2.

 運搬ロボットが大きな機械の横に止まりました。こちらの機械は、パイプの厚みを調整する機械です。回転するパイプにヘラを押し当て、薄く伸ばします。



 隣にあるのはバルジ成型を行う機械です。バルジ成型は金型に入れたパイプの中を高圧の油で満たし、さらに両端から圧力を加えることによってパイプを金型に沿って変形させる技術です。


 見てください!金型が外されました。油の中からチタンのパイプだったものが出てきます。よく見ると骨の形に加工されています。人間の骨を参考にしたアンドロイドの骨格は軽くて丈夫です。そして、丸いパイプを骨の形にするにはバルジ成型が必要不可欠なのです。



 作業員の腕には、腕輪型端末が付けられています。この端末でバーコードを読み取り、眼鏡型端末で作業手順を確認するのです。

 

 チタン製の骨はきれいに洗浄されると両端を切断されます。切断は手作業で行われます。非常に高度な技術が要求されるので、何十年も修行を積んだ職人が担当します。



 両端を切断された骨は、何年もの修行を積んで腕を認められた見習い職人の手によって切り口を滑らかに処理されます。再び洗浄されると、今度は金具と共に研磨剤で磨かれます。


 これらの作業も簡単に見えて、高度な技術を要します。また、精度が悪いと経年劣化によって動きが悪くなり、アンドロイドの健康寿命に影響します。


 手作業ではなく機械を使って作業をする会社のなかには、これらの作業の重要性がわかっていないところもあります。勿論、そのような会社はほんの一部で多くはありませんし、機械でも精度の高いものを作ることはできます。しかし、弊社は手作業にこだわります。アンドロイドは工業製品ではないからです。



 金具は骨の両端に取り付けれれます。金具と骨の間にはゴム製のクッションが挟まれています。そして、航空機や宇宙船でも使われているタイプの接着剤を使うことにより、金属とゴムを丈夫に接合しています。また、クッションは熱による金属の体積変化を吸収します。

 

 骨や金具が十分に滑らか且つ清潔でないと、強度が落ちます。また、接着剤は劣化しないように保管には細心の注意を払う必要があります。

 


 二階にはこれらの作業を一望できるカフェがあります。勿論、一般の方が利用することもできますが、デザイン部の職員が利用することも多くあります。デザイン部の職員は基本的にテレワークですから、わざわざ工場に来なくても良いのですが、ここでアンドロイドが生まれるのを見ながら仕事をした方が作業がはかどる、そして良い仕事ができると思っている者も多いのです。


 デザイン部の職員はお客様の遺伝子情報や設計を分析し、お子様を親の面影を残しつつ、一般的に美形だと言われるよう顔立ちにすることをサポートします。最後に優秀な画家が職員の提供したデータを基にあなたのお子様の絵を描きます。職人たちはこの絵を見てお客様のお子様を創造します。


 おや?こちらの画家はスケッチブックに鉛筆で絵を描いていますね。タブレットに絵を書くことが主流の時代ですが、このようなアナログな画家もいいですね。弊社では、個性的な画家も活躍できるようにすることで、将来お子様が容姿のことで悩むことを防いでいます。


 

 

 続く......

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アンドロイドが創造されるまで オレンジのアライグマ【活動制限中】 @cai

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