流行りを追うか? 流行りを作るか?

 創作を行っていく上で、一度は考えるであろうこと。それは、「自分は、今の流行りを追うべきか? それとも、自分が次の流行りを作るべきか?」です。流行りの作風に合わされば、自分の作品も読まれやすくなる。僕もネット小説界隈、加えてライトノベル界隈(こっちの方は2020年現在、ラブコメやSF要素が入った青春物にも力を入れているようです)では異世界物が流行っていることを踏まえて、流行りの要素を入れつつ、自分なりの特性を加えた作品、それに類するアイディアなどを考えたり、あるいは、実際に書いたりしています。それから分かることは、流行りの作品を書いた方が、そうでない作品を書くよりも、読者の方に読まれる確率がやはり高くなることです。


 流行りの雛形ひながた……テンプレートには要するに取っつきやすくなる要素、「醤油ラーメンを食べたい人」に醤油ラーメンを出すような、一種の安定感があるのでしょう。醤油ラーメンを食べたい人は、その醤油ラーメンを基本的に拒みません。むしろ、それを喜んで食べます。「メチャクチャうまい!」と猛烈に喜ぶことはないでしょうが、その反面に「ものすごく不味い」とがっかりすることもない。自分の想像を超えない範囲で、想像通りの味を楽しむことができます。だから、お店の人にも喜んでお金を払ってくれる。「テンプレートを破る」とは、それまでの流れに変化を加えること、お客さんが「醤油ラーメンを下さい」と頼んできた時に「今日は、◯◯ラーメンがオススメだよ」と返すことだと思います。


 それには、大変な勇気が要る。食べたい物がある人の気持ちを変えるのは、自分で考えるよりもずっと難しいことだと思います。言葉を変えれば、相手に自分の売りたい物を買わせるわけですから。簡単な筈がない。人間は余程の好奇心か冒険心、若しくは、挑戦心がない限り、新しい物は買おうとしません。今まで慣れ親しんだ物、自分がずっと使っている物に信頼を抱き、そこから一定の安心感を覚えて、付属品の取り扱い説明書すら読まず、その製品を「ふん♪ ふん♪」と弄くる筈です。僕も子どもの頃から電子機器を使ってきたからこそ、新しいゲーム機やパソコンをある程度迷わず使うことができ……ると思います。コントローラーの造形に驚くことはあっても、その操作方法に戸惑うことはほとんどありません。


 ある程度弄くれば、大体の事ができるようになります。テンプレートには「それ」を助ける力がありますが、そのままではやっぱり進まない。新しい領域が、切り拓かれない。新しい領域は今までの常識を破らなければ、決して作られないのです。だから、創作家クリエイターは凄い。特に新しい領域を切り拓いた創作家は、本当に偉大な人だと思っています。正解の無い世界に、「正解を作った人」なのですから。尊敬以外の念は、何も抱けません。ただひたすらに凄いです。その人たちがいなければ、それは決して見つからず、仮に見つかったとしても、発明や発見自体がずっと遅れていたでしょう。普通の人は、そこに道があるのかさえも分からないのです。分からない道にわざわざ進もうとする人はいません。大抵は回り右で、元いた道に戻ってしまいます。それをあえて、回り右しないのですから。その人たちは、本当に勇気ある人たちです。文字通りの創作家クリエイター


 僕はいわゆる臆病者チキンなので、流行を追うのと流行を作るの、その両方を選びたいと思います。

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