第43話 史織の家
先輩と史織がどんな関係なのか、聞き出すことが出来ずに図書室でのテスト勉強を終えた私は悶々としていた。
お互いを名前で呼び合い、先輩であるはずの榊先輩に対して敬語も使わず会話をしていた史織。
この状況だけを見てもあの二人がただならぬ関係である事は察する事ができる。
史織がまさか先輩と知り合いだったなんて……。そんな話は聞かされた事がなかったし、一度史織を問いたださなければ私の腹の虫は治らない。
私が先輩の事を好きだという事実を知りながらも自分と先輩の関係性を隠していたのだから、何か理由があるに違いない。
そして休日、史織にテスト勉強をしようと誘われた私は史織の家に向かっていた。
史織の家に行くのは初めてだったが、駅からほど近い場所にあったため迷わずに到着する事が出来た。
今日の私の目的はもはや勉強ではない。真相を聞き出す事だ。いくら親友とはいえ史織が先輩とどのような関係なのかを教えてもらうまで今日は帰らないんだから‼︎
テスト勉強という本質が眼中にない私はいきりたちながらインターホンを押した。
玄関の扉が開き、史織が家から出てくる。
「はーい……」
眠そうな声で扉の向こうから出てきた人物は凄まじい勢いで玄関の扉を閉め、大きな音が響き渡った。
史織の家の中から出てきたのは史織ではなく、スウェットを着た先輩だった。
なぜ史織の家に先輩が⁉︎ ここって史織の家で間違いないよね⁉︎
史織が出てくると思っていた私の頭はグチャグチャになり、今どのような状況になっているのか正解が見つからない。
それよりも……。
先輩のスウェット姿‼︎ 可愛いっ‼︎ 何あれあんなのキュン死するわ‼︎
とりあえず、もう一度インターホンを押してみよう。そしたらまたスウェットの先輩を見れる……じゃなくて、先輩がこの家にいる理由がわかるかもしれない。
私は躊躇する事なくもう一度インターホンを鳴らしてみた。
しかし、先程のように先輩が出てくる事はなくこの家には誰もいないのではないかというほど静まり返る。
「ちょっと先輩‼︎ いるのはわかってるんですよ‼︎ 一回姿を確認したからには居留守は使えませんよ‼︎」
私がそういうと、今度はゆっくり扉が開き先輩が姿を現して諦めたような声で私に質問をしてきた。
「……なんで水菜がここに?」
「いやこっちのセリフですよそれ。なんで先輩が史織の家にいるんですか」
「あいつ……。まぁいいか。とりあえず上がってくれ」
家にあげるよりも先にあなたにはこの状況を説明するという役目があるでしょうよ。史織の家に来たはずなのに先輩が出てくるって状況をすぐに理解する事なんて出来る訳がない。
やはりここは史織の家ではないのか? しかし。史織に教えられていた住所は間違っていないはずだし「早瀬」という表札があることからもこの家が史織の家である事に間違いはなさそうだ。
説明もないまま家に入れられた私はリビングに招かれた。
あれ、そういえば私先輩の家くるの初めてだよね⁉︎ 色々ありすぎてすっかり忘れてたけど自然に家の中入りすぎじゃない⁉︎
「今日、両親は家にいないからくつろいでくれて構わないぞ」
え、ちょっと何それ誘ってるの? というか史織は? 私が家の場所を間違えたなら史織に電話でもして家の場所を聞き出さないと。
「くつろぐ時間はありませんよ。史織の家に行かなければならないですし」
「あーそのことなんだけど……」
先輩が頭をかきながら何かを発言しようとした矢先、玄関で扉の鍵が開く音がした。
玄関から人の足音が聞こえ、リビングの扉が開かれる。
「ただいま。いらっしゃい。水菜」
ニコッと微笑みながらリビングに入ってきたのは史織だった。
いや、この訳のわからない状況で微笑まれても微笑み返したりしないからね⁉︎
あ、でも史織も可愛いっ。
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