第98話 昼休みの相談
「みんな心配かけてごめんね」
結衣は風邪をひいてから大事をとって2日程学校を休んでいたので久々に登校してきたことになる。
照れ臭そうにみんなに謝罪をする結衣の表情からもう体調の悪さは感じられない。
とはいえ、病み上がりなので無理は禁物だ。
「結衣は頑張りすぎちゃうところがあるから。もう風邪ひいてるのに無理して学校にくるなんてことしないでよね」
梨沙が俺たち全員が思っている注意を結衣に伝えると、結衣はてへへと恥ずかしそうに頭に手を置いた。
「ははは……。ごめん。次からは気をつけるね」
次からは気をつけると言っている結衣だが、結衣のことだからきっとまた無理をしてしまうのだろう。
今回無理をしてしまった理由はわからないが、誰かがしっかりと結衣の体調を気にしておいてやらければ今回と同じようなことが起きてしまう可能性もある。
その誰かというのが俺である必要はないのだが、体調が悪そうだった結衣を家に誘って体調を悪化させてしまった責任もあるので、俺の心の中には結衣の体調を気にしてやらなければならないという気持ちがあった。
結衣が学校に戻ってきた会話で盛り上がっていたが、もう朝の授業が始まるということで解散して席に戻ろうとしたとき、結衣が俺のことを小声で呼び止めた。
「あ、史桜くん。ちょっと今日の放課後、話したいことがあるんだけど、中庭まで来てくれない?」
「話したいこと? 別に今日はバイトも無いし中庭に行くのは構わないけど」
「ありがとっ。じゃあ放課後中庭で待ってるね」
そう言って結衣は自分の席へと戻っていった。
え、これはもしかして水菜に伝えないといけない案件ですか?
◇◆
「水菜さん、ちょっと話したいことがあるんですけど」
昼休み、中庭で水菜の弁当を食べながら俺は水菜に今日結衣に誘われたことを打ち明けようとしていた。
やはり隠し事は良くないし、仮に話を聞きに行くにしても一言断っておかなければならないと思ったからだ。
「なんですか? 史桜が私のことさん付けする時点でろくな話な気がしないんですが」
ぐっ……。図星すぎて辛いな……。とはいえこのまま結衣に誘われたことを言わない訳にはいかない。
「ま、まあそうなんだけどさ」
「それで、要件は?」
「今日の放課後、結衣に中庭に呼ばれたんだけど……」
「行ってきてもいいですか? って聞きたいんですか?」
こ、この反応はまずい。放課後中庭で結衣と話しに行きたいって言ったら絶対怒るやつだ。
やむを得ん。ここはもう放課後中庭には行かないと言うしかない。
「いや、水菜が嫌がるだろうし断ろうと思う」
「……ふふっ。別に断らなくても行ってきていいですよ」
「……え、なんで?」
水菜は俺の予想に反して放課後に中庭に行ってもいいと言った。
普通元カノの結衣との二人きりになるのを許したりするか? それとも何か知っているのか?
「実はその話、私も噛んでるので」
「え、訳がわからないんだけど」
「訳が分からなくていいんですよ」
「いやよくないだろ」
「ほら、話してばっかで咀嚼を忘れたら授業に間に合いませんよ‼︎」
そうして話をたぶらかされた俺は結局謎の真相を掴む事はできずに昼休みを終えた。
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