5
ある晴れた日の事、金髪の少女は心地良い感じながら、ハンモックの上で寝てしまっていました。
目が覚めた少女は、何故か泣いています。夢の内容は殆ど思い出せませんが、辛くて泣いてた訳ではないのでしょう、口角が上がってた様に口が疲れているみたいで、口をパクパクさせてストレッチし始めました。
「あれ?、ここ何処ですか?」少女は背を伸ばしながら周囲を見渡しました。
けれどもそこには草原が広がるだけで、他には何もありません。
「ってか私は誰で、何でこんな場所で寝てるんでしたっけ?」
もはや記憶喪失状態の何も思い出せない少女は立ち上がると、とりあえず歩き始めました。
そんな時です、少女の頭の中では夢で何度も自分を呼び掛けてくれた活発な少女の笑い声が聞こえた気がして立ち止まり、後ろを振り返ろうとしました。ですが本当に振り返っていいのかどうか、何故か振り返る事を止める自分が少女の中に居たのです。
「……まぁいいか」少女は今体験した不思議な事を書き留めようと、日記帳を取り出しました。
そして一枚ずつページをめくって、彼女は自分が何者で、何をして此処まで来たかを少しずつ思い出しました。
「あぁ、そうだった……。私は絶対に後ろを振り返らないって決めたんでしたね」
少女は本を閉じると、荷物をしまって歩き出しました。半年前に交わした親友との約束を守る為に。
そして歩き始めた少女は、笑顔で青空を眺めながら言います。
「どれだけ掛かっても構いません。貴女のペースでゆっくりと追い掛けて来てください」
そう言って正面を向いた彼女は、誰も居ない背後に手を振りながら地図を片手に、昔聞いた歌姫の歌を口ずさみながら進んで行きます。
全てを思い出した彼女は、疲れきって眠ってしまっただけの小さな旅人でした。ただハンモックに寝転んだ際に何処かに頭をぶつけて記憶が飛んだだけの様です。
そう言えば、何処か間抜けで、だけどもたった半年で絶世の美女に成長したこの金色の髪長く伸ばした少女の正体なのですが……実は私なのでした。
「待ってますよ、ユズ」
そう呟く私の胸元では、大切にしているペンダントが揺れているのでした。
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