「この文章と同じ、吹き出し一つ分の話を聞いてよ」

「富める者になる方法を知っているかい？」

「お金を稼ぐ方法をいくらでもある。例えば働く、売る、勝つ。

　パッと考えただけでもこれだけ出てくるだろ？

　となると、富める者になるにはこういった手段を利用するのが手っ取り早いだろうか、ってのが今回の議題だ。

　なんでこんな話をするかって？　そりゃ人類みな金持ちになりたいだろ？

　僕だって御多分に漏れずそういう俗欲にまみれた性根をしてるのさ。

　ただ、今回は金持ちになる方法を考える訳ではなく、富める者になる方法を考えるだけだ。

　あぁ、安心して。満足することを覚えたらそれだけで心が富める者、なんていう綺麗ごとを言うつもりは無いよ。

　ミニマリストが財布の中身もミニマムだったら、ただの物が買えない奴と一緒だろ？

　彼らは自分で選んでそういう生き方をしている。だから君達も利益が欲しいという欲望の選び方は間違えちゃいけない。

　例えば僕が5万円を持っていたとしよう。そこに君が一人では食べきれない量の牛肉を持ってきた。

　僕は大変にお腹が空いているが時間は深夜で近くには24時間営業の店も無い。

　そこで僕がどんな行動をとると思う？

　僕が僕なら1万円を払うから食べきれない分の肉を買わせてくれないか、って相談すると思うなぁ。

　どうかな、君の考えとは違ってた？　5万円出すかと思った、って人も居るかもしれないね。

　でも僕はそうしなかった。何故だと思う？

　僕たちは現金の価値を大まかに知っているんだ。だから、ただの牛肉とされていた物が国産であろうがなかろうが、大まかに1万円で買えるだろうと当たりをつけた。

　そうすると君がこう答える訳だ。

『実は明日履くパンツが無いんだ。新品のパンツを用意してくれたらこの牛肉の半分を譲るよ』

　ってね。

　勝手にずぼらにするなって？　別にいいじゃないか、それぐらい。

　まぁ話を戻すけど、この返答を予測してなかった僕はどうするべきか、また頭を回転させる。

　家に帰ればパンツはいくらでもあるが、新品のパンツとなると流石に常備している訳ではない。

　そういえばこの前買ったパンツはまだ一度も履いていなかっただろうか。いやダメだ。履く前に一度洗いたい派の僕はビニールから出してしまっている。きっとそれでは新品だと証明できないだろう。

　お金はあるのに食べ物は買えない。パンツを買ってきて交換しようにも営業中の店が無い。

　散々悩んだ結果、どうしようも無くて僕は泣く泣く家に帰って空腹のまま夜を明かしたんだ。

　今の例え話に何の意味があったか分かった？

　君も僕もお互いに欲しい物は持っているけど、何らかの理由で相手と共有することは出来なかった。つまりお金や食料といった必需品を十分過ぎる程に持っていながら、二人は富める者になれていなかったんだ。

　とまぁ話は長くなっちゃたんだけど、実はこの話には続きがある。

　いつもと同じ流れならここら辺で『この話の意味が分かったかな？』なんて偉ぶってる筈だけど、今回はそうじゃないんだ。

　実は今回の話はいつもで言うオープニングトーク。まだ僕の話したいお題に入ってない段階なのさ。

　だから続きはまた明日。ここまで聞いて最後まで聞かない訳にはいかないだろ？

　また明日も会いに来てくれよ。それじゃあバイバイ」