第2話 私のお通夜
目を覚ますと自分のお通夜だった。祭壇に自分の遺影が飾られている。本当に死んだのか……。
私の顔写真は黒い
写真の私は笑顔だった。あんな風に笑っていたのか。
祭壇の前には黒い服を着た人がたくさんいて、鼻をすする音が聞こえる。
ここはおじいちゃんが死んだ時にお通夜をやった会場だ。おじいちゃんだけではなく、市内の人がほとんどここでお通夜をやる。
たぶん私は、宙に浮いているのだろう。上からこの光景を見ている。みんな泣いていた。
お母さんはハンカチで目元を抑えて泣いている。
お父さんは目が赤く、涙ぐんでいる。泣くのを我慢しているのが解る。
お姉ちゃんは歯を食いしばってどこかを凝視している。
友達が来ていた。幼稚園から高校までずっと一緒でいつも遊んでいた幼なじみ。いつも突然「暇だ、遊ぼう」って電話が来る。家族も知り合い同士でお互いの家でいつも遊んでいた。
中学から仲良くなった友達。親友と呼べるであろう彼女とはどんな小さな感情でも言い合っていた。初めて私の欠点を指摘してくれた友達。
「
そうして言いにくいことを言ってくれた。
二人ともずっと泣いていた。倒れるんじゃないかと思うほど泣いていた。
二人が私と特別仲良しなのを知っている別の友達が、彼女たちに寄り添って支えていた。
高校で仲良くなった友達。毎日会うので話題が尽きない顔ぶれ。毎週誰かの家に集まっていたね。でも今週、私は参加しなかったな。失恋を引きずってそんな気分になれなかった。
誰かが失恋した時は、みんなでその子を慰めた。数日後には笑顔になって「友達っていいなぁ」って言う。みんなそうだった。
私も友達を頼っていたら、もしかしてそんな風に笑えていたのかな。後悔が少し押し寄せたけれど、もう遅い。涙が
私の遺影の前でみんな泣いている。
「どうして死んじまったんだよ……俺、何も出来なかった。気づいてやれなくてごめん……」
いつも私を心配してくれた
「どうして! どうして死んだのよ!」
友達が泣きながら叫んだ。誰も止める人はいなかった。みんな下を向いていた。
泣き叫ぶ友達を見つめる人の目には涙が浮かんでいた。
田中くんは来ていなかった。私、あなたに失恋をして死ぬ道を選んだのに。死んだあとまで一人よがりだ。ここで私は大きな間違いを犯したことに気づく。
勝手に勘違いをして恥ずかしくなって死んでしまい、みんなを哀しませている。この罪はもう償えない。私はとても後悔した。
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