第23話 文化祭だ!! と狂ったように喜びたい

 部活見学から一週間が経った。


 俺はあれやあれやと陸上部への入部を決めた。心情の動くままに行動するのも、ときには悪くないな。


 美麗は、なんとバレー部に入った。あんなに興味がなさそうだったのに、棚葉からの熱い勧誘を受け、しっかり見たら面白そうだ、と思ったらしい。あと、全国レベルとかいっていたが、レギュラー以外は別の顧問がついて少し緩いらしいので「私たぶん大丈夫!」という感じで入部を決めたようだ。


 ときは昼休み。


「みれーい! バレー部来てくれたんだね!」


「うん、陸夜が『部活何か入ろう!』っていうから、それならバレー部もアリかな、って」


「へぇ、あの陸夜から.」


 転校当初は戸惑い、美麗と距離を置いていた棚葉だが、部活動が同じになったことで打ち解けたようだ。


 とにかく、今までの距離感に戻ったみたいで何よりだ。


 美麗、僕、明日翔、棚葉。中学の初期の頃を、思い出させる。



「────なあ、明日翔。誰だって成し遂げたいことがあったら実際に行動するものだろ。『〇〇に俺はなる』とか、漫画の主人公だっていってるだろうわけだし」


「そうだな。陸夜が部活にいかない寂しい青春時代と、忙しくて疲弊する青春時代。『いい青春を、俺は送る!』が目標なら、部活入ってないのは論外だしなー」


 明日翔の中ではその認識なんだろうけど、部活いかない=寂しい青春時代 っていう短絡的な繋げ方は危険だぞ。グサッと刺さる人、少なくないだろうし。 


「さて、これでうちのクラスのほぼ全員が何かしらの部活に入ったことになったな。さすが文武両道を掲げてるだけある」


「これサッカー部情報だけど、この学年、少なくとも三クラスは全員部活加入してるんだってさ。それぞれ事情があるだろうけど、そこまでして入るかって話だよな」


 どの部活もみっちりやる、奏流高校。毎日練習当たり前、休日丸一日も珍しくない。

 僕らに休日はないに等しい。その上課題だって大量にある。きついね。


 チャイムが鳴ってしまった。友人とはなしてると時間感覚が狂いまくる。


 着席し、次の授業がはじまるのを待つ。


 やってきたのは、三〇代後半を回っていながら、熱量が半端なくあるスポーツ系男性。いつも燃えたぎっていてそのうち完全燃焼しそうなタイプ。ちなみに我がクラスの担任。


「さあ、みんな! 今年も、文化祭の時期がやってきたああああああぁぁぁぁぁぁ!!」


 文化祭。奏流高校が誇る、盛り上がりまくる一大イベント。


「イエエエエエエェェェェェェイッッ!!」


 真顔で「正☆義」と直後にやる奴もいた。何かの芸人のネタだったかな。


 学校中が異常なほどに沸いていた。この学校には狂ったやつしかいないのだろうか。文化祭という言葉をきいただけで、全員が発狂して心から喜べる集団。それが、奏流高校のメンバー。


 いつの間にか机を後ろに移動させ、空いたスペースで胴上げがはじまった。勢いそのままに、全員が狂ったように担任を空中に放り投げていた。


「「「「イエエエエーーイッッ!!、もういっちょ!! イーエエエエエエェェェェェェイ!!」」」」


「なあみんな。文化祭、最高だろ?」


「「「「もちろんです!!」」」」


 胡散臭い新興宗教みたいなノリっぽいけど、みんなやってるから問題ない────とか考えている時点でもうこの雰囲気に飲み込まれてる。


 どっかのクラスでは、数年前に流行ったドラマのエンディングを踊りながら大声で歌いながらやっているらしかった。もはや近所迷惑というレベルではない。


 誰かが音楽室に乗り込み、最高にロックな曲をドラムで叩きいていた。荒れた高校みたいだろう。しかし、奏流高校はそうじゃない。


 文化祭はもはや生きる意味と化しているところがある。「文化祭は全力で盛り上がる必要がある」という伝統が長年継承されてきたということらしい。By学校説明会情報。


 これがスタンダードスタイルとして認められている。文化祭という名目なら、基本何してもいい。だから授業中に胴上げとかしだす。馬鹿になって盛り上がるって、最高だな!!


 胴上げ、円陣、大声点呼(?)、校歌斉唱↓、アルプス一万尺斉唱までみんなでやった。もう深夜テンションだよね。途中、というか振り返ってみれば本当に何してるんだ、という行動の数々。


「みんな。せんせいはもう、喉が痛いので、これいじ……はもうしゃべれなさ……です。今日は自習だ」


 盛り上がるだけ盛り上がれば、日常が一気に戻ってくる。疲労困憊というところだった。


 机に突っ伏せて寝ているのが半数以上。残りは某ボクサー漫画のような姿勢で椅子にもたれかかっていた。みんな生きて帰ってこいよ!!

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