第15話 - ゴブリン
スウォームが終わってから街の人たちの態度が変わった
道行く人たちが声をかけてくるようになった
今日もギルドへ向かう途中の道で
「狂戦士のあんちゃん!うちの武器も見てってくれよ。気に入るものが見つかるぜ」
「狂戦士さん!うちのポーション買ってかない?安くするよ!」
「狂戦士さん!軽くて丈夫な防具はどうだい?いいのが入ってるよ!」
などと声をかけられる
討伐直後は冒険者達が顔を引きつらせていたが現場を見ていない街の人たちには頼もしく映ったようだ
クベアなんかは暇さえあればひっついてくるようになった
今日も宿から冒険者ギルドまでのたった10分の道のりで、偶然を装い会いに来る
「エーサーさんおはようございます。今日も偶然ですね」
毎日続けば偶然ではない
いつも道半分すぎた頃に”偶然”会う
暇なんだろうか?
「仕事は終わったのか?」
「もちろん、日が昇る前に起きて馬房の馬たちにご飯をあげてきました。午後は冒険者ギルドで解体のお手伝いをするんです」
クベアは嬉しそうに毎日一言交わしてはギルドの前に着くと去っていく
街の人の評判もよくしっかりした娘だ、お世辞にも美しいとは言えないがこういう女性こそいつの間にか結婚してるんだろうな
「そうか、いってらっしゃい」
「はーい!エーサーさんもお気をつけて!」
毎日ギルドの前でこのやりとりをする
クベアは小さく手を振って去って行った
冒険者ギルドへ入るとカウンターへ寄る
俺を見つけるとベロニカがカウンターに立って情報をくれるようになった
「エーサーさんいらっしゃいましたね」
「うん、今日は何がある?」
ベロニカは手元にある羊皮紙をめくりながら直近の情報を纏めて教えてくれた
「んーそうですね。ここ最近はオークの討伐が順調なのでそれほど大きな被害はないようです。オークが減ったことによりゴブリンの数が増えているみたいですね。オークと同じく女を攫う魔物です、一体当たりの討伐金額は少ないですが弱く、数が多いのでオークと同じくらいは稼げると思います」
ゴブリンか、子供ほどの背丈に緑色の肌
とにかく数が多く悪知恵が働く、人が使う物であれば学んで使うほどの賢さがある
繁殖力が異常に高く女を攫えば一日で五匹以上産まれ、五日で成体になる
子供ほどの腕力であるため弱く、武器も短剣や小さな槍を使う
上位種になれば大人ほどの大きさになり腕力もオークと変わらないくらいになるケースもある
ここはオークとゴブリンが争っている地域でもあるためオークが減ったことでゴブリンが増えたのだろう
オークを狩り続けていたので少し責任を感じる
今回はゴブリンを討伐しよう
「わかった。ゴブリン討伐の依頼を受けよう」
掲示板に目をやり、向かおうと一歩踏み出すとベロニカが呼び止めた
「あ、エーサーさんに丁度いいものを取ってあるので聞いてってください」
「丁度いいもの?」
とうとう依頼を取っておくようになったベロニカ
これも狂戦士効果なんだろうか
ベロニカは羊皮紙をカウンターに出すと説明を始めた
「場所はミリアから東北の岩山です。ここに30体~50体ほどの巣があるようでこの付近では薬草に使える清流や植物が取れるんですがゴブリンの歩哨が増えてなかなか立ち寄れない状況になっております。エーサーさんなら殲滅とまではいかなくても十分に数を減らすことができると思うのですがいかがでしょうか」
小物とはいえ多いな
一度に囲まれてしまえばさすがに辛いだろう
付近の地形を十分に調べて望む必要がありそうだ
「わかった、距離は?」
「馬車で二時間ほどですね。今から向かえば正午には着くと思います」
「そうか、受けよう」
昼ならゴブリン達も活発ではない
行くなら今がいい
「ありがとうございます。お気をつけて」
ベロニカは受注処理を終わらせると俺を見送って手を振った
久しぶりの殲滅戦になる、オーク達に比べれば小柄で脆いが毒などの薬品を使う知恵もある
道具の補充は入念にしていこう
準備を済ませて馬車を借り、北東の岩山へ着く
馬車を降り、荷物を持って山に入るとさっそく歩哨が五匹歩いていた
うかつにも見つかってしまい、戦闘になった
ゴブリンたちは全員が走り出し飛びつくように襲い掛かってくる
身を躱しながら両腕で手斧を振り一匹ずつ手早く仕留めていく
ゴブリンと戦ったのは初めてだったが聞いていたよりも脆く大した力も入れずに簡単に砕けてしまう
あっという間に五匹仕留めてしまった
これなら10匹くらいに囲まれない限りはうまく立ち回れる限り無傷でいけるだろう
ゴブリンたちの巣を探していくことにした
昼間に歩哨がいるくらいだ、足跡を追えば大きな巣にたどり着くだろう
それなりに統率された部隊でもなければ夜行性のゴブリンが昼間に歩哨なんて歩かせない
足跡を追い、山の奥へと進んでいくと複数の足跡が合流する場所を見つける
一か所の入り口から出てきてここであちこちに分かれるようだ
巣は近いだろう
十分に警戒しながらさらに足跡を追うと崖の下に小さな洞窟があった
人一人がやっと入れるほどの大きさだ、おそらくここが巣だ
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