第12話 ハナシが長い

俺とユカとクミコさんの三人のバンドを組んで少し練習を重ねた。

俺もまだまだ人に教えられるレベルじゃなかったが、何とかクミコさんに教えたりしていた。

ケンジも手が空いてる時にはユカに教えてやったりしてた。

後になって想った事だが、ここで何故ケンジやタクヤに手伝ってもらおうという考えに至らなかったのか…。

技術を問う気は全くなかった。

俺が技術云々と言える立場に無かったという事もあるのだが。

ただ、KENDYSをバンドという『型』にハメたくなかったんだろう。

バンドではあるのだが…。


クミコ 「(練習の手を休めて)指が痛い…。」

ヒロキ 「(ユカに教えつつ)冬はねえ。なかなか想うように指が動かないもんね。」

ユカ 「なかなか面白いかも♪」(ギター練習しつつ)

ケンジ (黙々とギターソロ練習中)

ナオコ 「(何故かドラムのとこに座って)最近ホントに寒くなってきましたよねぇ。」

クミコ 「私に出来るのかなぁ…。」

ヒロキ 「だぁいじょうぶだって。クミコさんなら出来るよ。」

クミコ 「…。」

ユカ 「弾けるようになるのかなぁ?」

ケンジ 「気持ち次第だな。」

ヒロキ 「そうそう。皆で楽しくやってこうよ♪」


俺は、この時に気付くべきだったんだろう…。


少し時は流れた。

俺は放課後の教室に居た…。


ナカガワ 「シマくん。」

ヒロキ 「お?どうした?」

ナカガワ 「バンドの調子はどう?」

ヒロキ 「まぁまぁ順調だ。」

ナカガワ 「頑張ってね♪」

ヒロキ 「サンキュ。」


その頃部室には…。


ナオコ 「………寒い…。」(カギを持ってないため外で待ってる)

ケンジ 「(歩いてきて)あれ?ヒロキは?」

ナオコ 「やっと来た…。シマ先輩はまだですよ。」

ケンジ 「悪い。ヒロキはいつも早く来てるから今日も来てるだろうと想ってな。」

ナオコ 「どうでもイイから早く開けてください。寒いから…。」

ケンジ 「おお。悪い…。」(鍵を開ける)


カギは俺とケンジしか持っていなかった。

そんなに沢山スペアキーも無かったし、万が一の時のために管理者であるマツモトさんにも一つ預けていたから。


ナオコ 「(キーボードを準備しつつ)そう言えば、ユカ達の調子はどうなんですかね?」

ケンジ 「さぁな。でも折角やるっつってんだ。応援してやるツモリだ。」

ナオコ 「でも、シマ先輩、hideに凄くハマりましたね。」

ケンジ 「あぁ。アイツのタイプとは違うと想ったんだが…。」

ナオコ 「シマ先輩…不思議な事ばっか言ってますよ。『暖かい』とか『柔らかい』とか。」

ケンジ 「そういう表現の仕方が好きなんだろ。」

ナオコ 「ケンジ先輩って、淡々としてますね。」

ケンジ 「そうか?」

ナオコ 「はい。シマ先輩とは正反対です。」

ケンジ 「アイツは練習もしないで人の邪魔ばっかするしな。」

ユカ 「(入って来て)こんちゃーー!」

ナオコ 「ユカはいっつも元気よねぇ。」

ユカ 「そこが取り得よ♪」

ケンジ 「まぁ…そうだな。」

クミコ 「やっほー。」

ナオコ 「こんにちわ。」

ケンジ 「今日は早いねぇ。」

クミコ 「あれ?シマ君は?」

ケンジ 「さぁ?どっかで道草食ってんじゃないの?」

クミコ 「珍しい。」

ケンジ 「まったくだ。」


~暫く経った~


ヒロキ 「うぃーす。」

ケンジ 「遅いぞ。ヘナチョコベーシスト。」

ヒロキ 「うっさい!ヘナチョコとか言うなや!!」

ナオコ 「何してたんですか?」

ヒロキ 「ナカガワと話してたんだよ。」

ケンジ 「ヒロキ。」

ヒロキ 「あ?」

ケンジ 「ちょっと…。」(外へ促す)

ヒロキ 「?」


そして俺は意味も分からぬまま外へ連れ出された。


ヒロキ 「なんだよ。」

ケンジ 「オマエ、本当に三人でhideの曲をやるつもりか?」

ヒロキ 「悪いかよ。」

ケンジ 「そうじゃないんだ。」

ヒロキ 「俺はミンナで楽しくやりたいんだよ。」

ケンジ 「前も言ったよな?『甘い』って。それはミンナで楽しくなのか?」

ヒロキ 「何が言いたいんだよ?」

ケンジ 「オマエだけ楽しくじゃねーのか?」

ヒロキ 「意味わかんねー。じゃぁ何か?俺の勝手な言動にミンナ振り回されてるってのか?」

ケンジ 「だから、そうじゃないって。」

ヒロキ 「ハナシはそれだけか?なら俺は中に入るぞ。」

ケンジ 「待て。」

ヒロキ 「なんだよ。」(少しイライラしている)

ケンジ 「オマエはマジメにやる気あんのか?」

ヒロキ 「なんだと?」

ケンジ 「反発するって事はあるみたいだな。安心したよ。」

ヒロキ 「オマエの話しは回りくどい。だから3分で終わる話しも何十分もかかるんだよ。ちっとも核心に辿り着かないじゃねーか。イイ加減イラつく時もあるんだぞ。」

ケンジ 「…。」

ヒロキ 「まぁいい。俺がどう想ってるかなんてオマエには分からない。だから何と言われようとも俺はバンドをやるって決めてるから関係ない。」


そしてオレは中へ入った。


ナオコ 「あ。シマ先輩。ケンジ先輩は?」

ヒロキ 「外でボケッとしてるよ。」

クミコ 「ケンジ、何て?」

ヒロキ 「別に。」

ユカ 「ケンカでもしましたか?」

ヒロキ 「あんなんケンカのうちには入らない。」

クミコ 「それっぽい事はしたんだ…。」

ヒロキ 「まぁイイよ。俺には関係ない。」

ナオコ 「…ありますって。」

ヒロキ 「基本的に寝て起きれば忘れてるしな。俺達は。」

クミコ 「良いのか悪いのか…。」


俺としても先が見通せなくてイラついてたのかも知れない。

俺とケンジは、たまにそんなカンジで軽い衝突みたいな事はしていた。

が、基本的にスグ忘れてしまう。

俺は少し引きずるタイプなのだが、それでも翌日にはどうでも良くなっていた…。

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