16 幼さ
「まあまあ。で?暖、壱晴、入るだろ?」
優良を曖昧に宥める京慈に暖も壱晴もぴくりと反応し、「はい」と深く頷く。暖と一緒に入れるのならば願ったり叶ったりだ。
よし、と満足そうに京慈が頷くその隣で優良は眉を顰めている。
「京慈さん……本気なんですね。はー……わかりましたよ。ただし!」
優良が無理やり京慈を自分のほうに向かせて、不服そうに目を細めた。
それにめげることなく京慈はさっきと同じように「まあまあ」と適当に宥め始める始末で、壱晴はそのがさつさに驚いてしまう。さっきからこの人、適当すぎる気がする。
「壱晴くんと暖くんには試験をちゃんと受けてもらいますからね!そうじゃないとさすがに他の仲間が納得しないですよ。だって高校生が異例で入るんですから!」
高校生、というところで優良は暖と壱晴を手で示した。その中には漏れなく壱晴も入っている。また、壱晴に衝撃が走った。
そんなに高校生に見える?本当に?と、頭がぐらつく横で、暖は口許を押さえ肩を震わせている。
「まあ、いいか。うん、じゃあ試験は受けるってことで。試験内容は優良から聞いとけよ」
あっさり京慈が承諾すると、優良は深い溜め息を吐き出して「全くもう」と首の後ろに手を置いて項垂れた。
京慈が部屋から出ようと歩き出したタイミングで、壱晴はもうここしかない、と声を出す。
「僕、大学四年生です。暖は高校三年生だけど……。」
手を小さく上げて肩を竦めた。
京慈と優良の顔を見てみると、二人とも目を丸くして壱晴を見つめている。壱晴にピシャアン!とまた衝撃が走った。
「……っはは!壱晴は高校生じゃないって!失礼だぞ!」
暖は堪えきれなくなったのか、声を出して笑い始めてしまっている。
「だ、暖!笑いすぎだよ!僕が幼く見られるとそうやっていつも笑うんだから!」
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