第10話 色褪せない想い

カラオケに行った数日後。。。

少し風も冷たくなってきていた。

俺達はイツモのように部室に居た…。


ケンジ 「ヲイ!練習しろよ!!」

ヒロキ 「ええ~~~。」

ケンジ 「ったく…。」(ギターソロの練習をしている。)

ヒロキ 「ってかオマエ同じとこばっか弾いててよく飽きないよなぁ。」

ケンジ 「オマエはアホか?いやバカか。弾けないとこを練習してんだから何回もやるのは当然だろうが。」

ヒロキ 「オマエは人の事をバカバカ言いやがって…。」

ケンジ 「練習しろ!バァーカ!!」

ヒロキ 「イヤだねー!!」

ナオコ 「(部室の入り口に立っている)子供じゃないんだから…。」

ケンジ 「ナ…ナオコ…いつからソコに?」

ナオコ 「たった今です。よいしょっと。(持ってたものを下ろす)」

ヒロキ 「なんだ?その重そうなの…。」

ナオコ 「見た目ほど重くないんですけどね。キーボードです。」

ケンジ 「見つけたんか!?」

ナオコ 「偶然ユカと話してたらユカが持ってて。」

ヒロキ 「良かったじゃん♪」

ナオコ 「それで…お願いなんですけど…。」

ケンジ 「ん?」

ナオコ 「ユカも仲間に入れていいですか?」

ヒロキ 「俺は全然構わないが?」


(ヒロキ、ナオコがケンジを見る)


ケンジ 「この際だ。イイよ。」

ユカ 「(ドアから入ってきて)ありがとうございまーーーす!!」

ヒロキ 「い…居たのかよ…。」

ナオコ 「きっとOKしてくれると想って。」

ヒロキ 「ユカさん。」

ユカ 「ユカでイイですよ。何ですか?」

ヒロキ 「この前ユカが一番最初に歌ってた曲…誰の曲だ?」

ユカ 「あぁ。MISERYですか?」

ヒロキ 「そうそうソレ。」

ケンジ 「知らないのかよ…。」

ユカ 「hideさんですけど?」

ヒロキ 「hide?」

ユカ 「はい。」


この曲を聴いた時、俺の中の音楽に対する考えまで変わっていたのかもしれない。

今までカラオケに行っても、友達が歌った曲にソコまで興味を示す事は無かった。でも、そのMISERYは違っていた。

音も声もhide本人のものでは無かったが、それでも俺がhideにハマるには充分だった。

そこから俺は急速にhideにハマっていった…。

ただ、少し時は遅かったかもしれないが、兎に角大好きなアーティストが出来た瞬間でもあった。


ケンジ 「珍しいな。オマエが興味示すなんてさ。」

ヒロキ 「そうでもないさ。」

ナオコ 「しかもアーティスト本人の歌を聴いたならまだしも…。」

ヒロキ 「ユカの歌でも充分伝わった。詞に込められた想いや、曲の暖かさ。」

ケンジ 「暖かい?」

ヒロキ 「あぁ。」


(そこへクミコがやってくる)


ナオコ 「クミコさん!!」

ヒロキ 「あれま。珍しい。」

クミコ 「(ヒロキの方を見て)来ない方が良かったかしら?」

ヒロキ 「いえいえ。めっそうもない。」

クミコ 「たまには顔出さないとね。」

ユカ 「クミコさん!こんにちわー。」

クミコ 「ユカじゃないの。」

ユカ 「えへへ。仲間に入れてもらっちゃいました。」

クミコ 「(部室内を見渡して)ギター沢山あるね。全部ケンジの?」

ケンジ 「まさか。一本は俺のだけど、あとはナカガワのと、タクヤのと、サトムラのだ。」

クミコ 「へぇ~。」

ケンジ 「みんなもヒマな日はおいでよ。大体毎日居るからさ。」

ヒロキ 「トナリの人(電気を貸してくれてる人)にとっちゃ迷惑この上ないハナシだろうがな。」

ケンジ 「確かにな…。」


それから俺はhideにハマッた。

少し時期は遅かったかもしれないが、彼が残した音楽は色褪せる事なく、いつまでも残っている。

そして俺は無謀(?)とも言える決意をするのだが…。

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