2・意志する

 どうでもいいわ


彼女は言った。


 あなたのことなどどうでもいいの

 居ようが居まいが知りやしないわ


彼女は大きくのたまわった。


それはそうだろう。

彼女にとって、居ても居なくても関係のない、

どうだっていいことだ。


 死んで頂戴


彼女は言った。


 どうでもいいことだから

 死んで消えて無くなって頂戴


笑いもせず、

蔑みもせず、

彼女は当たり前にのたまわった。





重要なのは、愛せることなんかじゃない。

大切なのは、心地いい関係なんかじゃない。

必要なのは、飢えなのよ。


渇かなくっちゃ意味ないわ。

苦しくなくちゃ、綺麗じゃないでしょ。

痛くなけりゃ、感じないわ。

なくていいものは、要らないものよ。


笑い合って?

抱きしめ合って?

寄り添い合って?

慰め合って?


それのどこが美しいの。

眩いものがキレイなの?

透き通った玻璃なんて、ガランドウのガラクタでしょう?


歪になって、

骨を砕いて、

肉を引き裂いて、

血を噴き出して、

肺を黒くして、

指先を冷やして、

歯を震わせて、

喉を締めつけて、

爪を尖らせ、

咆哮あげて、


届いて、届かない、貫いて、突き刺さる、

行きどまりの、果てしもない、

天上へと、

墜落する、

その渇望こそ綺麗でしょ?


だからつまり、殺し合いましょう。





気泡を閉じ込んだビー玉が

号哭に震えて粉砕する


内側からひび割れて

粉々に

砕け散る


 醜くなくちゃ駄目なのよ


少女は云った

黒い瞳を、青らむほどに研ぎ澄ませ


 惨めでなくちゃ駄目なのよ


少女は云った

真珠に輝く歯並びの、奥から舌をちらつかせ


透き通ったビー玉が

自由落下に底を打つ


カツンとひとつ、音をあげて

明るい方へ転がってゆく


 泣いたりなんて、しないのよ


高潔な飛翔に窓が

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