B級でも、映画は映画

 最高の物だけが、最高だとはかぎらない。特Aクラスの道具を使っても、普通以下の出来になることは、ままあることです。超一流の人材をつかったのに! 最高画質の映像を作ったのに! 「弘法筆を選ばず」なんてことわざもありますが、「最高の道具を使ったら、最高の物ができる筈!」と思うのは、ある意味で普通のことかもしれません。最高の道具は、普通の道具とは違うのですから。ある程度の期待を抱くのは、当然のことです。僕も安い道具を使うよりは、高くても良い道具を使った方が、色々な意味で良いと思っています。高い道具は、それなりの性能を備えているわけですからね。特に執筆の道具は、(あくまで「自分にとって」、ですが)最高の道具を使いたい。今の自分とぴったり合う、相棒のような道具を使いたい。道具の善し悪しは、創作の完成度に必ずしも関わるとは限りませんが、それを使っている間は、それ以外の道具を使っているときよりも、満足度がかなり高くなっていると思います。自分がまるで、一流作家のような気分になれる。実際は一流でもなんでもない、ただの素人作家ですが。自分がこう、凄い作品を書いているような気分になれるんですね。その意味では、最高の道具はやっぱり良いと思います。


 ただ……それでも愛して止まない物は、ある。たとえ低予算でも、ついつい観てしまう作品があります。人はそれを、「B級映画」という。B級映画はお世辞にも「凄い」とは言えませんが、独特の空気があり、映画界隈に一種の安息地をあたえています。超有名な名作映画は、確かにおもしろい。おもしろい上、映画自体の地位向上にも力を尽くしてくれています。「それらの作品があるからこそ、映画は映画としての地位を守り、そして、その地位に座りつづけているのだ」と。映画がいまだに廃れないでいるのは、名高い名作たちが映画の基礎を守っているから。その誇りをずっと守りつづけているからだと思います。そうでなければ、一回の料金が2,000円近い(子どもの場合は、半額だと思いますが)映画なんて誰も観ないでしょう。彼らは、映画の守り手です。ですが、その守り手になれなくても、映画の守備範囲を広げてくれている作品もあります。B級映画は、その一部を守っている。「おふざけ」としか思えないような映像、学芸会レベルの脚本、その他諸々。それこそ、よく探さなければ、見落としてしまうような作品がたくさんあります。


 僕も正直、B級映画にはそれほど詳しくはないですが、TSUTAYAやゲオでそういうのを見つけたり、YouTubeの動画などでそれらを知ったりすると、何ともいえない気持ちになります。ときには、変な興奮を覚えるときもある。映像の出来はイマイチなのに、超現実シュールな笑いを誘う内容のせいで、乾いた笑みがこぼれてしまうんですね。あれは、下手なギャグ漫画よりもおもしろい。サメがワニと戦ったり、元ネタが有名作品のパロディだったり、本当にやりたい放題です。あの自由度には、本当にびっくりします。ですが、それが「B級映画」というもの。真面目な映画では、決して描けない遊びです。遊びのうまい作品は、本当はどんな名作よりも名作かもしれません。僕も「やりたい放題」とまではいきませんが、「そういうおもしろい作品が書けるようになれたらな」と思います。


 やりたい放題もいいですが、そろそろ食べ放題もしたりところ。

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