文章力の向上法? 品詞の区分け術

 文章系の創作物を書きつづけると、表現の幅に苦しむことがあります。頭の中では様々な場面が浮かんでいるのに、それを正確に表す言葉が見つからない。激しい戦闘シーンを描いている筈が、「ドドド!」や「キュン! キュン! キュン!」といった擬音のパーティーになっている。僕も、「そういう擬音にはあまり頼りたくない」と思っているので、金属の音が鳴ったときは金属音、女性が叫び声を上げたときは悲鳴、獣が荒々しく叫んだときは雄叫びと、音の名詞(名前)を使うようにしています。擬音は確かに便利ですが、使いどころを誤ると、(あくまで僕の主観ですが)何だか安っぽい感じになってしますからね。小説は、この世の森羅万象、あらゆる物事を文字化したものですから、その表現方法も文字の方が良い。というか、それが小説の強みだと思います。


 小説は、目に見えない世界を描ける。見えない世界を描ける芸術は、(今のところは)文学と音楽しかありません。それ以外の芸術は、人間の視覚に頼るものが大半を占めています。多くの人が観るアニメや漫画も、その画面や吹き出しに文字が書かれていますが、それはあくまで補助的なもの、映像や絵に説明を加えるものでしかありません。アニメの主役は映像、漫画の主役は絵です。それらには「名言」と呼ばれるものも確かにありますが、それも映像や絵があってこそ、です。登場人物のセリフやモノローグが一切ない場面では、文字は無言に徹するしかありません。その意味では、完全な主役として文字が世界を紡げる分野は、小説をはじめとする文芸の世界しかないのです。僕はいま、その世界に挑んでいるわけですが……。そこを歩きまわるのは、簡単なことではありません。言葉の種類を知らないばかりに、本来進むべき道に進めないこともあります。最悪は表現の壁にぶつかり、そこから前に進めなくなることも。僕は「自分の作品をより良くしたい、己の腕をもっと磨きたい」と思い、自分なりに小説の文章力をあげようと努めました。


 その方法が、品詞の区分け。いまだに捨てないでいた国語の便覧を引っぱりだして、そこに書かれている品詞をもう一度最初から学びなおしたのです。日本語における品詞とは何か? それらには、どういう種類があるのか? 我武者羅がむしゃらではありませんが、地道にコツコツとやっていきました。国語辞典に載っている動詞も、そんな感じに復習です。動詞はその種類が年々増える名詞や形容動詞と比べて、最近の言葉は分からないものもありますが、「比較的に変わらない、また、どんな作品でも使える」と思ったからです。僕は国語辞典のア行から順に、動詞のところに黄色い蛍光ペンをひいては、ノートや単語帳などにその意味や活用法などを書きうつし、小説にそれをできるだけ活かせるようにしました。また小説を書く上でも、その小説が(自分の中で)文学寄りか、エンタメ寄りかで文章の書き方を変えるといった工夫もしてみました。


 例えば、「見つめる」と「凝視する」は同じ意味ですが、「見つめる」は普通一般な感じがする一方、「凝視する」はその意味が分からないといけないし、あるいは、その意味が分かっていたとしても、文章自体が何だかかしこまった感じになるため、格調高い文章を演出することができます。また「見つめる」と「見詰める」も、「詰」を平仮名に変えることで、文章全体にやわらかを出すこともできます。できますが、それでも未熟なのは事実。まだまだ精進が必要です。


 偉そうなことを長々と語ってしまいましたが、このエッセイが皆さまの創作活動に少しでもご貢献できたら幸いです。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る