第78話 呆れる妹
俺は凍り付いたこの場の雰囲気を見て、自分がとんでもない発言をしてしまったのだと気付かされた。
男気がない男気がないと言われ放題だった俺は思わず頭に血が上ってしまい、隠そうとしていた水菜とキスをしたという事実を口走ってしまった。
普段の自分であれば絶対に言わないはずなのに、いっときの感情でとんでもない話を口走ってしまった自分に腹が立つ。
皆はお互いに顔を見合わせて、何か微妙な表情をしている。
俺がキスをしたなどとは微塵も思っていなかった
だけに、鳩が豆鉄砲を食ったようだ。
「う、嘘だよね? しおしおにそんな男気ある訳ないよね?」
「……嘘ではない」
そう、俺が口走ってしまった内容は嘘ではない。
キスをしてきたのは水菜からなので俺に男気があるという証明にはならないが、キスをしたという事は事実なので、決して嘘をついていることにはならない。
そんな卑怯な言い訳をしている自分にも腹が立つな本当に……。
「ま、まあ榊くんだって男の子なんだからさ、男気が無いようには見えてもやっぱり奥底には男気が残ってたんだよ」
なんか残りカス程度しか俺の男気認められてなくない? まぁ残りカス以下の男気しかないから否定もできないけどさ。
俺がキスをしたという話を聞いて元カノのである結衣がどの様な反応をするのか気になったが、驚くどころか俺のフォローをしてくれていた。
今のがフォローなのかどうかというところは置いておいて、結衣が俺のフォローをしてくれているところを見ると、俺と付き合っていた時のことなどもうすっかり忘れ去ってしまっている様に見える。
俺自身今は水菜と幸せな時間を過ごしているので、結衣も俺と付き合っていた時間を綺麗さっぱり忘れてくれていた方が関係も上手くいくってもんだ。
「史桜……お前遂にやったんだな」
「大袈裟だな。別にそんな大したことでもないだろ」
「……はぁ。史桜くんはやっぱりどこまで行っても史桜くんだね」
「妹よ、あまり哀れみの目をお兄ちゃんに向けないでくれ。この状況は俺にとっても本意じゃないんだから」
妹である史織は水菜から俺にキスをしてきた事を知っている。俺がド級のヘタレだという事を深く理解している。
要するに、あたかも俺の方から水菜にキスをしたかの様に喋っている俺の姿を見て呆れているのだろう。
すまん妹よ。俺自身自分で自分に呆れてしまっているがもう後戻りはできん。
「と、とりあえずプレゼント交換しないか? 早くクリスマス気分を味わおうぜ」
俺が水菜とキスした事を口走ってしまってから数分間、俺の部屋の空気は凍り付いたままとなっており、俺はその状況を打開するためにプレゼント交換をしようと提案した。
いつまで経っでもこの空気ではせっかくのクリスマスパーティも台無しである。
「そ、そうだね‼︎ 榊くんのいう通りだよ‼︎」
「しおしお、たまには良い事いうね‼︎」
若干無理のある進行の仕方ではあったが、皆そんなところを突っ込んでいる余裕などない。
俺の無理な進行に対して違和感を持たれる事なく各々がカバンの中からプレゼント用の袋に詰められたクリスマスプレゼントを取り出し、プレゼント交換の準備が整った。
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