第4話 メンバー募集

ある日、春彦はコンビニに買い出しに来ていた。

一通り買い物を終えて外へ出たところで声をかけられた。

声の主は春彦の中学・高校時代の友人『佐々木 善夫』である。


春彦 「お。ヨシオ。」

善夫 「久しぶりだな。相変わらずか?」

春彦 「あぁ。オマエも…(金髪でツンツンの頭、首や腕にジャラジャラ巻きつけているもの、トゲのついた服を見て)相変わらずみたいだな…。」

善夫 「バリバリよ。でもこの俺に『善夫』って名前は似合わないよな。」

春彦 「似合うように生きろよ…。」

善夫 「ヤなこった。これからスタジオ入るんだが、久々に一緒に来るか?高校ん時はよく一緒にやったよな。」

春彦 「遠慮しとくわ。」

善夫 「なんだ。ギターはヤメたんか?」

春彦 「ヤメたっつーか…嫌気がさしてな。」

善夫 「勿体ねーな。」

春彦 「そうでもないさ。」

善夫 「一度オマエとライヴしてみたかったよ。」

春彦 「サンキュ。」

善夫 「んじゃ、行くわ。」

春彦 「おう。気ぃつけて。」

善夫 「あぁ。」(スタジオへ向かっていく)


そして別の場所ではイツモの如く博記と健治が喋っていた。


博記 「ちょっと思ったんだがよ。」

健治 「あん?」(ハンバーガーを口に入れつつ)

博記 「その真理恵ってコ、仲間にしないか?」

健治 「ブホッ!!(むせる)ゲホゲホゥ!!」

博記 「汚ねぇな。」

健治 「(コーラで流し込んで)バカかオマエは!」

博記 「何でだよ。」

健治 「よりによって何で…。」

博記 「ギタリストなんだろ?福岡からワザワザ壱岐へ助っ人に行くヤツなんだぜ?」

健治 「だから実力もあるハズだってか?」

博記 「まぁ折角一緒にスタジオ入ったのに、ドコカのバカは敵意むき出しにするだけで何一つやってこなかったがな。」

健治 「う…。」

博記 「兎に角、一度話してみる価値はあると思うんだが。」

健治 「…。」

博記 「なんだよ。」

健治 「べっつに。」

春彦 「(近寄ってきて)あれ?」

健治 「よう。春彦。」

春彦 「オマエラが居る場所ってココしかないのかよ…。」

博記 「ヒマ人なもんでね。」

春彦 「よう。博記。」

博記 「おす。」

健治 「買い出しか?」

春彦 「まぁな。その帰りに昼メシでも買って帰ろうかと思ったらオマエラが居たんでね。」

博記 「一緒に食ってけよ。」

春彦 「そうだな。」(座る)

健治 「しかし…カップメンばっかじゃん…。」(春彦が持ってたコンビニ袋を見て)

春彦 「イイんだよ。それより、またバンドの話しか?」

博記 「そうなんだよ。どうやってメンバー見つけてイイか分からなくてね。」

春彦 「スタジオやライヴハウスなんかにメンバー募集のチラシとか貼ってあるだろ?」

健治 「前に入ったスタジオにも貼ってあったんだが、なかなかタイプがあうのが無くてな。」

春彦 「んじゃこっちで募集の紙貼ったらイイじゃん。」

博記 「そうだな。俺はまだスタジオ入った事ないが…。」

春彦 「ここでこうやって話すのもイイが、そういうのも大事だと思うぞ?」

健治 「違いない。」

博記 「なんかヤケに慣れてるみたいだが、春彦もバンドを?」

春彦 「まさか。友達がやってたんだよ。」

健治 「そのダチは…。」

春彦 「ヤメとけ。根本から違う。」

博記 「ダメか…。」

春彦 「アタマを金色に染めてツンツンに立てて、ジャラジャラしたアクセサリつけて、化粧してる。」

健治 「スゲェな。」

春彦 「まぁイイ奴なんだが。」

博記 「兎に角スタジオに入らないとだな。」

健治 「そうだな。今度の休みにでも入るか。」

春彦 「今度その友達に会ったら聞いておくよ。健治達にあいそうなヤツ居ないかってな。」

健治 「あぁ。頼むな。」

博記 「なぁんか燃えて来たっ!!」

春彦 「一つ聞いていいか?」

健治 「ん?」

春彦 「二人のバンドの目標って何だ?」

健治 「考えた事ないな。」

博記 「飽きるまでやればイイじゃん。どっちかが『ヤメた』っつったらソコで終わり。」

健治 「イイね。それ。」

春彦 「じゃぁメンバーとか加入して、そうなっても言えるか?」

健治 「言えるね。」

春彦 「他のメンバーに失礼じゃないのか?」

博記 「黙ってる方が失礼だろうが。」

春彦 「なんでだよ?自分から仲間になってくれって言っておきながら自分が飽きたら解散か?」

健治 「誰かが動かないとバンドは組めない。誰かが飽きないと解散はできない。」

春彦 「しかし…。」

健治 「生憎と飽きる予定は入ってないが、俺は無理してまで続けていくバンドは組みたくない。誰かがやめるっつたらやめたらいい。残ったヤツラで続けたかったら続ければいい。」

博記 「…。」

健治 「バンドを型にハメたくないのと同じ様に、メンバーをバンドにハメたくない。そうしないと自由な音楽は生まれない。」

博記 「春彦…。どうかしたか?」

春彦 「いや…。二人の気持ちを聞きたかっただけさ。」

博記 「バンド組むんだって、楽器が出来なくたっていいんだぜ?」

春彦 「はぁ?」

博記 「組んでからやればイイんだからな。」

春彦 「それで出来るのかよ?」

博記 「少なくとも俺はそうだった。」

春彦 「あ…。」

博記 「そんで今は多少なりとも誇れるようになった。」

健治 「春彦が言いたい事も分かる。だが、俺達が言いたい事も分かってくれ…。」

春彦 「そうだな。ワリィ。」


それぞれの思惑が交錯する中、果たして分かりあえる確率はどれくらいなのだろうか?

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