◆03 星(ほし)の精
少しひんやりとした風を、
視界には
……
まだ、生きている。たしか俺はあのとき
考えるうちに視野が広くなる。いまいる場所は
いったい、なぜここに……。しかしもうひとつのことに気がついた。
寝返りをうって反対側を見ると、
「……なんだ、ここ」
と、
「――あっ、起きたんだ!」
突然、
女性だった。もちろん人間だ。ダークブロンドの長い髪を後ろに束ねた、茶色の目に、
対して俺は、半身をおこし身構える。誰だかまったく知らない人物がしかも笑顔で歩いて来るんだ。不安どころか怖い気持ちがあった。それに相手は俺よりも
大人な
「ねえどこか痛くない? ずっと寝ていたからさ、心配したよ」
大きな目にじっと見つめられている。遠目で女性の瞳は茶色に思えたが、茶に青や緑が淡く混ざったヘーゼル色(
あわてて目を下にそらす。女性は使い込まれた白の短いブラウスを着ていた。胸の膨らみが浮きあがり、短い丈のためへそが
「……
俺は下を向いたまま、小声でしか反抗できなかった。
だが女性は、
「あはは、大丈夫大丈夫。私なんにもしないよ。君は
「とくに
……『私の
なんだか、もやもやが
「あんたさ、俺の船外服はどこにやった。ヘルメットつきの」
「君が着ていた
「脱がせる、って」
いま着ている服に目がいく。何があったかのか想像してしまった。顔が火照りだす。
女性は続けた。
「あそこはとくに腐食性がつよいガスが
「……じゃあ、この惑星は毒ガスに覆われていなくて、」
「そう、ここは窒素と酸素が
「な、なるほど」
だからヘルメットなしでも呼吸ができるわけか。納得をしつつ、いまの、さらにもやもやする気持ちを
すると、
「……君は、ここで
「えっ?」
「だって見てたんだ。宇宙船が去っていくのを。君はあの船にいたんでしょう」
俺はその質問にいったんは
「ああそうだよ。あんたが見た船に乗っていたし帰る予定も無い」それから、少しだけ考えて、
「……
曲がりなりにも助かったわけだ。このごみ惑星で生きても誰も文句は言わない。女性もいちおうは
――決めた。
「うん。暮らす」
ひと言、彼女に告げる。とたんに女性は晴れやかな笑顔を俺に見せてきた。
「ほんとう!? ほんとに!? うれしいありがとう。私の
女性は目を
「あのさ……、あんたよく『私の
まったく
俺の質問をきいた女性は、小さく首を
そして言った。
「私はね、『この
「……。はあ?」
俺は半分無意識で、
何を言っているんだこいつは……。頭がおかしいのか。いや、考えればこんなごみしかない惑星にひとりで暮らしていられる奴がマトモなわけが無い。狂ったのか
いっぽう女性はというと、自慢げな顔で
「宇宙にある
「……だからさ、『ごみの惑星』とか、言わないでほしいな」
真面目に、かつ寂しげな表情をされてしまった。たしかにこの人はおかしい人ではある。いますぐに拒絶して、俺はどこかに逃げたほうが最善なのかもしれない。
でも、実際の行動は違った。
「……変なの」
そう口にしただけ。呆れた目でただ睨んだだけ。
女性は腕ぐみをする。
「『変なの』、かあ……。うーん、まあでもビックリしたとは思うし、君が迷うこともなんとなく分かる、うん」
腕組みと、
こんな場所にふたりしかいないんだ。狂ってる
「私はクロエ。あなたは?」
「ユーリ。よろしく」
俺はクロエと、人づてに聞いたことがある『友達』というものになった。
かけ毛布も用意し、マットレスに横たわる。これからこの惑星であたらしい生活がはじまろうとしている。きらめく星たちを
クロエがそばに来た。
「寝心地はどうユーリ」
「大丈夫だよ」
答えながら俺は星空に視線をもどした。
「君は星が好きなの?」
尋ねてきた彼女に、答えた。
「ああ、好きなんだよ星が。……あんな船の生活で唯一、楽しくなれる、夢中になれるものだったからさ」
「……へえ」
ごみ惑星の夜は、さまざまな星のきらめきで満ちていた。
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――少年が気がついたとき、そこはごみでできた
ちょっと変にも思いながら、少年は女性の言葉を信じます。
この惑星で、彼にはたったひとりの友達ができました――
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