4
「エレナさん、エレナさん。見てください、ユズの胸がボインです」
「あははっ!、ロケットおっぱいじゃないですか。せっかくだしガッツリくびれさせましょう!」
ミキさんが成仏した後、ユズの目覚めを待っていた私たちは、砂地になった井戸の周辺に会った湖の傍で、砂に水を含ませて塊を作り遊んでいました。
因みに現在の時間は、夜明け前です。
「……所でエルシア、このポーズは何なのですか?」
「あぁこれですか?フィーバーポーズです」
「……どこぞの最後のファンタジーに出て来るサボテンみたいなポーズですね」
「わぁい、さぼてんだー!」
「……砂でモザイクかけておきますね」
そんな風に遊んでいた私たちでしたが、ちょっとずつユズが動き始めたかと思うと「なんかー……あついー……」と喋り始めたのです。
そして意識を覚醒させたユズは、身動きが取れない事に「金縛りだぁぁ!」等と言って騒ぎ始めるのでした。
「おはようございます、ボインなユズ」
「おはようございます、ハイパースレンダーなユズ」
「おはよー……って、そうじゃ無くて!ここ何処!?、町は!?、幽霊は!?!?」
「ユズが寝てる間に成仏しましたよ。今は町の無い本当の姿……砂地のど真ん中です」
「なーるほど!。どうりで熱い訳だ……ってか何か体に掛かってるぅぅ!!」
ユズは頭を動かしながら、砂からの脱出を試みました。そして速攻で諦めました。
何だか顔が赤く見えるユズは今にも熱中症になりそうだったので、大変崩すのが惜しい出来ですが、ユズを救出してあげる事にしました。
そして救出されたユズは、私の水筒の中身を一気に飲み干すと、気絶した後の事を聞いてきたので、ザックリと説明しました。
話を聞いたユズは「大変な時に寝ててごめんね、だけど埋めたのは許さん」と言いながら、フンフンと鼻息を鳴らしていました。
「そう言えば、聞いてくださいよユズ。エルシアったら酷いのですよ」
「うん?、エルシアちゃんって基本的に酷くない?」
――グサリッ。
何かが心に刺さった音が聞こえた気がします。
「いや、ユズのその発言の方が私に酷いと思うんですけど……」
しかし私の言葉には耳もくれず、エレナさんは話を続けます。
「エルシアったら、幽霊が成仏したいと言ったのに、手伝ってあげないとか言うのですよ」
「うぅん……まぁエルシアちゃんらしいね!」
――グサッ。
「しかも幽霊を泣かせたりもしたのです」
「エルシアちゃんらしいね!」
――グサグサグサッ。
「しかも幽霊って女の子でしょ?、女の子を泣かすなんていけないんだー!」
――グサグサグサグサッ。
……何だか目が熱いです。何で私がこんな言われ様をしなくちゃいけないんでしょうか……?。
「何ですか、二人共私を泣かせたいんですか。良いでしょう泣いてやりますとも。あー、あー、あー、私を泣かせた、いけないんだー!。うわぁぁぁぁん!」
「……エルシアちゃんって可愛いよね」
「そうですね……ドライに見えて結構子供らしい所もあって、ギャップじみた可愛さがあると思います」
「…………」何だか今度は顔が熱いです。
何故かニヤニヤと私を見るユズとエレナさん。
うわーん二人が私を虐めるー。
さて、そんなじゃれ合いをしていると、日が昇って砂地を明るく照らし始めてきました。
「そろそろ出発しましょうか」私がそう言うと、二人共頷いて立ち上がり、また会う事をエレナさんと誓い合ってから、それぞれの進むべき道に進んでいくのでした。
エレナさんは始まりの町の方向、私とユズは王都の方向に歩いていきます。
……そう言えば、宿や井戸の中で光を照らして私たちを助けてくれた事のお礼をして無かったのを思い出して、私はエレナさんの方に振り返りました。
しかしエレナさんは箒に座って空を飛び、既に目視するのがギリギリの距離にまで行ってしまっていました。
「……ま、お礼は次にあった時で良いですかね。世界は意外と狭いですし、案外直ぐに会えるかもしれないです」
私は独り言を呟くと、私の先を歩いていたユズの隣に小走りで駆けていき、他愛ない話をしながら、フラフラと砂地から出て行くのでした……。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます