第99話 久々の中庭
水菜に結衣から中庭に呼ばれた事を伝えると、どういう訳か水菜はその話には私も一枚噛んでいると言っていた。
それもあって水菜からは放課後に中庭に行ってもいいと言われたので中庭にやってきたのだが……。
「史桜くん、来てくれてありがとね」
「いや、それは別にいいんだけどさ……」
「いいんだけど、なんですか?」
そう言ってしたり顔を見せるのは俺の彼女、水菜だ。
結衣しかいないと思っていた中庭に何故水菜の姿があるんだ?
まあこの話には水菜も一枚噛んでいると言っていたので、結衣と2人でここにいても違和感はないのか。
「……なんで水菜までここにいるんだよ」
「私がいるとは言ってませんでしたけど、いないとも言ってませんよね?」
「まぁそりゃそうだが……」
くだらない屁理屈をスラスラと言いながらしたり顔を続ける水菜はクスクスと笑っている。
俺は呆れてため息をつくが、その横で結衣は微笑みながら水菜の事を優しい目で見守っている。
こいつら、いつの間にこんなに仲良くなったんだ……。元カノと今カノがこれだけ仲が良いと複雑な気分になるな。
「最初は結衣先輩1人の予定だったんですけどね。面白そうだったので私も来てみました」
「俺はなんの話かと思ってドキドキしてんだよ。面白半分で来られちゃ困る」
俺が困った表情を見せるとニヨニヨと嬉しそうな表情を見せる。
俺は結衣に中庭に誘われてから結衣と水菜が何を企んでいるのかという事で頭がいっぱいになってしまい気が気ではなかったのだが、もう水菜が嬉しそうならそれでいいか……。
「史桜くん、それで私が言ってた話なんだけど……」
……あれ? 結衣、今俺のこと史桜くんって言ったよな?
俺と結衣が付き合っていた時は結衣は俺のことを史桜くんと呼んでいたが、別れてからは俺のことを榊くんと苗字で呼ぶようになっていた。
それなのに何故今になって結衣は俺のことを名前で呼ぶんだ?
気にはなるが、水菜もいるこの場では結衣を追求することも出来ない。
とりあえず結衣が俺のことを史桜くんと呼んでいる事は忘れて話を進めよう。
「そうそう、俺が聞きたいのはそれだよ。二人で何を企んでるんだ? もうその事で頭がいっぱいで授業に集中出来なかったんだが」
「企んでるなんて聞こえが悪いですね。私達、いいこと考えてたんですよ」
いい事を考えているなどと言っているが、相変わらずニヨニヨしている水菜の表情を見ているととてもじゃないがいい事を考えているとは考えづらい。
「そんなニヤニヤしていいこと考えてるなんて思える訳ないだろ……」
「ははは……。水菜ちゃん楽しそうだね」
「史桜は弄りがいがあるのでついつい弄っちゃうんですよね」
弄りがいのある先輩ってなんだよ。いくらなんでも威厳がなさ過ぎねぇかそれは。
「もうなんでもいいよ。それより要件ってのはなんなんだよ」
「そうだそうだ。あのね、今度史桜くんと水菜ちゃんと私の3人で遊びに行こっか」
「なんだそんなことか。そんなことなら全然……」
……いや待て、俺と結衣と水菜の3人?
意味が分からなさ過ぎるんですけどぉぉぉぉ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます