19 面接
成清のふわふわとお花がとんでいるように見えるほどの明るさに、壱晴は強張っていた顔の緊張をといて笑った。本当に楽しそうな成清を見ていると肩の力が自然と抜けて少しだけ楽になった。
「ここは本拠地じゃないよ。試験会場っていうだけだと思います」
「えっ!そうなの!?」
成清は口をあんぐりと開けて驚いていた。けれど、それはそれで良いらしく。
「ビル一個、これ借りてんのかな?それとも買ったのかな?試験会場すげえ!」
と、やっぱり目を輝かせていた。そんな成清を暖は終始、「何だこいつは」という顔をして見ていたけれど、特に話しかけはしなかった。
「これで全員か?碧音」
「ええ、今回は三十二人、受験者がいらっしゃいます」
「ふうん。どんどん増えていくな。それだけ花咲きが増えてるってことか……。」
扉から碧音と京慈が入ってくる。部屋の中に緊張が走ったのがわかった。暖は睨むように京慈を見つめている。けれど、そんな空気感に気づいているのかいないのか、やはり成清は他の受験者とは違った。
「なま
「な、成清くん!声大きいよ!」
「え?あ、うわ、ごめんなさいっ」
慌てて壱晴が肩を叩き囁き声で牽制したが、時すでに遅し。碧音が鋭い目で成清を見つめていた。
「そこ、うるさいですよ。静かに」
「俺のこと、かっこいいって言ったか?見る目あるじゃねえか」
京慈は満更でもないという様子で笑っている。碧音は呆れたように「京慈さん……。」と名前を呼んでから、咳払いをして。
「これから四人ずつの集団面接を行います。全員の面接が終了したのち、体力テストに移ります。全員が一斉に行うタイムトライアル。一階からスタートし、屋上がゴールになりますが、ビルの様々なところに仕掛けがしてあるのでご注意を。屋上までのルートは皆様に任せます。ただ、タイムだけが全てではなく、各地点にいる『焉』のメンバーが様々な視点で採点を行います。身のこなし、体力、精神力、適応力、応用力などですね。面接が終わった人から持参していただいている運動着に着替えるように。男性はこの部屋で、女性は隣の会議室で着替えをお願いします」
壱晴は運動神経が皆無だった。ちゃんと自覚がある。面接は就職活動である程度慣れているにしても内定は一つも出ていない。形だけでも試験を、とのことだったが、それでも不安は募っていく。
壱晴は暖と成清と一緒のグループだった。部屋に入る前、成清はお願いしますと言ったのか失礼しますと言ったのかわからなかったが、人一倍大きな声で「っしゃす!」と言って中へ入って行った。
面接官は京慈と碧音。優良は面接の部屋までの案内をしていた。
「では、面接を始めます。まずは京慈さんからお話があります」
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