第2話 テンプレの自称神と白い空間。

 「……GAKURI……GA……ぁ?」


 ラノベで良く目にした白い空間っぽいところにいる……気がした。

 目に映る景色が、パソコンのメモ帳の何も打たれる前のように白一色なのだから。


 「ここは……」

 声を出すことが出来た、でも身体が動かない、実体がないのだろうか。

 異世界転生に憧れてきたのだ、色々なパターンは頭に……108歳の脳の範囲で覚えている。


 「ようこそ、異世界転生に憧れて寿命を全うした者よ。お前は自ら飛び込もうとしておったので、他者の迷惑にならないよう自殺出来ないようになっておったのだ。」

 「そのためその身体の限界まで生きておったわけだが……ここまでは良いか?」

 突然現れたリクルートスーツみたいな服装の女性が現れ一人何か語りだした。


 こくこくと頷く男、実体がないのでそうしているつもりであるが。

 ラノベでありがちな転移の時の高校生達のように文句や反論は一切しない。

 黙って説明を聞き、言葉の綾などで騙されないよう気を付けている。


 「察しているとは思うが、私は神のような存在だ。本来なら普通に輪廻の渦に従い次の命へと紡がれるのだが、お前があまりにも異世界転生に憧れ過ぎておるのでな。」


 「寿命まで生きた褒美に転生させてみるのもおもし……アリだなと先日の神会議で決まってな。特別に転生させてやろうとなったわけだ。」

 ここまでの話を黙って聞いていた男は自称神の容姿を凝視する。

 その姿はとても神とは思えない程普通……

 ここがどこかの会社の面接会場と言われてしまってもおかしくないくらいサラリーマンぽい神なのだ。

 正確にはサラリーウーマンという造語で言い現わしても良い。


 もっといえばお局様少し手前と取れる、人で言えば30歳くらいの事務員のような自称神。


 男はそれでもそれはそれでアリだ、幼女や少女じゃないのは残念だけどアリだと思っていた。


 「お前は生前主にトラック運転手に迷惑をかけまくったカルマ的なものがあるため、転生の条件として生まれ変わった種族のために善行を積む事が最低限義務付けられる。あとは好きに生きて良い。」


 「あ、あの、その世界はどんな世界でどんな生き物がいて魔法とかハーレムとかはありますか?」

 ここで初めて神に対して意見を申し上げる男。


 「お前の生前を見ているから知っている、よくあるラノベの中の世界みたいなものだ。魔法もある、ちゃんばら染みた剣とかもある。」

 「種族として人、エロ……エルフ、獣人、魔族、精霊等たいていのものは存在する。だが魔王はいない、残念だったねぇ。」


 「しかし地球で言う野生の凶暴な動物より恐ろしい魔物なんかは存在する。良くも悪くも共存している。冒険者とかもいるぞ。」

 「当然平民、奴隷、貴族、王族なんてのも人の中には存在するから、お前の言うハーレムもないとはいえない。」

 「美醜感覚も地球と然程変わらん、まぁ種族によってはそれぞれあるようだがの。」


 「ま、何をするにしてもお前次第であるし、何をしても咎める事はない。しかしお前は善行を積まないと……次の生命体はGだ。」

 「黒い物体Gだ、姿を発見されただけで叩かれたり殺虫剤まかれたりするあのGだからな。」

 「もちろん態と死んでさらに次の輪廻を期待してもその場合は永遠のGだ。」


 「善行を積ませていただきたく存じます。」

 「うむ。それと……善行を積むにしても一応神特典くらいはやろうと思う。」


 「チートよりもハーレムを!もふもふを!メイドさんを!」

 欲望・煩悩丸出しの男の表情……実体はないのだが、神にはその表情らしきものは伝わっている。


 「お前の年齢の数だけ所謂スキルを持てるようにしてやる、ここで全てを選ぶ必要はない、先天性と後天性とあった方が生きる上で良いだろう。」


 ただし、強制的に身体強化と疫病耐性、免疫耐性、鑑定MAX、空間収納、言語能力(話す・書く・聞くのお手軽3点セット)は付与されるらしい。


 「ここで選べるのはいくつまでですか?また、108も付けられるのはありがたいですが、その数を増やすようなスキルはありますか?作れますか?」


 「質問の多い奴だな。先も説明した通りここで全てを得る必要はない、そしてスキル数を増やす方法はない。」


 「それとお前が生きる世界は、わかり易く言うとロマ〇ガやF〇Ⅱのような熟練度の世界だ。」

 それはまさか、選ぼうとしてキャンセルの繰り返しで一回の戦闘で一気に上げられちゃうやつか……と男は考えた。


 スキル獲得率超上昇、スキル熟練度獲得超上昇、異性好感度超上昇、能力吸収、性豪を選んだ。


 「あ、そうだ。せっかく性豪とか取ったところ悪いけど、過度な事は表現出来ないでな。さらに上の神運営から天罰がくだるでな。私はそうして失われた世界物語をいくつも見ている。」


 「あ、ハイ。気を付けます。」


 「そろそろ時間も少ないから、葬るぞ。良き輪廻を。」


 男の意識がもわんもわんとクラクラし始め混濁してくる。

 これが新しい世界への旅立ちの証なのだろうか。


 「あ、言い忘れたけど生まれるところから始まるからなー、バブ……」


 最後に神は何か言いかけていたけど男には意識出来なかった。



 そして生命は廻る。

 地球で異世界転生を夢見た男は……


 「ほぎゃぁぁ、んぎゃぁ……」

 赤ん坊として新たな生を受けた。

 


 「おう、生まれたか。」

 「えぇ、可愛い男の娘……男の子ですよ。」

 

 意識がはっきりした時男は赤子の鳴き声しか上げられなかった。

 そして目の前には自分を覗き込む二人の男女……?


 以外にも数人の姿が見えるが。


 (あれ、自称神の説明が終わったと思ったら。そういえばはっきりとは聞こえなかったけど生まれるところからと聞こえたような?)

 (という事は0歳児からスタートという事で良いんだよな?転生だしそうだよな。ってこうして物事が考えられるという事は、あー記憶あるわ。)


 (とりあえず念願の異世界転生を果たしたぞ。ひゃっほーい。しかし善行を積まないと来世以降はGだからな。ハーレムを築きつつ良い事しないと。)


 (さて、まずはこの二人の名前と詳細を確認しないとな、鑑定……と。)

 特にスキルの使い方を教わったわけではないけど、これまで読んできた大量のラノベ知識のおかげで何となくわかる男だった。


 【ザイン・ペタン 255歳、魔王、性交渉の相手20人(異性19、同性1)、子供の数20人】


 【ルシア・ペタン 255歳、魔王の正妃、性交渉の相手5人(異性1、同性4)、子供の数1人】


 「うえぇっぇぇっぇぇん」

 (あの神!魔王なんていねーって言ったじゃねーかよ。)


――――――――――――――――――――――――

 後書きです。

 異世界転生に憧れた男は自称神に色々説明を受けた挙句、魔王のいない世界に転生したかと思いきや、魔王の息子として生まれました。

 そしてその種族にとっての善行を積まないと、次の輪廻ではGになってしまうという恐ろしい制約が。

 どうなる男、どうなる憧れた男。

 まだ名前は……ない。

 

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