第4話 策謀の色

 IDEA作戦室についたアルド。またもイスカがすばやくこちらに気づいて話しかけてきた。

「やあアルド、もう一つの人助けの方は無事に解決したのかい?」

「ああ、色々あったけどなんとか。これで気兼ねなく全力でイスカたちに協力できるよ。」

「ふふっ、それは頼もしいね。それじゃあアルドには今晩から早速張り込みを始めてもらうわけだが、まずは作戦会議といこうじゃないか。」

 そう言うとイスカはIDEAの生徒を何人か集めて会議を始めた。

「まず初めに、今回の捜査で一番重要なことは犯人たちに私たちIDEAの存在を気づかせないことだ。万が一気づかれた場合彼らはすぐさま雲隠れし、ほとぼりが冷めた頃にまた別の場所で盗みをはたらくだろう。そうなってしまっては私たちIDEAは手出しができない。そこで今回の捜査にはIDEAの外部の人間であるアルドに協力してもらおうと思う。アルドにはレゾナポートの外で張り込みを行ってもらう。そしてレゾナポートから誰か人が出てきたらこのデバイスで作戦室に連絡してほしい。」

 デバイスという言葉を耳にしてアルドの顔に不安の色が浮かんだ。

「レゾナポートから出てきた人物がいたら連絡するんだな。でもその”でばいす”ってやつをちゃんと使えるか自信ないぞ?」

「安心してくれたまえ、君がこういった類のものを使いこなせないのは承知の上さ。このデバイスはこのスイッチを押すだけでこちらに信号が送られてくる。君は怪しい人物を見かけたらこのスイッチを押すだけでいいというわけさ。」

「それだけならまあ、使えそう…かな…?」

「話を本筋に戻そう。アルドが張り込みをしている間、レゾナポートの寮に住んでいる者は各自自分の部屋で待機。予期せぬ事態が起きた場合に寮に暮らす学生たちをまとめ、必要であれば作戦室に指示を仰いでほしい。他の者たちはこの作戦室に待機し、アルドのデバイスから信号が送られてきたらレゾナポートを囲む形で警備を行う。アルドはデバイスのスイッチを押した後、私が現場に行くまで隠れ続けていてほしい。犯人と接触して、一人しかいないことが知られては強硬手段に出る、もしくは逃げられてしまう可能性が高まるからね。以上が大まかな動きだ。その他各自で気づいたことがあればすぐに報告してくれ。これまでの事件のデータから犯人グループが今晩犯行に及ぶ可能性は高い。必ず捕まえようじゃないか。」

「はい!」 「は、はい!」

イスカの凛々しい態度とIDEAの生徒たちの息の合った返事に圧倒され、なぜかアルドもIDEAの生徒のような返事をしてしまった。


 全体での作戦会議が終了し、作戦が始まるまでは特に指示はないということだったので生徒たちは各々散らばっていった。アルドも夜になるまでの時間をどうしようか考えていたところイスカに呼び止められた。

「アルド、ちょっといいかい。」

「どうしたんだイスカ、作戦会議はもう終わったんじゃ…。」

「実は、他の生徒たちを不安にさせたくなくて作戦会議では言わなかったのだけど、くだんの犯罪組織が護衛用のロボットを改造して危険な戦闘ロボットを作っているという情報を入手してね。窃盗犯がそのロボットを引き連れている可能性もある。なんでもかなり大型のものらしくてね、十分に注意してほしい。」

「戦闘ロボットか、分かった。もし戦いになっても大丈夫なように準備しておくよ。」

そう答えるとイスカは「それじゃあ私もやることがあるから、ここで一旦失礼するよ。」と言ってどこかに行ってしまった。

(それにしても大型のロボットかぁ、あの巨大化したスライムといい最近そんな感じの相手ばかりだな……。時間はあるしイシャール堂で武器の整備でもしてもらおうかな………)などとぼんやりと考えていたアルドだったが、彼は自分がもう悲劇の舞台に立っていることを知らない…………


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