第66話 騎士団長の息子は婚約者の友達をつくる

「お初にお目にかかります。ミスティ公爵家のアリス・ミスティです」

「は、初めまして。サルバーレ王国第二王女のシンシア・サルバーレです」


本日はアリスと王女様の対面の日だ。緊張する王女様にアリスは天使のような笑みで言った。


「こうしてお会いできて嬉しいです。シンシア様」

「あ、あのアリス様。出来れば敬称は取ってシンシアと呼んでください」

「おそれ多いです。ではシンシアさんで如何でしょう?私のこともアリスと呼び捨てで構いません」

「はい。アリス……さん?」


その呼び方にくすりと笑うアリス。なんとなくアリスが楽しそうにしているのでとりあえずこの場を設けたことは間違ってなかったとホッとすると近くで同じように見ていたリンスが似たようなことを思ったのか頷いていたのでため息をつく。


「そういえば、シンシアさんはどうして私に会いたいと思ったのか理由を聞いてもよろしいですか?」

「えっと、知りたかったんです。騎士様の想う人のことを。私達の国でも騎士様とアリスさんの婚約の話は有名なんです」

「そ、そうなのですか?」


チラリとこちらに視線を向けてるアリスに頷くとアリスは少しだけ恥ずかしそうにしながら言った。


「まさか他国にまで噂が広まっているとは思いませんでした……」

「アリスさんは騎士様のことを最初から好きだったのですか?それとも告白されて惚れたのですか?」

「そ、そちらではどう伝わっているのですか?」

「色々ありすぎでどれが真実かわからないんです。だからアリスさんと仲良くなってお聞きしたかったのです」


いつもは寡黙なはずなのに何故かぐいぐいくる王女様にたじろぐアリス。しばらく放置するのも可愛いが、少し可哀想なのでフォローに入ることにする。


「シンシア様。あまりアリスをいじめないでください。あの告白のことが広まっていることを初めて知って動揺しているので」

「え、エクスは知ってたのですか?」

「うん、まあね。」

「もう!教えてくれてもいいじゃないですか」

「ごめんごめん。言ったら恥ずかしくて一緒に外に出てくれなさそうだからついね」


そんな風に俺とアリスで軽くイチャイチャしはじめるとそれを見ていた王女様が聞いてきた。


「騎士様はアリスさんの前では優しいお顔をされますね」

「そうですか?」

「はい。これまで見てきた騎士様はいつも笑顔ではあってもなんというか無理をして笑っているようなので自然な笑顔なのに驚いています」

「エクスはいつも優しいですよ?」


そう認識してくれているなら良かったよ。まあ、確かにアリス以外には自然な笑顔は難しいからある程度作り笑いをしているのは間違ってないけどね。


「むしろ、私はリンス様といきなり婚約されたことに驚いています。切っ掛けはあったんですか?」

「そ、それは……」

「僕が告白したんだよ」

「リンス様から?」


びっくりするアリスに俺は付け加えるように言った。


「人目を気にしないでの大胆告白だったよ」

「君ほどじゃないさ。君は殆どの貴族の前での大立回りだろ?」

「仕方ないだろ?アリスのことで頭がいっぱいなんだから」


そんな会話をしているとアリスがくすりと笑って言った。


「エクスとリンス様は仲良しですね」

「それ、シンシアにも言われたよ」

「そうなのですか?」

「ああ。でも俺はアリス以外と仲を深めるつもりはないと言って否定したけどね」

「ふふ。そうですね」


何かを分かったように笑うアリス。可愛いその姿に思わずイチャイチャしようとする体の疼きを抑えると王女様が言った。


「そういえば騎士様とアリスさん同じペンダントしてますが、お揃いですか?」

「これは……エクスからの大切な贈り物です」


ぎゅっとペンダントを握ると嬉しそうにアリスは言った。


「会えない時間を寂しくないようにエクスがくれたのです」

「素敵ですね……」

「エクス本当に君は凄いね。僕も見習わないといけないかな?」

「イケメンなんだからそれ以上イケメン力を高めなくていいと思うけど」

「君だって容姿は優れてるだろう?」

「残念ながら万人向けではないんだ」


エクスさんはあくまでアリス限定の仕様なので万人受けしないのだ。よくあるロボット物の主人公専用機と一緒なのだ。そう、言うなればアリスに特化した仕様なのだ。


「それはお熱いことで。ところでミスティ嬢の薬指の指輪もエクスからの贈り物かな?」

「まあ、本当にありますね」


言われて気付いたようでアリスの指を眺める王女様。釣られて眺めそうになるリンスの視線を遮るとイケメンはくすりと笑って言った。


「心配しなくてもミスティ嬢のことを狙ったりしないよ」

「残念ながら独占欲が強くてな。反射的に威嚇してしまうんだ」

「それは怖い。ランドリー王国最強の騎士の婚約者には指一本触れらそうにないね」

「もちろんだ。アリスの全ては俺のものだからな」


その言葉に顔を輝かせる王女様と苦笑するリンス。そして顔を赤くするアリスの三者三様の動きに、まあ、注目するのはやっぱりアリスだよね。やっぱりアリスは可愛ええなぁ……


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