第100話 副団長は妻とディナーを楽しむ
アリスとの海を存分に満喫してから、その日は予約していた近くの宿に泊まる。
少しお高めの宿屋だけど、金策には抜かりなく、個人資産だけでもかなりチートな額があるのでそんな些細なことは気にしない。
元々、ロスト子爵家の跡取りなので、困っては居なかったけど、あれこれとアリスのためにしたい事をするには、やはり気兼ねなく使えるお金は必要だろうとの判断だけど……まあ、手間は手間でも、アリスとののんびりイチャイチャ幸せライフのためなら多少の労力は惜しまない。
なお、今回泊まる宿のオーナーは俺だったりする。
事前準備の一環として、良い場所を買い取って、ついでに宿屋として経営したのだけど、予想以上に客入りは良かったみたいだ。
新婚旅行中はオーナー権限で貸し切りだけど、アリスとのイチャイチャを邪魔されたくないのでそれは当然といえば当然だよね。
というか、この宿自体、この新婚旅行のためだけに作ったようなものだし、むしろ普通の経営がオマケに近いかも。
別荘も作るつもりだけど、そちらは色々と拘って間に合わなかったので、来年までには完成を目指したいところ。
サルバーレ?うーん、そっちはしばらく作る必要はないかな。
人が多いし、人の出入りも多い。
何よりも、向こうではそこそこ目立ってしまったし、アリスの安全を考えるともう少し時間が欲しくもある。
時間さえあれば大抵のことを片付ける自信があるのは言うまでもないけど、その前にリンスが上手いことやってくれるだろうしね。
あのイケメンな親友なら婚約者の国のお掃除も手伝うだろうし、期待しておこう。
それらの理由にプラスして言うとすれば……こっちの方が避暑地には向いてそうだし、こちらの方がのんびり出来そうというのは大きいだろう。
「お魚、美味しいですね」
「だね。やっぱり海が近いと魚介類が豊富でいいね」
海辺を一望できる場所で、アリスと二人ディナーと洒落込む。
月明かりと夜の海がシチュエーションとして良すぎるけど、それよりも俺はアリスの一挙手一動の全てが愛おしくてそちらにばかり目がいく。
美味しそうに小さな口で食べるアリスがとても可愛い。
「そういえば、エクスは前にサルバーレ王国に行きましたよね。そこもここと同じくらいお魚が豊富でしたか?」
「海辺だしね。色々あったよ。今度時間があったら一緒に行こうか」
「はい」
嬉しそうに微笑むアリス。
まあ、実の所、サルバーレの時はアリスの元に早く帰りたくて帰りたくて、料理なんて気にしてなかったんだけど……アリスの傍から離れたくないこの気持ち、きっと愛する者がいる人なら共感できるはず。
別に共感されなくてもいいけど。
アリスさえいれば、それでいいし、それだけがいいのだ。
「ワインは如何でしょう?」
「結構。代わりに葡萄ジュースを俺とアリスに」
「かしこまりました」
「よろしくお願いしますね、マリア」
「はい、お嬢様」
宿でのお世話係として先程、転移で連れてきたヒロインが給仕を担当する。
宿の従業員も俺が選別したので疑ってるわけではないが、万が一に備えて使い慣れているヒロインの方が何かとリスクも低い。
なお、アリスのお世話の時以外は、隠しキャラと好きに過ごしていいと告げたらノリノリで着いてきたのは言うまでもないだろう。
相変わらずだが、慣れたものだ。
「エクス、私に気を使わなくても、お酒飲んでもいいんですよ?」
アリスはお酒が飲めない……というか、苦手なので食前酒すら遠慮気味なのだが、俺は別に飲めなくない。
気を使わせてると思ったのか、そんな事を言うアリスは相変わらず優しいものだ。
「ありがとう。でも、どうせなら酔ってない時にアリスとイチャイチャしたいしね。それに……酔うと俺は更に激しくアリスを求めちゃいそうだからね」
「はぅ……が、頑張ります……!」
頑張ってくれるのか。
なら飲むべきだろうか……しかし、酔ってない状態で存分にアリスを愛でたい気持ちもあるし……ううむ、悩むなぁ。
「明日は海辺を歩いたりしようか。アリスは何かしたい事ある?」
「その……我儘を言っていいでしょうか?」
「何なりと」
「今日よりも、もっとエクスを独り占めしたい……なんて、我儘過ぎますよね」
……あー、もう。アリスは何でこんなに可愛いことばかり言うかな。
最高に可愛すぎ!
そんな胸の内はまるで顔に出さずに俺は優しく微笑むと言った。
「勿論、構わないよ。俺も明日はもっとアリスを独り占めしたいから、よろしくね」
「えへへ……はい!」
そんな俺たち二人の世界にやれやれと言いたげなヒロイン様が居たけど、意識からシャットアウトする。
この二人だけの時間こそ志向。
そうして夕食を存分に二人で楽しんでから、夜はアリスといつも以上に愛し合ってしまったが、それはそれ。
新婚だし、新婚旅行なので、アリスをもっと求めてしまう俺と、俺をもっと求めてくれるアリス。
甘く切ない声で求められれば、燃えないわけがなく、婚約者という段階から夫婦になったからこそ、その愛を注げるレベルも増してるのは道理なわけでして。
要するに今夜もアリスは最高に可愛かったですというのが俺の正直な本音でありました。
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