第5話 ベーシスト?
俺のクラスにナカガワという友達が居る。
コイツもギターをやっていて、主に洋楽を聞いてるヤツだ。
ステッカーをベタベタ貼ってるギターを持っていて、俺も何度かナカガワの家に遊びに行った時に見せてもらった事がある。
いつものように教室に居るとナカガワが俺の方にやってきた。
ナカガワ 「シマ君(ヒロキの事)ってケンジとバンド組んだんだって?」
ヒロキ 「あぁ。でもまだカタチだけだけどね。」
ナカガワ 「ベースなんだってね。」
ヒロキ 「でもベース無いし、買う金もないし。練習できないんだわ。」
ナカガワ 「俺のギター貸そうか?」
ヒロキ 「?」
ナカガワ 「勿論ギターとベースは音や弦の感覚なんかも全然違うけど、無いよりマシじゃない?」
ヒロキ 「でもナカガワはどうすんだ?」
ナカガワ 「俺はセンター試験の勉強しなきゃだから、ギターやる時間ないんだ。」
ヒロキ 「じゃぁ貸してもらおうかな。」
ナカガワ 「んじゃ今日の帰りにでも取りにおいでよ。」
ヒロキ 「あぁ。ありがとう。」
というワケで、ギターでベースを練習する事になった。
ナカガワをバンドに誘ったが、同じ理由(受験)で断られてしまった。
そして、高校最後の夏休み。
俺とケンジはバンドについて話し合っていた。
ケンジ 「後はメンバーだな。」
ヒロキ 「メンバーなら前から決まってたぜ?」
ケンジ 「は?」
ヒロキ 「ほい。」(と言って小さなノートを出す)
ケンジ 「なんだこれ?」
ヒロキ 「バンドについてイロイロ書いてるノートだ。」
ケンジ 「(表紙に書いてある文字を読む)KENDYSノート?」
ヒロキ 「バンド名だ。」
ケンジ 「はぁ?」
ヒロキ 「カッコイイだろ。」
ケンジ 「アホか。」
ヒロキ 「だってオマエ全然バンド名決めないじゃん。」
ケンジ 「そういうのはジックリ考えないといけないんだよ。」
ヒロキ 「じゃ当分KENDYSだな。」
ケンジ 「勝手にしろ。」
ヒロキ 「あ…認めた♪」
ケンジ 「バァカ。」
ヒロキ 「とにかく俺、メンバー考えてたんだ。」
ケンジ (ノートをめくる)「落書きばっかだな。」
ヒロキ 「ここ見てみ?」
ケンジ (言われた場所を見る)
ヒロキ 「ここではギターはオマエ。ベースは俺。で、ヴォーカルはヤス(第二話参照)、キーボードがナオコ。で、ドラムがシンちゃん。で、もう一人のヴォーカル候補にクミコさん。」
ケンジ 「他のヤツはまぁイイとして、何でクミコさんが入ってんだ?」
ヒロキ 「?」
ケンジ 「ヴォーカルはヤスだけでイイじゃん。」
ヒロキ 「どうせなら仲が良いヤツラ皆でやりたいじゃん。」
ケンジ 「甘いな。」
ヒロキ 「そうかな。」
ケンジ 「そのうち分かる。」
ヒロキ 「まぁイイや。」
ケンジ 「(呆れた顔して)ほれ。(スコアを手渡す)」
ヒロキ 「?」
ケンジ 「スコアだよ。」
ヒロキ 「すこあ?」
ケンジ 「………楽譜だ。」
ヒロキ 「お♪SOUL LOVEじゃん。」
ケンジ 「出来るかわかんないけどさ、取りあえずソレをやってみようぜ。」
ヒロキ 「あぁ。」
ナオコはピアノを習っていたため、メンバーに入れる事にしていた。
シンちゃんもドラムを少しやっているとハナシを聞いたので、仲間に入れる事にした。
ヤスの歌は聴いた事は無かったが、ルックスも良かったし、声も良かった。
クミコさんはとりわけ歌がウマイというワケでも、何か楽器をやっているとも聞いた事はなかったが、仲良い皆でやりたかったから。
しかし…この時点で、そのメンバーにはハナシすらしてなかった…。
ケンジ 「少しずつカタチになりつつあるな。」
ヒロキ 「まぁエンジンかかるのは遅かったけどな。」
ケンジ 「ベース…どうするかなぁ…。」
ヒロキ 「ギターで練習してるから当分はイイだろ。」
ケンジ 「アホ。ベースとギターじゃ全然違う。」
ヒロキ 「どうしようも無いじゃん…。」
ケンジ 「幸い、部室にあったアンプがベースアンプだったしな。それは救いだ。後はシールドとか…必要だな。」
ヒロキ 「アンプ?シールド?」
ケンジ 「…………先は長そうだな。」
とまぁこんなカンジだった。
ホントに何回も言うが、俺は、まだこの時点ではホンキじゃなかったんだ。
バンドの楽しさもまだ知らなかった。
金をかけてまでする気にはなれなかったし、実際、俺はそんなに小遣いも貰っていなかった。
で、ここからメンバー獲得に向けて動き出すワケだが…。
果たして皆様が想像しているようなマトモなバンドの物語になってゆくのだろうか…。
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