第5話 中庭 de 初デート
許嫁のリサと中庭に来ている。
見事な魔界植物が咲き乱れていた。
魔族を襲う事はないが、人間は襲うらしい。
この花や蔦達は……
魔族の視点だからかどうかは別にして、結構綺麗で華やかだとルインやメイド達は思っている。
メイド達からの情報と魔界植物図鑑から得た情報である。
3歳ではあるが、ルインが手塩にかけて育てている植物があった。
花の中心に宝石がめしべのように鎮座している、魔界特有の植物。
正式名称はない。
何故ならば、ルインが品種改良を施した植物であるためだ。
これも乳母やメイド達から得た植物系スキルと錬金術の融合から産まれた産物である。
あえて呼ぶならジュエリーローズ。
薔薇のような花を持ち、中心の宝石は輝くピンク色をしている。
この宝石を見て、リサは目を輝かせていた。
「ねぇ、あなた。」
そのあなた呼びに背筋がぞっとするルイン。
「リサ、出来ればあなたではなく名前で呼んで欲しい。格式とか家柄とか関係なく。僕の許嫁として。」
ルインの言葉にリサは一瞬戸惑う。
あなた呼びするのは周りへの牽制も兼ねていた。
社交界のような場所であればそれも効果的なのだろうが、この魔王の館にいる以上はみんな身内も同然であるのに。
「では、ルイン様と呼ばせていたらきましゅ。」
リサの噛み癖は年齢からくるものか、あざとさからくるものか。それとも両方か。
「まぁ、それで良いか。それでリサ、なんだい?」
ルインは流暢に話している。
ルインとリサは同じ3歳ではあるが、ルインには前世知識というものが備わっている。
妙に大人びて居たりするのも仕方がない。
「ルイン様、この宝石の花はなんていうのです?」
「あぁ、これは僕がスキルで改良した植物で名前はないんだ。敢えて言うならジュエルローズってとこかな。」
めしべが宝石となっている事を簡単に説明するが、リサにはめしべが何かを理解するには早かった。
それでも綺麗だという事だけは理解してるようだった。
「ここに一つだけ採取出来たものがある。ちょっと待って、加工するから。」
ルインはやはり自らがスキルで生成した金属で作ったチェーンを取り出し、宝石を嵌めてネックレスを作る。
スキルの恩恵により、不壊、紛失・盗難防止、破棄不可、返品不可、不蝕等が盛り込まれたモノとなった。
強制的なプレゼント、返すことも壊れる事もない、愛と一緒に呪いも詰まったネックレスとなって。
もっとも今の二人に愛情があるかと問われれば微妙なところではあるが、互いに悪い感情は抱いていない。
輝く桃色の宝石はまだ3歳のリサをより可愛く魅せるためにより主張を強めた。
胸元のアクセントとして身に着けるため、ルインはリサとの距離を詰め首から手を回しネックレスを掛ける。
その瞬間リサから良い匂いが鼻を擽る。まるで魅了されるかのようだ。
ただし、魔法やスキルによる魅了無効を持っているルインには、それらは無意味。
サキュバスクイーンですら仕事をさせて貰えない。もっとも試したことはない。
ゼロ距離となった二人は……
リサは顔を上げてそのままルインの唇に自らの唇を押し付けた。
子供故に舌を絡める事はない。可愛いキッス。
それでも互いの粘膜を交換するには充分である。
「んっ」
リサが小さな吐息を漏らす。3歳だというのに妖艶さを同居させてるかのような表情は許嫁でなくても、魅了されてしまうだろう。
ルインの脳裏にスキルが流れ込んでくる。
―――床上手―――入手
―――上目遣い―――入手
―――残酷な天使のベーゼ(笑)―――入手
なんでやねんっ
脳内でツッコミせずにはいられなかった。
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