第11話 代表選定


初日の実技から、2週間が過ぎ代表選定が決まる最後の実技が始まった。別会場では、ヴィル、トール、アリサが、勇夜と同じ会場は、セリエ、リース、ケイメンがいる。セリエとリースはお互いに別の生徒と戦っていて、勇夜の相手はケイメンだ。ケイメンは、ヴィルの出した考えに賛同してくれた数少ない協力者で今回もこうして相手をしてもらっている。


「なんやかんや早かったな~、これが終われば代表決まるんやから。で、そちらは協力したかいはあったんかいな?」


「ああ、感謝してるよ。この2週間でなんとか扱えるようになって形に出来たのも協力があったからだ。だからもう俺は負けない。それをこの実技で見せるよ」


「なら、こっちも本気でやらせてもらうで!負けても文句言うなや」

そして最後の実技が始まった。

…………………そして


「ぐっ!! ハハッ なんやホンマにけったいな力と技やな。負けや、降参降参。……これなら、トール様も」

ケイメンは降参し、勇夜の勝ちが決まった。最後にケイメンが何かをボソッと言っていたが、勇夜には聞こえなかった。この力を使っての初めての勝利が勇夜にとって大きな前進だった。やはり、負担は凄まじい物なのは相変わらずだが、始めの頃の異物が入るような感覚やコントロールの乱れも少なくなった。それに、新しく作った技も完成に近づくことができた。


「やったね勇夜! 随分形になってたよ」

セリエも終わっていたようで、話しかけてきた。聞く限りはこちらよりも早く終わって見ていたようだ。


「まあ、私が相手なら絶対負けないけどね」


「セリエにも今度こそ勝つさ」


「言ったわね。でも私も貴方もきちんと選ばれてからね」

選ばれるのは10人だけ、半分は出ることすら出来ないのだ。

そうして全ての実技が終わり、クラスへ移動を始め、全員が不安と期待でその時を待った。


「これから1週間後に始まる剣騎祭の代表を発表する。呼ばれた生徒はその場に立て、では評価の高かった生徒から順にいくぞ。トール・ケネデリス! セリエ・シュバル! アリサ・フェルム! ヴィル・グラッド! リース・ベネット! 如月 勇夜! ケイメン・オカダ! ……………… 以上の10人で今年の特騎課は剣騎祭に出場する。選ばれた生徒は責任を持ち、選ばれなかった者も今後のためにもしっかりと学ぶように。今日はこのまま解散となる。明日代表生徒は、他の代表を含め剣騎祭の説明がある。予定は明日の朝改めて連絡する。忘れないようにな、では以上解散!」

その後、勇夜達は代表祝いということで食事をすることになった。途中に何故かトール達も参加することになり、騒がしいものとなったが今日のこの日を忘れることはないだろう。そして日が明ける。

翌日となり、授業終了後に会議室に一学年の特騎科と騎士科の代表が集まった。教官はまだ来ておらず、現在は生徒だけである。


「特騎科の欠陥がよく選ばれたな。コネでも使ったのか?」

騎士科の1人が勇夜に向けて言葉を発した。それに便乗し周りの面々もコソコソ話し出した。

勇夜は別段気にした様子ではなかったが、数人の特騎科の面々がムッとした表情をし、セリエが反論しようと口を開けた瞬間に騎士科とは違う所から声が上がった。


「その発言に対しては、同意するね。実力のない欠陥がどうやってこの場に居るのかをね」

トールは、先程の発言を肯定した。その発言を聞いたからか、騎士科の生徒は、"同じクラスからも言われてやがる"等と言い、笑いが生まれていた。


「トール! 貴方まで何をいってるのよ!」

セリエがトールに矛先を変えて声に出した。だがトールの言葉はこれだけではなかった。


「だが、その発言をしていいのは同じ土俵にいる者だけだ。貴様らは特騎科にも入れず騎士科で満足している弱者どもだ。その点こいつは強者ではないが、貴様らのような弱者ではない。人を貶す暇があるなら、こちらに来れるぐらいの実力を見せるんだな」


「なっ!! なんだと!!」

それを言われた騎士科は、顔を真っ赤にして今にも飛び掛かりそうな雰囲気を出していた。特騎科の生徒はというとトールの発言に驚き、固まっていた。トールが勇夜を庇ったのかそれとも別の意味があったのか、それは解らないが大半の生徒は、勇夜のことを毛嫌いしていると思っているので当然といったら当然の反応である。

一触即発の中で会議室の扉が開き、教官達が狙ったかのように入ってきた。


「お互いの挨拶は済んだようだな。それじゃあ、説明するぞ」

場の雰囲気を見て、ラルク教官が話を進めてきた。小さく舌打ちする音がしたが気にしない方向で進めるようだ


「1週間後に始まる剣騎祭まで、お前達は通常の授業には出てもらうが、それ以外の実技等の時間は好きに使ってもらって構わない。休むもよし戦闘場を使って特訓するもよしだ。ただ他の授業で使うこともあるので必ず申請しておくようにな。それと試合の内容や組合せについてだが発表は前日にする。同じクラスと当たるか別のクラスと当たるか、別に俺達が勝手に決める訳じゃないから運だと思って安心して、臨むようにな」

1週間という短い時間、計20人からなる行事、前日なのは事前の対策を防ぐためなのだろうか。実戦ともなれば限られた情報又はない状況で戦うことになるからという意味もあるのかもしれない。


「説明は以上だ。何か質問があれば、後で各教官に聞いてくれ。以上、解散」

会議室にいる間、騎士科の1人が勇夜を終始睨んでいたが、特に何もなくその場から立ち去った。

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