第101話 副団長は妻と海辺を歩く

スヤスヤと隣で可愛らしく安らかな寝息をたてるアリス。


そんなアリスに腕枕をしているこの状況……最高だね。


エクスさんの鍛え上げた腕枕はアリスには少し大きい気もするけど、アリスは気にせずに腕枕を喜んでくれた。


「うぅん……エクス……」


……寝言で囁くように言うのは反則では?


思わず抱きしめたくなる衝動を抑えるのが大変だった。


でも、アリスの安眠を妨害するような真似は出来ない。


したくないし、この可愛い寝顔を見る折角の機会を堪能したいという気持ちは大きい。


それにしても、ぐっすりだ。


昨夜も求めあったからなぁ……その割に俺の方には余力があるのだからエクスさんはつくづくおかしいと思う。


まあ、心の方はかなりいっぱいいっぱいだけど。


セーブしてても、アリスがそれを壊そうと甘えてくるからついねぇ……いや、勿論、必死で耐えて、アリスに負担をかけないようにはしてるよ。


でも、可愛いというのは本当に強すぎるとしみじみ思った。



朝食の時、給仕するヒロインがかなりご機嫌だった。


きっと、隠しキャラと存分にイチャイチャ出来たのだろう。


楽しんでるようで何よりだ。


そんな事を思いつつ、アリスと共に朝食を楽しんでから俺とアリスは二人で先日の海辺を歩いていた。


「風が気持ちいいですね」


真っ白なワンピースに麦わら帽子。


完璧な海辺の美少女の姿がそこにはあった。


うんうん、アリスにはやっぱりシンプルなものが良く似合う。


素材の良さを引き出すこの感じ……いいね!


「あ、エクス。見てください。岩場に小さなカニさんが」

「ホントだね」

「昨日でてきた大きなカニさんは美味しかったですよね」


世界が違おうとも、蟹の美味しさは変わらないらしい。


アリスも満足していたし、今夜もメニューに組み込むのもアリかもしれない。


「わっ……」

「おっと」


そんな事を考えていると、慣れない砂場で足を取られたのか、アリスが転びそうになる。


勿論、アリスに見とれつつも、そんな可能性を見逃さない俺はアリスを受け止めるけど、顔が近づくことでアリスが俺の顔を見て頬を赤くする。


俺もアリスの顔を正面から見て、その整った顔立ちに見惚れる。


互いに互いを見惚れて、見つめ合うこと数秒……体感ではそれ以上の時を感じつつも、アリスの方が先に目を逸らしたので、俺はアリスを横から抱き上げて、お姫様抱っこする。


「きゃ……エクス?」

「誰も見てないし、こっちの方が楽かと思ってね」

「それはそうですが……」


少し言い淀むアリス。


この状態は嬉しいけど、誰かに見られたら……という所だろうか?


「うぅ……でもでも、エクスと腕を組んで歩くのもいいし……うぅ……」


もっと可愛い悩みだった。


「なら、どっちもやろうか」

「あ……はぅ……」


無意識に声に出してたようで、顔を赤くして黙り込んでしまうアリス。


そんな可愛い妻とのんびりと砂浜を歩く。


波打ち際からは少し遠く、それでも近くには海が広がっているこの景色は悪くない。


お姫様抱っこと、腕を組んで歩くのとの両方をご所望の俺のお姫様の期待に答えるように二つとも叶えたけど、お姫様抱っこから降ろす時の一瞬の寂しそうな顔に負けそうだった俺は正常だと思う。


あの顔は反則だよ。


あんな顔されたら、二十四時間アリスを離したく無くなる。


いつも通り?否定はしないよ。


そんな事を考えていると、俺たちからは見えないような場所に船の反応を感じる。


距離的にかなり離れていても感知できてしまうのだから魔法とはつくづくチートな存在だと思うけど、あの女……プレデターから渡されなければ多少丈夫で力のあるだけのエクスさんだったと言い訳はさせて欲しい。


厄介なものを押し付けられたけど、手に入ったならアリスのために有効活用しない手はない。


それに、あいつの想いの強さや一部の思想には共感もしてしまった。


相容れないけど、俺の可能性の一つに思えたそんなおかしな相手。


まあ、だからと言ってどうこうないけど。


俺はアリスのためだけに生きる。


結婚したし、子供が出来れば子供たちもその中に入るのかもしれないけど、俺の中のアリスの優先順位は絶対に下がらない。


愛する妻と、愛する子供は別ってね。


「エクス」


ギュッと嬉しそうに腕に抱きついてくるアリス。


その温もりが愛おしい。


ただそれだけで、満たされる。


「アリス。もう少し二人きりでいようか」

「……はい」


お昼の時間を挟んで、夕方になるまで俺たちはのんびりと過ごす。


新婚旅行の残り時間を惜しみつつも、こうしてアリスとの想い出をさらに作っていく。


まあ、そんな風に惜しみつつも、まだ新婚旅行は始まったばかりと言ってもいいのだが、アリスと何にも縛られずにイチャイチャできる時間は有限だ。


帰ったら、また仕事があるし、副団長になったことで面倒事も増えるだろうし、それらは手早く片付けて早くアリスの事だけに集中したいが……ままならないものだ。


何とかするけどね。


アリス最優先で、他は雑事。


だけど、アリスにカッコイイと更に惚れて貰う努力も忘れない。


そんな俺にアリスは素で俺を虜にするのだが……まあ、アリスの魅力には勝てないよね。


勝つつもりもないけど。


負けても本望だと思えるのだから、俺は心の底からアリスを愛してるのだろうと思いつつ、二人で夕日を眺めながらイチャイチャするのであった。

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