第82話 おみくじの結果

 冬休みも中盤に入り年を越して元旦を迎えた俺たちはみんなで揃って地元の神社に初詣に来ていた。


 俺と水菜は付き合っているからといってどちらかの家に泊まって年を越すなんて事はしておらず、お互い実家で年を越したので水菜に会うのは今日が今年初めてだった。


 水菜以外に結衣と梨沙、茜に壮も一緒に初詣に来ているが、俺は今年初めての挨拶を他でもない水菜に一番始めにすることにした。


「あけおめ。今年もよろしくっ」


「あけましておめでとうございます‼︎ 今年もよろしくお願いしますね」


「おーなになにぃ? やっぱり年初めの挨拶は嫁が一番最初って感じぃ?」


「な、何言ってるんですか⁉︎ まだ嫁じゃありません‼︎」


 おい水菜、茜に鋭い指摘をされて焦る気持ちはわかるが、まだ嫁じゃありません‼︎ という否定の仕方だと今でもいつかは俺のお嫁さんになる気があるって事になるぞ。俺は嬉しいからいいけど。


「仲良さそうで何よりだよ。とりあえずおみくじ引きに行くか」


 今日の俺たちの一番の目的はおみくじだ。元旦といえばおみくじを引くのが恒例行事で、毎年楽しみにしている人も少なくないだろう。

 おみくじの結果がその一年全て左右するという訳ではないが、やはり元旦に引くおみくじは毎年楽しみにしている行事である。


 おみくじが引ける場所までやって来ると、女性陣は女性陣で集まっておみくじを引いて結果を確認しており、男性陣である俺と壮も二人で集まっておみくじを引く事にした。


 女性陣が男性陣とは別で集まっておみくじを引きたいのは恋愛の部分を見られたくないからだろうか。


 女性陣がおみくじを引いている横で先陣を切っておみくじを引いたのは壮だ。


「見とけよ、大吉引いてやるからな」


「そうやって意気込んでるやつほど微妙な結果になるんだよ」


 そして壮がおみくじを開いて結果を見る。


「……。くぁぁぁぁ末吉かぁぁぁぁ」


「ほら見ろ、よく深いやつほどそうやって微妙な結果になるんだよ」


「まぁ凶じゃなかっただけマシとするか……。悪いこと書かれてるのは学問の、「危うし」って書かれてるところくらいだし」


「いやそれ学生に一番大事なところだろ」

 

「じゃあ史桜は大吉引けるのかよ」


「任せとけ。俺は絶対大吉だ」


 壮が末吉というおみくじの結果に落ち込んでいる横で、俺は自身満々でおみくじを開いた。


「……末吉だわ」


「ざまぁねぇな‼︎」


 俺の横で末吉という自分と同様の結果に大笑いする壮のことは気にせずおみくじの内容を確認すると、全体的にそこまで悪いことが書かれている訳ではなかったがひとつだけ気になる項目があった。


 それは恋愛の項目だ。


 そこには、「浮気の恐れあり」と絶対に描かれてはいけない文言が書かれていた。


 ……まさかな、俺は今水菜の事が好きなんだし、他の女性に浮気などする訳がない。

 まぁ仮に可能性があるとすればやはり元カノである結衣だろうか……。


「浮かない顔してますけど、おみくじどうでした?」


「お、おおびっくりした。末吉だったよ」


「ふふっ。そうでしたか。私は大吉でした‼︎」


「良かったな。じゃあその幸せ吸い取らせてもらうわ」


「ちょ、やめてください。もう近寄らないでもらえます?」


「そう言われたら近づきたくなるもんだよな」


 そして俺は冗談で水菜を追いかけまわしながらも、自分のおみくじに書かれていた内容に不安を覚えるのだった。



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