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伊藤計劃」への応援コメント


  • 編集済

    実はまだ『虐殺器官』読んでいないのですが、このエピソードを拝読して読んでみようかなという気になりました。殺戮ものが苦手で技術の話題は小説でないところから拾ってくるのですが、物語を通して触れてみるのもいいかも、なんて。

    追記(2021.3.28)
    『虐殺器官』『ハーモニー』に触れてみました。感想書いてみますが、気を悪くされたらゴメンナサイ。

    それぞれ作者である伊藤計劃さんの『遺書』と『自身の葬儀』、『虐殺器官』のエピローグは棺桶の中での『告解』。
    エンターテイメントの提供ではなく、本当は墓場まで持ってくつもりだったことを、生きている間に書いておく気になったのかなと感じました
    自らが滅びても書いたものは残りますから。

    またサイエンス・フィクションと言うよりは、スペキュレイティブ・フィクションなのかと。
    SFやグロテスクな描写、情報化社会や近未来の内紛といった舞台設定こそ、読者に仕掛けられた『感情適応調整』や『痛覚マスキング』であり、埋め込まれたこの作品の本質から目を逸らすためのギミックに視えます。

    作中でSF要素が断片的に語られることや、不意にイニシャルDの藤原とうふ店の車などが登場したりすることから、この世界観はあくまでコラージュされたシュールな仮の姿ですよ、と序盤にきちんと説明されているように感じました。

    ドミノピザも現実とリンクさせるためのキーワードかなと。

    つまり『見たいものしか見ようとしない』からこそ、多くの人が見てくれそうな精巧なハリボテでコーティングされている。恐らく映像化されたものも自ずと受け入れられやすいハリボテの方を強調した作品に仕上がっているだろうと想像します(見ていないのにスミマセン)。

    作品の本質を緩やかに世間に浸透させるために意図された仕掛けであり、それこそ彼の『計劃』なのだろうなと。

    急激かつ過剰な刺激だと世間がアレルギー反応を起こして、到底受け入れられないので緩慢に伝わる必要がある。
    だからこそ、このバランスで書いたのが凄いと思いました。

    死生観や罪悪、倫理観なども勿論テーマではあるけれど、社会的な話を書きつつ、極めて誰にでも身近な話を埋め込んでいる。近未来想像図に見せかけて現実の話をするようなSF的構造とも言えそうです。
    そしてこの作品の本質はこういう話だろう、という話は中々書けないですね。生きている間は。

    作者さんもまだ人生が続くならこの作品は書かなかったんじゃないかと。仮に生きながらえて世間の要望に応じて書いたら、いずれ世間は彼をジョン・ポールとみなして排除対象にするだろうと想像します。
    これらの作品自体が『虐殺の文法』で書かれている……ように思うのは私だけかな……

    病床にて十日で書き上げたとの逸話も、それまでの人生で形になっていたものを清書するのに十日かかったという話かと。

    著名な作家さんたちもこんなものは書けない、嫉妬するとレビューされてますが、これを書くのは物凄く勇気ある行動だからなのかなと考えました。
    『遺書』でなければ書けない。出版当時ならなおさら。
    彼を天才と称するのはちょっと残酷な気がしました。

    誤解なきよう書いておくと、伊藤計劃さんを尊敬していますし、作品も称賛しています。ただエンターテイメントには思えず歓喜しなかった。

    ですが思弁小説として素晴らしい作品ですし、もう少し読み込んで考えてみようと周辺書籍を含め購入しました。
    そのきっかけを与えてくれた紀里さんにも感謝しています。

    水を差すような感想を書いてしまった気もするので、もしアレだったら削除してもらっても(もしくは、連絡もらえれば感想の部分だけこちらで編集削除します)。

    追記(2021.3.29)
    わー! お返事有難うございます!
    確かに、MGSを体験するとまた違って見えるかも知れません。理不尽の重ね合わせかあ。『ハーモニー』が呪詛というのもそうなのかも。

    わたしは何となく『作品』は希望的観測としての『計劃』かな〜と捉えてました。

    というかこれだけ多方面に大勢を揺さぶっている事自体が凄いことですよね。解釈を分岐させる筆力に脱帽なのです。
    そして人それぞれにいろんな側面を視ているという事自体もまた面白い。

    いやほんと、丁寧にお返事下さって有難うございます!

    作者からの返信

     私もホラーとか殺伐としたものは基本的に苦手なのですが、これは本当に引き込まれるように読み終えてしまいました。

     たぶんベースにはやっぱりメタルギアソリッドがあって、それをうまく昇華して自分のものにした物語だと思っています。
    グロテスクなシーンもあるのですが、それ以上に世界の理不尽さに対する怒りみたいなものが静かに伝わってくる素晴らしい作品だと思うので、ぜひ!

     続編のハーモニーも人気なのですが、どうもそちらは、このエピソードでも書いた通り、ああ、そこにいきついてしまったか……と私は切なく感じてしまうのでした。

    ** 2021-03-28 追記 **

     こんばんは。熱い想いをありがとうございました。水を差すなんてとんでもないです。
     以前どこかでも書いたような気がするのですが、読書というのはごく個人的な体験で、どう感じるかというのはひとりひとりに委ねられていると私は思っています。

     『虐殺器官』『ハーモニー』そして、このエッセイというには拙い文章でも琥珀さんがこうしていろんな想いを感じて伝えいただけるのはとっても嬉しいです。

     『ハーモニー』は、彼がもし普通の人生を歩んでいたのなら、きっともっと違う結末だったかもしれないし、もっと違う物語を書いていたかもしれない、というのは私も感じました。
     天才と称するのが残酷、というのもとても頷けます。

     ただ、『虐殺器官』はどちらかといえばゲーム、「メタルギアソリッド」シリーズの習作を昇華したものかなあと思ったりしています。

     メタルギアのテーマは「戦争」であり、彼がノベライズを担当した「ガンズオブザパトリオット」でも「人の歴史は戦争の歴史だ」と冒頭で語られています。
     目を背けたくなるような虐殺も、無為に思える戦闘行為も常に世界中のあちこちで起きており、繊細な人ほどそれと向き合うほどに深淵を見るように絶望に陥ってしまう。

     メタルギアの小島監督の、伊藤氏についてのエッセイのようなものの中で、彼が東京ゲームショーのブースでメタルギアのトレーラーを見た時(まだ病に倒れる前)に涙を流していた、というようなエピソードがあります。それくらい彼にとってはメタルギアは特別なもので、繊細で感受性の強い人だったんだろうなあと。

     もちろん、大病が彼の執筆に影響を与えたのは間違いないと思いますが、その時点では、まだ彼自身は完全には絶望はしていなかったような気がしていて、自身に降りかかった理不尽な運命に対する怒りと、世界の理不尽さを重ねたのがあの物語なのかな、と。

     そして、『ハーモニー』はまさにそこを乗り越えきれずに世界への呪詛となってしまった哀しい物語だと、私は感じました。

     なので、彼自身が物語になってしまったようだ、と感じるのですよね。もしまだでしたら、メタルギアのノベライズもぜひ手に取ってみてください。あとがきと小島監督のエッセイだけでも、彼らの内心が語られていて、おすすめです!

     長くなってしまいました……。これに懲りずに、また覗いてやっていただければ嬉しいです。ありがとうございました!

    編集済
  • 伊藤計劃は虐殺器官→ハーモニー→メタルギアと読みました。
    メタルギアはゲームでやっていたので、こんな切り口の魅せ方があるのか!と感動した覚えがあります。
    そして巻末にあった小島のエッセイで泣きかけたのもいい思い出です。

    作者からの返信

    Edyさん

    こんにちは。メタルギアお好きなんですね!
    この人のノベライズは、本当に愛があっていいなあと思いました。
    そして巻末の小島監督のエッセイは本当に衝撃でした……。

    赤い本のお話から、何となくファンタジー畑の方かなと思っていたのですが、お好きな本のリストを見るとSF寄りでしょうか。
    あのどこか透明で硬質なのに優しい感じはだからかなーってちょっと納得でした。

    ギルさんの物語、続きをこっそり楽しみにしております。
    コメントありがとうございました!

  • メタルギアのゲームをのぞき見てはいましたが、内容を全く把握していなかったようで。設定がどうにも頭に入ってこない。困ったなあ…ということで潔く一旦切り上げ(ごめんなさい!)おすすめの後書きのみ読みました。小島監督との出会いが、伊藤氏が作品を生み出す原動力のひとつだったんでしょうね。そういう面では、読者としても有難い出会いだったのではないかなと思います。

    で、虐殺器官を読み始めたのですが。
    これは、もう文句なしに面白かったです!続けて、ハーモニーも一気読みでした。
    「虐殺の文法」が具体的には描かれていなかったので、そこに関してはいまいちピンとこないまま読み終えましたが(書いてあったのかもしれませんが、私には読み取れず…)ハーモニーでその部分がわかりやすく回収されていて「あ。リンクしてるのね」とその時気付くという。先に虐殺器官読んでて良かったー(笑)
    どちらも、いずれは現実になるんだろう…と思わずにはいられない。特に虐殺器官はリアルで、これはどこまでが架空なんだろう?ってよくわからなくて、ちょっと空恐ろしくなりました。

    確かに残虐なシーンが生々しいですね。カプレーゼはお店でメニューを見るたびに、ハーモニーを思い出すんだろうなあ。私としては、虐殺器官の中で出てきたラフレシアを使った遺体の表現が「うわぁ…」ってなりました。
    ただ、私の中で印象に残り続ける表現ってなかなか少ないので(頭良くないから…涙)そういう意味でも貴重な作品になりそうです。稚拙な表現しかできずお恥ずかしいですが、この方の文章は美しくて、整っていて、わかりやすい。とても好きだなと感じました。

    素晴らしい小説を紹介して頂いてありがとうございました。2作ともいずれ再読したいと思える作品でした。こうなったらメタルギアも、もう一回挑戦しないと!

    読み終えて興奮が覚めないうちにと書き始めたら、ずいぶん長くてわかりずらい感想になってしまいました。ごめんなさい。Tachibanaさんのように素敵なレビューも書けるようになりたいのですが道のりは遠いです…w

    作者からの返信

    こんばんは!

    虐殺器官とハーモニー、お読みになったのですね。
    読んですぐの感想ありがとうございます!!
    私も読んだ後、何だかすごい高揚感で某読書ログサイトにレビューを残していたので、その感じすごーくわかります。

    カプレーゼは、いまだに思い出しちゃいますw
    でも殺伐としていて残虐なシーンも多いのに、それ以上にその繊細さがなんだか印象に残ったのを覚えています。
    私は虐殺器官の方が好きなのですが、ハーモニーの方が好き、という方も多いみたいです。感情をなくす選択をしたその理由が重いですよね……。

    この作者さんにとっては、たぶんはじめにメタルギアがあって、その延長線上に彼の作品があるのかなあという印象です。ただ、二次創作で終わらずに、自分の物語として昇華しきったところが凄くて、さらにその先がきっとあっただろうにとその夭折の人生が本当に惜しまれてなりません。

    メタルギアは私も全然詳しくなくて、4にシリーズのデータベースみたいなものがあって、それをひたすら読んでた記憶があります。あとWikipediaでシリーズのあらすじを読みまくりましたw
    お時間ありましたらぜひパートナーさんにもう一度プレイしていただくのも良いかもしれません。ほとんどあれ映画ですよね……。

    何はともあれ、tomoさんの読書体験の一助になれたとのこと、とっても嬉しいです!
    今後ともどうぞよろしくお願いします〜!

  •  『Tachibana』さんの紹介文に引き込まれました。『伊藤計劃』氏とその作品へのこだわりが、ものすごく伝わってきます。『虐殺器官』や『ハーモニー』は、食わず嫌いを起こしていた作品でしたが、ぜひ目を通してみようと思わされました。

    作者からの返信

    有村さま

    こんばんは。
    伊藤計劃という人は、一番好きな作家かと言えばそんなことはないのですが、作者自身も含めてひとつの物語のようで、一度まとめてみたいなと思っていたので、お気に召していただけたなら嬉しいです!

    ご自身からすれば、そんな物語じみた人生など、全く望んではいなかったとは思うのですが。

    『虐殺器官』と『ハーモニー』は本当に凄いのですが、ただ、やっぱり読む人を選ぶ作品でもあるので、その辺りはご了承いただけますと。私は『ハーモニー』を読んでからしばらくカプレーゼが食べられなくなりました……。

    全体に漂う物語の繊細さとミステリとサスペンスな展開、そして、時に残虐な描写が圧倒的に目に浮かぶようで凄いのです。でも本当におすすめです!

    三作の中では、メタルギアの小説が一番とっつきやすいかなと思ったりします。
    有村さまの読書ライフの一つの機会となりましたら幸いです。

    コメントありがとうございました!

    編集済