第103話 遊園地トライアングル
俺は今、とてつもなく頭を悩ませている。悩む時間はまだまだあると余裕をぶっこいていたら乗車までもう残り5分程度。
俺の頭の中はぐちゃぐちゃになっていた。
「はぁぁぁぁぁぁ。私ジェットコースター苦手なんだよね……」
「え、結衣先輩ジェットコースター苦手だったんですか⁉︎」
「苦手というか、遊園地って1回しか来た事ないからジェットコースターなんてほとんど乗った事がなくて……。順番が近づいて来たらドキドキして来たよ……」
遊園地に入園した俺たちは早速ジェットコースターに乗るための列に並んでいる。
ジェットコースターは人によって得意不得意があるので、苦手な人からすれば率先して乗りたいものではないだろうし、ドキドキしてしまう気持ちもわかる。
気持ちがわかるとは言ったものの、俺は今、結衣のドキドキとは別のタイプのドキドキを感じていた。
それはジェットコースターに乗る際の席順だ。
俺たちが今から乗車するジェットコースターは2人が並んで乗車するタイプとなっており、俺たち3人の中の誰か1人は必ず後ろで一 1人ぼっちで座る事になってしまう。
俺が懸念していた事がこうも早く起こってしまうとは…々。
普通に考えれば俺は彼女である水菜と並んでジェットコースターに乗るべきだろう。逆に彼女がいるこの状況で彼女である水菜を放ったらかして彼女ではない結衣と2人で並んでジェットコースターに乗るというのはあまりにも歪な状況だ。
しかし、結衣はジェットコースターがかなり苦手そうなので結衣を1人で座らせる訳にも行かない。
彼女の水菜と横並びになって乗るべきか、ジェットコースターが苦手な結衣と乗るべきか……。
……いや、待てよ? これ何も悩む必要ない問題なんじゃないか? そうだ、なんでこんなに簡単な事に気が付かなかったのだろうか。
俺が一人で結衣と水菜が並んで座っている後ろに座ればいいだけの話じゃないか。
今日3人で遊園地に来た理由は分からないが、水菜はこのメンバーで遊びたかったと言っていたし、それなら付き合っていていつも一緒にいる俺ではなくて結衣と2人で並んで乗った方が楽しめるだろう。
「史桜、順番回って来ましたよ‼︎」
「え、ちょ⁉︎」
俺が最適解を見つけて満足していると、ジェットコースターの順番が回ってきて水菜は俺の腕をがっしりと両手で掴み、俺をジェットコースターまで引っ張っていった。
「ちょ、ちょっと⁉︎ 結衣がいるのにあんまりひっつかれると恥ずかしいんだけど……」
「別にいいじゃないですか。私たちカップルなんですから」
「カップルだったら何しても恥ずかしい訳じゃないだろ」
「恥ずかしくありません」
「じゃあこの場でキスできるか?」
「それは……」
言わんこっちゃない。そんな目の前で赤面されても可愛くなんて……いやめちゃくちゃ可愛いわ。
「恥ずかしいだろ。だからあんまりくっつかないでくれ」
「……分かりました」
「じゃあ俺お前らの後ろ座るから。水菜は結衣の隣で……」
「え? 史桜は今から私の隣に座るんですよ?」
「……は?」
「もう結衣先輩とどうやって座るかはあらかじめ決めてあったので」
「え、それはどういう……」
「ほら早く乗りますよ‼︎」
こうして俺は半ば無理やりジェットコースターに乗せられ、なぜ俺が水菜の隣に座って結衣が1人で座る事になったのか、訳も分からないままジェットコースターは発進した。
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