まらない

ドライヤーではなく、魔法によってアリスの髪を乾かす。


ドライヤー自体はうちの国の天才科学者と共に開発してそこそこ良いものが出来たのだが、それはそれとしてアリスの髪を乾かすのは俺自身でやりたい。


そのために風を操る魔法とその他いくつかの魔法を同時に使用して上手いことアリスの髪を痛めないように……むしろ高めるように適温で乾かす。


「アリス、大丈夫?」

「大丈夫です。エクスは髪を乾かすのも上手なんですね」

「このくらいはね」


合法的にその綺麗な銀髪を触れるのは勿論、俺のお世話を喜んでくれるアリスもまたいい。


プレデターから押し付けられた厄介な魔法もこのためならあって良かったと心底思う。


まあ、今日それ以外の魔法も手に入れてしまったのだが……そっちはそのうち荒事にでも使う時がくれば良い方かな?


何とかして物騒な使い方以外も試したいが、無理に使う必要も無いし、最悪リンス辺りにでも渡せば良いだろう。


ああ見えて、そこそこ肉体派でもあるし、使えなくは無いはずだが……流石に複数の魔法を宿らせるには身体が耐えきれないだろうしその辺応相談かな。


というか、俺やプレデターがおかしいだけで、一人で二つ以上の魔法を宿すのは本来身体が耐え切れないし心も持たないリスクがあるのだが、プロメテウスやその配下の四天王も複数魔法を持ってそうだし油断は出来ないな。


いや、今それは考えなくてもいいな。


どうにもまだまだアリスに没頭できてないようだし未熟なものだ。


もっともっとアリスだけを見つめていたいものだ。


頑張ろう。


「たまには髪型も変えてみる?」

「出来るんですか?」

「勿論だよ」


前世の影響か、或いは俺のアリスへの想い故か、その程度は造作もなく出来る。


鉄板のポニーテールに、三つ編みだって余裕だ。


流行りは勿論、ツインテールなんかもアリスには似合いそうだ。


色々と捗るけど、とりあえずはポニーテールにしてみる。


サイドで纏めてもいいけど、王道に後ろで纏めたポニーテールも悪くない。


「似合いますか?」

「最高に可愛いよ」

「えへへ……ありがとうございます」


アリスのポニーテールとか萌えの塊すぎる。


普段のストレートが最高だけど、たまには髪型をいじるのもいい。


少し前までだと、令嬢ということで定番の縦ロールとかも試してみたかったけど、奥様になったのでそれはまたの機会かな。


縦ロールのお嬢様風アリス……いいね!


『ですわ』口調のアリスとか、かなり萌える。


口調で言うなら、アイドルっぽい口調とかを試して欲しいが……それはきっと夜にお願いするべき案件だな。


今夜試してみよう。


アイドルという概念がないから、教える必要があるがその辺は上手いこと魔法で頭の中の映像でも伝えてみて……いや、ダメだな、アリス以外の女性の顔が出てこない。


イメージアイドルのアリスならスラスラ出てくるけど……これをそのまま伝えるのはあれだし、その辺は今夜の俺に期待しよう。


それにしてもアリスは本当に何でも似合うなぁ。


でもナチュラル美少女なアリスにはやっぱりストレートだと思うんだ。


飾らない素晴らしさがそこには詰まっており、ロマンと言ってもいい。


「エクス、私が寝ている間何かありましたか?」


そうして楽しんでいると、ふとアリスがそんな事を尋ねてくる。


「どうしてそう思うの?」

「何となくです。朝起きてからエクスが少し疲れてるように見えたので」


自信を持って言うが、俺は疲れなど表には出さないという自負がある。


それ以前にエクスさんの身体スペックもあって、疲労というのが訓練くらいだろうし、そうそうないのだが、面倒事や厄介事で多少心が疲れることはなくはない。


そんな俺の様子は絶対に誰にもバレない自信があるのだが……アリスだけにはどうしても見抜かれてしまう。


アリスだけには隠せないらしい。


「少しね。でも、大丈夫。アリスとお風呂に入ったら元気になった」

「はぅ……そ、それはそれです。エクスこっちに」


ポンポンと隣に座ることをご所望のお姫様に俺は髪を整えてからそっと隣に座る。


すると、アリスはそんな俺の前に立ってから、優しく俺を抱きしめて自身の胸の内に誘う。


「エクスは頑張りすぎです。私には何も出来ることがないのかもしれませんが……このくらいはしてもいいですよね」


そう言ってから、優しく頭を撫でるアリス。


「エクスは凄いです。でも……疲れた時くらいは私を頼ってください。微力でも支えますから」


……あぁ、もう、カッコ悪いことこの上ないけど、それでも俺は今、凄くアリスに甘えたくなる。


いつもだって甘えているけど、意味合いが少し違う。


頑張った心を癒すようなそんな甘え方をしたくなる。


「ありがとう、アリス」

「はい」


優しく頭を撫でてくれるアリスに甘えるように、俺はその胸の内に身を任せる。


包み込むような優しい温もりが、最後の最後でまだ抵抗していたバトルスイッチを完全に消し去るようなそんな気分。


胸の中で僅かにあった先程までの疲れが解れるのを感じながらそうして朝食の用意が整うまでアリスの温もりに甘える時間が……何よりも素敵だったのは言うまでもないだろう。





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