魔王の呪い
ヒット・シュタイナー
【短編小説】呪いは怖い【完結】
「急げ間に合わぬ。日が暮れぬ内に宿に入らないと」勇者が呟く。
神官は黙って頷く。
小走りに山を下っていく二人、ロバに引かれた荷車の車輪が壊れ道を塞いでいる。
「助けてくれ勇者様」農民らしき男が声をかける「このままでは狼に襲われる。」
だが二人はそれを飛び越えて村へと急ぐ。
まるでそこに何も居なかったがように。
「ちぇっ、気取りやがって」農民らしき男は吐き捨てるように言う。彼は知らない。
勇者と神官は、今魔王の呪いがかかっていて急いで村の宿に向かわないと駄目なことを。
ようやく二人は村の外れにある宿に飛び込む。
宿の主人は二人をちらっと眺めそして尋ねる「一泊ですか二泊ですか?」
「二泊だ」
「別々ですかそれともう一緒の部屋ですか」
「一緒の部屋だ。食事は要らない。朝まで扉を開けるな。判ったか」
「金貨5枚です」
勇者が金貨6枚を渡す。「よろしく頼む」
「では201号室をどうぞ」と宿の主人が鍵を渡す。
勇者はそれをひったくるように受け取ると、二人ドタバタと階段を駆け上っていく。
「ごゆっくり」
宿屋の主人も知らない。
勇者と神官は、今魔王の呪いがかかっていて急いで村の宿に向かわないと駄目なことを
二人もつれ込むように部屋へと入る。
そしてベットに飛び込む。なんとか間に合ったようだ
勇者は黙って神官の手を握った。神官もまた手を握り返す。
そしてお互いに額を重ねる。唇と唇が触れ合いそうになる。
が次の瞬間魔王の呪いが発動した。朝まで解けない呪い。姿を変える呪い。
「バブゥウゥゥ」
勇者が声を上げる。だぶだぶの勇者の服を着た赤ちゃんが……
「フエエエエエエエエ」
神官もまた声を上げる。だぶだぶの神官の服を着た赤ちゃんが……
魔王の呪い ヒット・シュタイナー @tamtam33
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