第101話 偶然の2人
俺はスマホを弄りながらバス停の横に立ち、遊園地に行くために駅のバス停でバスが来るのを待っていた。
とは言っても結衣と水菜はまだバス停に到着しておらず、バスが来るのを待っているというよりは、今は結衣と水菜が来るのを待っているという形になっている。
俺はバス停に乗車予定のバスが来る時刻の30分以上前に到着してしまった。
今日三人で遊園地に行くということが決まってから今日まで俺はずっとどのようにその遊びを乗り切ろうかを考えていた。
当日になっても回答が見当たらないまま、どうしたものかと悩み続けていたら自然と予定よりも早く家を出てしまっていた。
俺たちが今日遊びに行く場所は遊園地に決まった訳なのだが、遊園地は俺的にどれだけ考えても3人で遊びに行くには最も適していない場所だという結論になってしまう。
その理由は考えるまでもない。
乗り物に乗るための列に並んでいる時の待ち時間に2人で会話をしてしまうと1人は疎外感を覚えるだろうし、ジェットコースターに乗るにしても2人で並んで乗車する場合が多いからだ。
乗り物に乗るまでの待ち時間、いかにして暇を潰すかというのは遊園地を楽しめるか楽しめないかを決める大事な部分だ。その時間をずっと三人で会話しているというのは難易度が高い。
仮にその時間を乗り越えたとしても一難去ってまた一難。ジェットコースターに乗るときは3人のうち1人は必ず横並びになれず1人で でジェットコースターに乗る事になる。
それは気まずいし、毎回誰が1人で乗るかを考えなければならなくなる。
それなら遊園地は奇数ではなく、偶数人で行くべきなのではないかと考えている。
そんなことは考えればすぐに分かるはずなのに、遊園地に行くと決めたという事には何か意図があるのだろうか……。
「お待たせ、史桜くん」
俺が頭を悩ませていると、結衣の声が聞こえてきて俺は声のする方に顔を向ける。
「結衣か。全然遅くないよ。俺が早く来すぎてるだけだし……って水菜?」
俺が結衣の声がした方に顔を向けると、結衣の横には結衣と一緒に水菜が並んでいた。
「早いですね。まだバス到着まで10分以上ありますけど」
「いや、それはそうなんだけど」
いや、もう俺が何時にバス停に到着したとかどうでもいいだろ。
なんで結衣と水菜が一緒にバス停に?
偶然という可能性もなくはないだろう。いや、でもまさか偶然この二人が道端で会ってバス停まで一緒に来るなんてことがありえるのか?
「どうかしました?」
「二人で一緒に来たのか?」
「はい。さっき偶然そこで結衣先輩と遭遇したので」
ニコニコして返答する水菜だがその表情はあまりにも嘘くさい。
あくまでもシラを切るつもりか……。
まぁこんなことを悩んでいる場合でもないと自分な言い聞かせ、俺は大人しくバスを待つ事にした。
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