第6話 目が覚めると懐かしい風景が
勇夜の目が覚めると、懐かしい風景が目に入った。10年ほど過ごした自身の部屋だ。外は薄暗くなっていて、この家に来てから随分たったのだと実感した。家の中では賑やかな話し声が聞こえてくる。まだ終わっていないようだった。
勇夜の体はまだ気だるく、横になっていたい気持ちになった。少しそのままでいると、コンコンと部屋の扉がノックされた。小さく返事をすると扉が開いた。
「よかった、日が覚めたのね。あの人が背負って来たときは、ビックリして問い詰めたんだけど、部屋で寝かせるしか言わないし…… そうだ!! お食事持ってきたの。さ、食べて」
晴香が部屋に入り、あの後どうなったかを勇夜に話してくれた。そして食事を差し出してくる。
「大丈夫? 1人で食べれる?お母さんが食べさせてあげようか」
柔らかい笑顔で、勇夜にぐいぐいとくる。
「っ大丈夫。1人で食べれるから」
勇夜は箸を受け取り食べ始める。その間、何故か晴香が物凄く凝視してきた。コメントを待っているようだ。
「ハァー… 美味しいよ」
「ふふん! そうでしょ。今日は腕によりをかけて作ったのよ」
えっへんとでも言うように、晴香が胸を張っていた。
「本当はね…… 私もあの人もあなたにでていってほしくはなかったの。今でも後悔してる。あの時何でもっと周りを見れなかったのか…って。それでも私達は、あなたをこの環境から離すことを選んだ」
急に真剣な表情になり、落ち着いた口調で晴香の言葉が発せられる。
「違う…違うよ母さん。あれは、俺のせいなんだ。俺が背負うべきことなんだ。だから…」
「そっ…か。やっぱり勇夜はまだ… 食べ終わったら扉の所に置いておいて、今日は遅いし泊まっていきなさい。まだ人も多いし、あまり顔会わせたくないでしょ。私はもう行くから」
晴香はそう言うと勇夜の部屋から出ていった。
食事を取り、扉の前に置いた後、先程の疲れと最近よく眠れていなかった影響で、自然と瞼が重くなり勇夜はそのまま眠りについた。
「…夜、…きろ。勇夜、朝だぞ」
こちらを呼ぶ声で少し目を開ける。窓から日が差し、徐々に意識が覚醒してくる。顔を横に向け、声の人物を見るとそこには勇夜の兄が立っていた。
「おはよう、兄ちゃ………兄さん」
懐かしい場所と目覚めのせいか、口に出た言葉を訂正し、勇夜は言い直した。
そんな勇夜を見ながら兄は、ニヤニヤしていた。
「とりあえず、朝食まで少し時間があるから風呂に入ってこいよ。用意してるらしいからな」
確かに昨日、なにもしないで寝たからか、体が気持ち悪いと勇夜は思った。そして靖耶に促され風呂場に向かった。お風呂から上がり、用意されていた服に着替えていると、朝食が出来たのか臭いが漂ってきた。
その部屋に入ると靖耶と晴香が座って待っていた。
「おはよ~、よく眠れた?勇夜。 しっかりとご飯食べてね!」
「「「いただきます」」」
3人の声が重なり、食事を始める。
「この後勇夜は、どうするんだ?」
「向こうに戻るよ。それに試したい事があるから」
靖耶が問いかけてきたが、勇夜は朝食が済んだらすぐに戻ることを伝えた。剣騎祭の代表決定まで時間もなく、それに昨日契約した武具の力を試したいと思ったからだ。
「そう… 帰ってきづらいかもしれないけど、この家はあなたの家だから、何かあったら遠慮なく来て良いんだからね」
晴香は分かりやすく落ち込んだが、すぐに笑顔になり勇夜に笑いかけてきた。
そして食事を済ませ勇夜が外に出た。2人が一緒に付いてきて見送るようだ。
「父さんは、家にいないのか?」
「そうね。あの人は今日用事があるから早くに出掛けたわ」
「そっか……、じゃあ、もう行くよ」
勇夜は門から出て、住む家に向かった。振り替えると晴香は、両手で手を振っていた。勇夜は軽く手を振り、前を向いて移動した。
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