第2話
「あんな美人、勿体ねえよなー」
「事故? まさか事件?」
「転落死だって」
「マンションの手摺から身を乗り出したって」
「ストーカーにつけ狙われてたって、噂もあるぜ」
「あの人なら、あり得そう」
清水先輩の突然の死は学校中を騒がせ、さまざまな憶測が飛び交った。
自殺? 先輩に限ってありえない。学校は勿論、家庭環境にも問題はない。進路だって、1年の頃から志望校を決めていて、すでにA判定が出ていたと言う。
事故? マンションの3階に住む先輩が、10階まで上がった理由が分からない。
事件? これが一番ありそうだ。ストーカーに追われて10階まで逃げて……だけど、先輩に逃げている様子はなかったという。1人でゆっくりと階段を上って行く姿を複数の人が目撃しながら、怪しい人物の目撃情報はないという。
結局、清水先輩は何らかの理由で10階まで上がり、手摺から身を乗り出し過ぎたことによる事故死で片付けられた。
「今日、清水先輩のお通夜だって」
「そっか……」
少し広く感じる部室で、一緒に写真の整理をしていた加藤が話を振ってきた。3年の先輩達が誰も来ないのは、清水先輩のお通夜に行っているかららしい。文化祭を最後に一応引退した先輩達は、荷物整理と称してよく来ていた。今日誰も来ないのは、そういう理由か。
「清水先輩、何であんな所に行ったのかな」
「さあな……」
素っ気なく返事をしながら、俺はあの時の清水先輩の言葉を思い出していた。
『綺麗な夕陽を見ると、飛びたくならない?』
清水先輩は、よく晴れた日の夕方に亡くなったらしい。きっと、夕陽も綺麗だったんだろう。清水先輩は、夕陽に向かって飛んだのかな……
「そんな訳あるか!」
「何だ? どうした?」
みんなの視線が俺に向く。思考に沈んでいた俺の意識は、一気に現実に引き戻された。
「すみません。何でも、ありません……」
ぺこぺこと頭を下げ、再び手元の写真に目を落としながら、頭の中では清水先輩の言葉がぐるぐると回っていた。
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