第18話 卒業

三月一日。

俺達は卒業式を迎えた。

俺達はソレゾレ写真を撮ったり、最後の高校生活の思い出作りをしていた。

式も終わり、校門近くの広場に居た。


ヒロキ (顔をシカメつつ)「ったく…。全員さっさと帰れよな。」(広場に溢れかえってる学生をかきわけつつ)

ケンジ (ヒロキに近づいてきて)「よう。」

ヒロキ 「おう。」

ケンジ 「今日も部室行くだろ?」

ヒロキ 「当然。」

ケンジ 「頼みがあるんだわ。」

ヒロキ 「?」

ケンジ 「今日さ、一通りやる曲を通してやらねーか?」

ヒロキ 「別にイイが、タクヤもサトムラも来れないだろ?」

ケンジ 「取りあえず二人は抜きでさ。約束しちまったんだよ。」

ヒロキ 「約束?」

ケンジ 「部活の後輩達にさ、今日バンドを見せてやるって…。」

ヒロキ 「ライヴで見せるってのじゃダメなんか?」

ケンジ 「もう約束しちゃったんだよ。」

ヒロキ 「そういう事は事前に教えろ。」

ケンジ 「ワリィ…。」


そこへナオコ、クミコ、ユカがやってくる。


クミコ 「遂に卒業しちゃったね。」

ヒロキ 「あぁ。」

ナオコ 「おめでとう御座います。先輩方。」

ケンジ 「サンキュ。」

ヒロキ 「ありがとう。」

クミコ 「で、どうするの?これから部室に行くんでしょ?」

ケンジ 「俺は部活に顔出してくる。そのついでに連れて来るから。」

ナオコ 「連れて来る?誰を?」

ヒロキ 「ケンジの部活の後輩に今日バンドを見せる約束してんだとさ。だから一通り通してやろうってさ。」

ナオコ 「じゃぁ私も?」

ケンジ 「協力してくれよ~。」

ナオコ 「OKです。」

ヒロキ 「どうすっかなぁ…メシでも食いに行く?」

クミコ 「そうね。行こうか。」

ナオコ 「じゃぁ私も一緒に♪」

ユカ 「私は部活があるから…残念だけど…。」

ヒロキ 「残念だな…。」

ケンジ 「じゃぁ、一時間半ぐらい後に部室でな。」

ヒロキ 「おう。」


そして俺とクミコさんとナオコは昼食を摂るため、ある店に入った。


ナオコ 「今日もイイ天気ですね。」

クミコ 「だいぶ暖かくなってきたもんね。」

ヒロキ 「ハラ減った…。」

クミコ 「…。」

ヒロキ 「大体おかしくない?」

ナオコ 「何がです?」

ヒロキ 「小・中学校とあったのに、何で高校には紅白まんじゅうないんだよ。」

クミコ 「………呆れた…。」

ナオコ 「確かにオイシイですもんね。あれ。」

ヒロキ 「楽しみにしてたのになぁ…。」


そんな意味不明は事を話しつつメシを食べ、俺達は早々と部室へ向かった。


ヒロキ (入ってきて)「やっぱケンジはまだだったか。」

クミコ 「ケンジが早く来るワケないじゃん。」

ナオコ 「確かに。」

クミコ 「あ~あ…私も何らかのカタチでバンドしたかったなぁ…。」

ヒロキ 「クミコさんも立派なメンバーだよ。」

クミコ 「そうじゃないの。もう少し根性があったらベースもやめずに済んだろうし…。」

ヒロキ 「じゃぁ、やってみる?」

クミコ 「へ?」

ヒロキ 「俺達がやる曲の中に一曲、ドラムがずっと単調なリズムを刻んでいくやつだけのがあるんだ。」

ナオコ 「あぁ。アレですね。」

ヒロキ 「勿論ドラムのスコアの読み方分からないけど、クミコさんにはその一曲、ずっと同じリズムを刻んでて欲しいんだ。その曲はギターも大して音出さない曲でね。寂しいんだよ。」

クミコ 「うん。やってみる。」

ヒロキ 「無理はしなくてイイから。」

クミコ 「頑張るわ。」

ヒロキ 「さて、俺はケンジ達が来るまで、少し指を暖めておくかな。」

ナオコ 「ホッカイロ貸しましょうか?」

ヒロキ 「そうじゃなくて…。少し練習するって意味だよ。」

ナオコ 「分かってます♪」


こうしてクミコさんはドラムで一曲参加となった。

単調なリズムを刻むだけとは言うが、そういうのも意外に難しいもんだ。

同じリズムを保たないとイケナイから。

そして暫くするとケンジが後輩を5~6人連れて来た。


ケンジ 「さて、始めるか。」

ヒロキ 「…。」(人見知り)

ナオコ 「いつでもイイですよ♪」


今のところライヴでやる予定にしてる曲を一通りこなした。

たぶん、後になって想ってみれば、これこそ無謀だったのかも知れない。

でも、聞いてる方も素人だったし、俺達の音楽に対する気持ちは伝わったと想う。


そして一通り終わった。後輩達は帰っていった。


ケンジ 「まだまだだな。」

ヒロキ 「そりゃそうだろ。」

ナオコ 「今度の日曜が本番ですし、それの予行演習だと想えば。」

ヒロキ 「もうドラムは諦めたが、ヴォーカルだよ。」

ナオコ 「折角歌詞も作ったのに…。」

クミコ 「今日も来るようには言ったんだけど、うまく逃げられちゃった。」

ヒロキ 「…ホンキで代わりを探してた方がいいんじゃないのか?」

ケンジ 「そうだな…。」

クミコ 「でもライヴには来るって言ってたけど…。」

ケンジ 「結局このバンドも最後までよく分からないカタチで来たな。」

ヒロキ 「KENDYSだ。」

ケンジ 「(無視して)でも、皆最高だ。」

ヒロキ 「なぁ、何故認めない?言ってしまえばラクになるぜ?言ってみろよ。『KENDYS』ってさ。何照れてんだよ。」

ケンジ 「ホンキで殴るぞ…。」

ヒロキ 「じゃぁさっさとバンド名決めろよな。」

ナオコ 「そのお決まりの会話も、もうすぐ聞けなくなりますね。」

クミコ 「なぁに感傷に浸ってんのよ。ライヴ終わってからにしなさい。」

ナオコ 「そうですね♪」


ライヴまであと一週間。

ドラムは仕方ない。

だが、ヴォーカルは仕方ないじゃ済まされない。

本当にヤスが来てくれれば言う事はないんだが…。

もう一つの心配は商高に通う二人だった。

俺自身、5回も音合わせしてないから不安ではあった。

そして遂に…

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