第66話 - 王の領域 1
3週間ほど経ち、儀式なしの呪鎧が3体出来上がった
ゾフィ、クレマリー、他クレマリーの弟子三人が呪鎧を装備
俺はいつも通りの装備
事前にオークキングの縄張りへ早馬で偵察に出て現地の下見は済んでいる
オークキングはクーベルシュタイルの北東、巨大な平原を森で囲まれた平地に木を中心とした壁、テントに似た簡易家屋をいくつも建てている
周辺にもいくつか集落があり、それぞれが街ほどの大きさだ
今回は長期戦になる、強力な統率者が従えるジェネラル達が寝返ると思えない
内部から切り崩すのは難しいだろう
そのため補給路をしっかりと引くため、街道の整備をした
物資の調達はデブレオが手伝ってくれている
オークの集落を焼くための火炎槍などいくつかの新兵器もゾフィがこしらえた
1,000体もおり、ジェネラルが4匹、更にキングまで居るという事は相当数の女がいる
せこせこと遠いところから攫っては集めたんだろうか、人間の女が足りない分は家畜などの大型動物のメスを使っているだろう
まずはオークキングが住む拠点を残し、周りにある街を襲う
おそらくひとつの街につき1体ジェネラルがいるはずだ
◆ ◆ ◆
街道を順調に伸ばし、馬車を使っても2日程度で現地にたどり着けるようになった
あまり距離的に遠くはないのだが起伏が多く移動に時間がかかる
入念に途中で砦を築きながら周りの小さな集落も排除し交通の安全を確保する
集落攻略に向かっていたクレマリーと他3人が馬車へ戻ってきた
「集落を襲っているおかげで部下たちの自信もついてきました、もう呪鎧1体でオーク30体くらいの集落であれば制圧できるでしょう」
「素晴らしい成果だな。帰ったら他の部下たちも定期的に狩りに出したほうがいいだろう」
「そうですね、自信が着くと動きがよくなります。100の訓練よりも1つの勝利の方がより濃い経験を与えてくれますね」
そうだな、生きて帰れるというのはそれだけで大きな価値がある
もともと力自慢だった者たちが多いとはいえオークと戦った経験はないはずだ
むしろ穢された恐怖で動けなくなってもおかしくない
この遠征の肝はいかに不利な状況を避け、無理をさせずに倒すかが重要だ
「よし、では引き続き街道工事の護衛を頼む。また偵察に行ってくる」
「はい、十分にお気をつけて」
その後も何度か集落攻略を繰り返し、とうとうオークキングの拠点が見える草原までやってきた
「ここから先は呪鎧で進もう、馬車はここに止めて一人警護にあたってくれ」
「わかりました」
クレマリーはそう言うと一人選んで馬車の護衛を命じる
残りは大きな呪鎧に乗り込み最初のオークの拠点へ向かう
俺はゾフィの肩に乗せてもらい、街の様子を眺めた
「ざっと見てジェネラルは1軍団100体だな。ほとんどキングが兵を連れているんだろう」
「これなら街ひとつにつき半日で攻略が進められますね」
「他の街も近い、オークは馬鹿だがキングがどう動くかわからん増援に注意してくれ」
「はい」
俺とゾフィが1班、クレマリーと部下二人が2班、二班に分かれて攻略を進める
1班が壁に取り付き、2班が周囲の警戒をする
ゾフィが爆裂メイスを構えて、振りかぶる
「壁壊すよー」
爆音と共に木杭で出来た外壁を吹き飛ばし
わらわらとオーク達が集まってきた
麻痺毒の矢をばらまき動きを止めていく
中に穢れた女がいるかもしれないので慎重に動いていく
雑魚を掃討しながら奥へ進むとオークジェネラルが憤慨していた
「《貴様ら!ニンゲンがなんでこんなところまで来る!》」
「《討伐をしろと言われてな、俺たちも困ってるんだ》」
「《ニンゲンごときがよくも!》」
「《そうだ、お前たちのキングはどんなやつなんだ?恐ろしい者なのか?》」
「《お前らごときが王に会えるはずもない。ここで死ね》」
忠誠心が高いな、王を立てつつ傲慢さが増している
オークキングの情報を引き出すのは難しそうだな
打ち負かしたとしても口を割りそうにない気がする
「クレマリー俺にやらせてくれ。義手の性能を試したい」
「はい、後ろに控えております」
「《俺と勝負して俺が勝ったら教えてくれるか?》」
「《貴様に話す事など何もない!》」
戦闘好きなオークがここまで忠誠心を示すとは
オークキングの存在はそれほど大きいのか
「仕方ないな、じゃあやるか」
俺はメイスを構えて走り出した
ジェネラルは両手で構える巨大な剣をもっている
ジェネラルが両手で抱えるほどだ、受ければ呪鎧でも危ない
走りこんでいくとジェネラルは剣を振りもせず体当たりをしてくる
間一髪で躱し後ろへ回るとジェネラルは剣を振りながらこちらへ向き直る
体勢を崩してから攻撃するような知能があるとは…
鎧も重装備で厄介だ
動きは速くないが重量があるせいで喰らえばただでは済まない
何度か切り結び、右腕と左腕に鉄杭を飛ばす仕掛けを装備する
もう一度走り込み、剣を横に薙ぐジェネラルの攻撃を滑り込んで躱す
更にその勢いのまま体当たりを仕掛けてくるジェネラル
足を踏ん張り体勢を戻してジェネラルの頭へ手を当てた
轟音と共に鉄杭が飛び、ジェネラルの頭が潰れ
ジェネラルは息絶えた
鉄杭は兜を貫通しており十分な威力を披露してくれた
「これはいいな」
鉄杭をを飛ばす装備を見ながらつぶやくとゾフィが満足そうにしている
「そうだろ、あたしの自信作だぞ」
「本当にいいものを作ってくれたな、ジェネラルは厄介だったんだ。よほど体重が乗った一撃でもなければ長引くからな。これなら呪鎧達にも劣らない」
「え…呪鎧と張り合うつもりでいたの…」
クレマリーは笑い出した
「さすが狂戦士殿!まさか呪鎧に勝つ事も考えているとは」
「呪鎧に乗ったやつらが私欲で暴走したとき止められないだろう」
「いや、確かに。ですが普通そんなこと考えません」
「そうかもな、でもなるだけ俺が決めた事の責任は放棄したくないんだ」
「ふふ、それがエーサー様のいいところですね」
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