「ねえ」3

阿紋

アイ・スクリーム

「ねえ、どうしてなんだろう」

「何が」

「子どもたちが畦道を歩いてる」

「散歩なんじゃないの、幼稚園の」

「何であんなに元気なんだろうね」

「子どもだからだよ」

「子どもって、元気なの」

「公理だね」

「所与のものさ」

「アプリオリってこと」

「ずいぶん難しいことを知ってるね」

「前提ってことでしょう」

「そうもいえるけど」

「そもそも公理は任意であって絶対じゃない」

「蓋然性」

「じゃなくて、恣意性」

「カオルちゃん、そんな難しく考えないでよ」

「僕たちは知らないものは知らない」

「知ってることだけ知ってる」

「知っていることを知ってる」

「それは、ちょっと違うね」

「だいたい難しいことを言い始めたのは、ヒロさんじゃない」

「そうだっけ」

「感じたことがなければ、知ることはできない」

「タンポポの花を見たときの感じ」

「その感じを《きれい》っていうことを知るんだ」

「言葉を覚えるのと同じさ」

「経験がなければ、知ることができないってこと」

「それって、アポステリオリだよね」

「う~ん。微妙に違うような」

「経験がなくても感じることはできる」

「それってやっぱり、アプリオリ」

「カオルちゃん、もっとシンプルに考えようよ」

「何もかも、理由付けする必要はないんだから」

「そうかなあ。でも気になるんだよね」

「それはそれで、いいことだけど」

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「ねえ」3 阿紋 @amon-1968

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