◆07 雨宿りは突然に
傘もレインコートもない俺たちは、夜の惑星で雨にうたれながら進むことになった。風もつよく水の粒が
雨音のはげしさに、俺はいつしか大声になっていた。
「クロエ! まだ歩くのか!?」
「ええ、あの場所はすこし遠いの! もうちょっとかかる」
「……はあ、そうかよ」
俺はそう
幸い、地面がぬかるんだり
そんなとき、
「うわっ!」
切り裂くような
クロエが俺の様子に気づいた。
「ユーリ! 大丈夫?」
俺は気の抜けた返事しか返せない。なんというか、
困った表情をうかべた彼女はライトであたりを見まわした。するとある場所でライトはとまる。土砂降りのさきに、
「あそこで雨宿りしよう。さあこっち」
クロエの
それは土に半分
風も雨もここには届かない。暖かな炎のまえで俺たちはやっと腰をすえた。降りしきる音が
緊張の糸がきれ俺は息をつく。ひとまず危ない状態からは脱せられたはず。雨がやむまで待とう。
クロエは高い天井を
と、
「うーん、服がべちゃべちゃで困る……。ねえユーリ」クロエは俺にむいた。
「服、
……はああ!?
叫んでもクロエはまったく動じない。
「そんな大声ださなくて良いじゃない」
「だすに決まってるだろ!」
「ユーリ、服をぜんぶ
彼女はさも当たりまえなことを
耐え切れず視線が泳ぐうちに、彼女の
しかしそんな俺は、くしゃみをひとつした。すでに体温が服に
身体は正直だ。
「……わかったよ」
俺の返事に、クロエはほっとした表情をうかべた。
濡れきった服を脱いだ。雨水は下着もぐちゃぐちゃにしたから、ぜんぶ。
脱いだ服で下を隠す。うしろでは、水を吸った布地の
「ユーリもういいよ」
「ん? ……って、わっ!」
後ろを振りかえるとクロエは、何も隠さずに立っていた。
彼女の白い肌に柔らかな
心臓がびくりと
「なっ、なんで隠していないんだ!」
「……隠すものなの?」
横目で見るとクロエは不思議そうに顔を
彼女は言った。
「じゃあ奥にブランケットがあったから、持ってくるね」
廃ステーションのパイプには
そして、
何かがおきるわけじゃない。だけど
「背中熱いよ。大丈夫?」
「ちがう。大丈夫だから」
反論も上ずったような声になる。
雨も夜も、明けるのはずっと先だ。
「……あのねユーリ」
彼女の声が背中に
「私の
「でもあなたは良いひと。だから
クロエが続きを言おうとしたとき、
目前を
落雷は近くのごみ山だ。空気を
「びっくりした。……クロエ?」
俺は気がつく。肌に感じるクロエの背中が、小さく震えている。
……思えば、彼女はどんな気持ちでこの惑星にいたんだろう。ひとりきりで、
けどいまは違う。
俺はクロエの背に、自分の背中をぴたりとつけた。
「俺はさ、クロエと一緒にいたい。優しいし、ふたりでいると
「クロエはもう
気持ちに身を
なんだろうこの気持ち、……好き。
まさか。いや、
「うん。ユーリ」
クロエはひと言、応えた。
まぶた越しに感じたまばゆさに目をあける。俺はいつの間にか眠っていたらしい。自分が裸だったこともブランケットをめくるまですっかり忘れていた。と同時に、彼女の髪の匂いがほのかに
クロエは
「ユーリおはよう」
外の世界は朝。そして晴れだった。
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――雨宿りをする少年は女性と身を
外では雷がたくさん鳴っています。ですが少年は
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