第67話 騎士団長の息子は組織を作る
「それで?俺はどうして呼ばれたんだ?」
「用事があったからに決まってるだろ?ファン・ラクター」
その言葉に眉を潜めるのは、前に一度叩き潰してから手駒に加えた男爵子息のファン・ラクターだ。部下になると誓わせてからそこまで干渉して来なかったが必要なので今日は呼び出した。
「今日は君達に話があってね。簡単に言えば俺の作る組織の部下になって欲しいんだ」
「いやいやちょっと待て」
「なんだ?」
「俺はわかる。が、まさかこのガキ達まで誘うのか?」
指を指すのは俺の教え子達。ガリバー、マナカ、ライアの3人だ。その台詞にガリバーがムキになって返した。
「なんだと!お前なんかより俺の方がつよいんだぞ!」
「そんなわけないだろ。流石に子供に負けるわけない」
「いや、実力的にはお前が一番足手まといだよ。ファン」
魔法という力がないので今のところ戦力としてあまり期待はできない。その台詞にファンは少しだけ不機嫌そうに聞いた。
「なら、なんで俺を誘ったんだ?」
「雑用係が欲しかったからさ」
「とことんふざけた奴だな」
「先生、本当にこの人も仲間にするの?」
あからさまに嫌そうなガリバーとそれに同意するマナカとライア。まあ、確かにこれを仲間にするメリットはそこまで多くないが、流石に子供だけの部隊を作るわけにはいかないので人数合わせの意味も兼ねている。そもそも俺だけで事足りることに人手を割いているのでどうしても一部は質が悪くなるが、まあ、最低限死なないならいいだろう。
「ま、組織と言ってもそこまで活動することはないだろうから心配ないさ。それにガリバー達は不満かもしれないがこれでもそこそこ忍耐力はある奴だ」
そう言いながらも最近までその存在を忘れていたことは内緒だ。ぶっちゃけこいつとは騎士団に入るまではそこまで接点は持たないつもりだったからだ。それでも今日こうして呼んだのはひとえに顔だけでも子供達に覚えさせるためだ。ぶっちゃけ魔法を使える子供達は現状かなりの戦力だ。まだまだ幼い部分はあっても戦力としては最高クラス。まあ、全員含めても俺には遠く及ばないがそれでもかなり使えるので新しい組織のメンバーにはうってつけなのだ。もちろん子供達を危険な目にはあわせないし同意の上での人選なのだが、それでも一応同年代のメンバーが欲しかったので数あわせで呼んだ。
「先生がいいならいいけど……」
「ていうか、先生ってなんだ?お前の教え子か?」
「その前に口調はどうにかしなよ。流石にこれから先はため口は許さないぞ」
「わかりましたよ。それで?貴方とその子達はどういう関係なんですか?」
「見た通り教師と生徒だよ」
その言葉に頷く三人に視線を向けてからファンは言った。
「生徒ねぇ……こんなガキが俺より強いとかあり得ないでしょ」
「なんだと?やるか!」
「はいはい。やらなくていいから」
全く話が進まないのでそう言う。どうにもガリバーとファンは相性があまり良くないようだ。まあ、ガリバーはもともと好戦的な性格だし、ファンもわりと人格的が歪んでるから仕方ない。ちなみに何故ここに手駒にできた攻略対象を呼ばないのかと言えば、結論から言えば呼べないのだ。攻略対象達はこういったことに不向きすぎるので使い方を考えなくてはならない。この上なく扱いが面倒だけどこの様子だと呼べなくて正解かもしれない。火に油を注ぐような真似は避けるべきだろう。
「組織というのは、国王陛下と殿下の命より結成される騎士団のことだ。通常の国の騎士団とは別の存在だ」
「それに俺達が入ると?」
「そうだ」
「なら、騎士団には入らないのか?」
「いや。お前も俺も普通に騎士団には入るけど、それと掛け持ちのようにこの組織も動くことになる」
主だった活動は『プロメテウス』やらの面倒事の対象。つまり俺の仕事の半減と言ったところだろうか?どのみち向こうが仕掛けて来なければ平和なもののはずだが、このまま何事もなく過ぎるほど甘くはないだろう。
「つまり必要な時に集まればいいんだな?」
「そうだ」
「先生!俺頑張るよ!」
「わ、私もです」
「私もだよー」
やる気満々な三人に対してファンはしばらく考えてからため息混じりに言った。
「拒否権はないんだろ?」
「あったらむしろ俺が欲しいくらいだ」
「ならやるさ」
「足手まといになるなよ!」
「そっちこそ」
張り合う二人にため息をつきたくなる。というか子供相手にここまでムキになれるこいつはある意味凄いかもしれない。俺はアリス以外のことだとここまで他人にムキにはなれないからな。そもそもアリス以外はそこまで興味を持てないので仕方ない。今も早く終わらせてアリスに早く会いたいくらいだ。まあ、『プロメテウス』や乙女ゲームの件は早めに片付けて後顧の憂いなくアリスとのハッピーライフを楽しみたいものだ。結婚とはゴールではなくスタートに過ぎない。誰の言葉か忘れたけど名言だよね。ハッピーエンドというのはきっと最後までアリスと共に笑える未来のことだろう。だから俺は今日も頑張れるのだ。
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