「この文章と同じ、吹き出し一つ分の話を聞いてよ」

「電線を地下に通すのって日本じゃ無理なんだ」

「驚いたかい？　散々偉そうに自称革新派の方々が『海外では～』って騒ぎ散らしてたもんね。

　でもそれは所詮海外の話。島国で地盤が僕のお腹ぐらい緩い日本では不可能なんだ。

　過去に地震の度『内陸部でも液状化の恐れがー』って言われ続けてただろ？

　なのに彼らはそんな事にも目を向けず、ずっと海外に目を向けているんだ。

　あー、彼らみたいな奴を日本では『灯台住みの本倉氏』って言うんだよね。……なんか違うっけ？

　まぁそんな事はどうでもいいか。だって全部嘘だし。

　うん？　嘘だよ全部。そもそも僕って日本の地盤とか知らないし。

　何か不服そうな顔だね？　どうしてそんなに不機嫌なんだい？

　まさか、嘘を吐かれたから？

　じゃあここで本題！　君もお待ちかねだろ？

　今回僕が言いたいのは”正義っぽいもの”とか”悪っぽいもの”に騙されるなって事。

　例えばさっきの僕の嘘、君は正義と悪だとどちらだと思う？

　『地震ってワードは不謹慎！』って人が居たね。じゃあ僕の言ったことが本当は事実だったら？

　さっきの僕の嘘が原因で一応調べてみるかってなったら、本当に無理だった。もしも先に工事を始めていたら町が一つ陥没していたかもしれない。

　ってなったらどう？

　ありえないだとか、普通に調査するだろとかはやめてね？　じゃあ時事ネタに沿ってもっと身近な危険にしてあげようか。

　『俺コロナ』なんて不謹慎な奴がいたよね。

　今回は複数あった事件の中でも、コンビニで起こった実際にはコロナ患者ではなかったケースを例に挙げよう。

　一時的に業務を停止したそのコンビニは全面消毒をしてから再度営業を開始した。

　これがニュースに取り上げられて、市民の声は『不謹慎だ』『迷惑な奴だ』って声ばかり。

　そりゃそうだ。嘘だって分かったんだから、もし本当に起こっていたらなんて考えるのは不謹慎だもんね！

　でも、もし次は本当だったら？

　専門家でもないただのコンビニ店員が消毒処理したコンビニで君は安心しておにぎりを買えるかい？

　『不謹慎』だとか『バカッター』だとか。脳死で批判していたら凶悪犯がみんな更生するのかい？

　『その話題をあげるのも不謹慎』だなんて彼らは一体誰に指図を出来る立場なんだい？

　嘘が99%悪いというなら僕が言いたいのは自分の脳と未来の被害者を殺している彼らは100％悪いと言える。

　って僕は思ってるんだけど、所詮嘘は嘘。

　世間が嘘を『悪っぽいもの』として『正義っぽいもの』を振りかざしている現状では、結局僕一人の声なんて意味はないさ。

　警察が囮捜査を『嘘で釣るのは不謹慎だから』って理由でやめたのも仕方ないね。

　っていうも嘘でした！　じゃーね、バイバイまた今度！」