第5話 - 復讐の矛先

ある日オークの集落を探して一人斥候をしている時だった


森で足跡を追っていると、これからスウォームになるであろう30体ほどのオークの群れを見つけた

リーダーらしきオークはやたら声のデカい奴で興味深いことを話している


「《司祭…命令…!……女…………こい!》」


フルーフに教わったオーク語が未熟であまり意味を理解できなかった

だがこれがスウォームである事と意味を並べてみるとなんとなくしようとしている事がわかる


司祭の命令で女を連れてこいという内容だろう

興味深いのは司祭という単語だ


フルーフに奴隷呪印を刻んだオークの事ではないだろうか?

オーク達が襲撃に成功すれば司祭のいるところへ戻るのではないだろうか?


しばらくスウォームの群れを観察していると森を出て街に向かっている

平原へ出て5日ほど追跡を続けると街が見え、オーク達は号令に従って整列し

バーサーカーであろう上位種1匹とその他下位オーク達が街へ向かって突撃していった


激しい戦闘音と怒号が鳴り響く


戦闘は二時間ほど続いた、バーサーカーがやたら奮闘していたがスウォームは街の中に入ることもできず全滅した


街の自衛力は高く、スウォームがたどり着く前には中から50人はくだらない冒険者達が大量に出て来てオーク達を迎撃、バーサーカーが10人ほど斬り伏せていたくらいで人間側に死者はいなさそうだった


中でもオークの突進を止めるための迎撃用罠、馬防柵が猛威を振るっていた

長い木の杭を3本~5本ほど間をあけて固定されたものが地面に置いてあり、オークの突撃に合わせて斜めに構える

これが外壁周辺にいくつも配置されており突撃のために走り出したオーク達が止まれず勝手に刺さっていく


後ろから一緒に突撃してくるオーク達のおかげで抜け出せず、後ろの者たちもさらに押されて刺さっていくのだ


単純な作りなので真似しやすく効果も高い、参考にさせてもらおう


司祭の手がかりを失ってしまったが得るものはあった

オーク達の来た道を戻っているとスウォームは大軍だったため足跡が至る所に残っているのに気づいた


(これなら司祭のいる集落を追跡できるかもしれない)


今日は収穫の多い日だ、これで司祭の居場所が発見できればフルーフの呪印を解除する手がかりがつかめるだろう

だが司祭と呼ばれるものがいるくらいだ、規模は大きい可能性がある十分に注意して進もう


周りを警戒しながら足跡の元をたどっていく

足跡をたどっていくうちに通り道には木に傷がいくつもついている事に気づいた

傷には古いものも新しいものあり、おそらく何度もこの道を通って襲撃していることがわかる


一時間ほど追跡をしていると崖に囲まれた遺跡にたどり着いた

砦は巨大な山をくりぬいたかのような崖に囲まれ、入り口には歩哨が二人

遺跡は崖の外にまで広がっており足場になりそうなところがいくつもあった


(フルーフがシャーマンから聞いた場所だな)


以前拷問したシャーマンの情報によるとここに司祭がいるらしい

さきほどのスウォーム達が来たところの司祭はここの手下だったようだ

一見すると遺跡だが砦と呼ばれていたからには相当数のオークが中にいるんだろう

可能な限り戦力を把握しておきたいところだ


足場になりそうな壁を見つけては登り、中が一望できそうな所がないか探していると落ちれば無事では済まなさそうな高さの場所に遺跡の中へ伸びる細い足場を見つけた


足場へ上り、中を覗き込むとちょうどよい高さで遺跡全体を見る事ができた

遺跡には崖に横穴、更には地下があるようで地上に確認できたオークは10体ほど

暗くなるまで眺めていたがあまり出入りは頻繁ではなく中の様子は掴めないまま拠点へ戻った


拠点へ戻るとフルーフが焚火の前で剣を研いでいる

俺に気づくと手を止めた


「おかえり、今回は長かったね」

「フルーフ、オークの司祭がいる砦を見つけた」

「数は?」

「まだわからない、地下に住んでいるらしく見えたのは10体ほどだ。スウォームがその砦から出ていた。そいつらの足跡を追ってたどり着いたんだ」

「…」


フルーフは焚火を見ながら考え始めた


どうしたんだろう?嬉しくはないんだろうか。それとも偵察というには戦力の把握ができておらずつまらない内容だったからだろうか…


「スウォームを見たのね?数を覚えてる?」

「30ほどでバーサーカーが居た。街に攻め込んで全滅していたよ」


フルーフは小さく頷くとまた考え込んでしまった


「情報が足りないなら明日案内しようか?」


フルーフはゆっくりと俺を見た


「地下に住んでいるならまた行っても無駄ね、でもおおよその数はわかる」

「…」

「オークのスウォームはだいたい半数を出す。砦の中は残り30~40くらい」

「前回の集落と同じくらいか」

「そうね、遺跡の地下の構造次第だけど、1体ずつ処理できるならなんとかなる」


遺跡の中の構造が解らないというのは賭けだが、うまく通路に誘い込めば勝機はあるという事か


「いつ攻める?」

「7日後くらいに、急いで準備しましょ」

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